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第23話「仮面の裏側」

翌日、引き続き“オペラ座の怪女(ファントムマザー)”を調査するジゼルの二人はいつもの個室で、作業や調査に追われていた。



ふと、二人が作業やら資料をまとめていると、研究員の人が例の仮面の調査結果を持って入ってくる。


裕子が研究員から調査結果の資料を受け取ると、その資料をぱらぱらと捲って結果を確認した。


すると


「……あら、まぁ」


資料を見て、裕子は呆然と声を漏らす。

裕子の目は丸く見開かれ、内容が衝撃的だということを顔で物語っていた。

そんな裕子を見て、先日の猫川美亜からの情報を整理していた奏は、裕子に顔を向ける。


「…何かわかりました?」


「スーパー予想外な展開よ?」


「教えてください。それが事実ならば。」


奏がそういうと、裕子は資料にもう一度目を通しながら話し出す。


「ほらほら世の中には『眼鏡が本体』とか冗談で言う人がいるじゃない?」


裕子はおどけながらそう言う。


「あー…漫画とかでもよくありますね。」


「…それだったわ」


裕子はおどけていたかというと真顔になりながら、検査結果を机の上に置いた。

舞は、遠くの席からこちらを眺め、遠目に二人を見る。


「…まさか、鏡が本体、とか言うんじゃないんでしょうね?」


「……いえ、仮面の方よ。仮面の欠片を調べたところ、“あの仮面そのものがレネゲイドビーイング”ってことがわかったわ。」


「仮面が?」


ぴらっと一枚の写真を見せながら裕子は言う。

それは、先日ちび裕子が見つけた、白い仮面の欠片だった。

舞も奏も、その写真をじっと見つめる。


「仮面がレネゲイドビーイング…支配型、で認識していいんですか?」


「その通り。しかも対象は自分が支配されてるのにも気づかない系ね。」


「タチが悪い奴だ…」


資料の一部を手にとって見ながら、奏がそう呟いた。


「そして、あの仮面の欠片には、装着車の皮膚の細胞が検出されたみたい。

誰が操られてるかまでもが分かったわ。」


「えっ?誰だったんですか?」


「これがまた意外なのよ…」


裕子は少し困った顔をして、資料を見ながら答える。             、


「継母役じゃなくて、白雪姫役の安倍晴香さんだったわ。

……どういう、ことかしら?」


「えっ…」


奏の眼が驚きで見開かれる。

空気が少し、張り詰めた風になった。


「あと、仮面のレネゲイドビーイングは検査からもおそらくジャームだわ。ジャームは妄執に囚われた存在…。

あの仮面の演技からしても、どう考えても連想されるのは継母なのに、なぜ、|白雪姫(安倍さん)に憑依したのかしら?」


「…また、謎が増えた……」


舞がはぁ、とため息をつく横で、とんとんと裕子は資料をまとめる。


「でもまぁ、謎は置いとくとして、これでUGNとしての方向性は決まったわね」


「…仮面のレネゲイドビーイングを倒す」


奏の言葉に、裕子も深くうなずく。


「ええ。仮面のレネゲイドビーイング、ファントムマザーから安部晴香さんを救出、及び遺産『八咫鏡』の回収。

そして、FHは確か安部晴香さんごと殺して鏡を奪う算段をしていたはずよね?なら、我ら“世界の盾”UGNとしては黙ってられないわ。FHの刺客も撃退するわよ」


「……はい」


「…了解」


裕子の指示に頷くと、奏はちらりと舞の方をみやった。


「(色々大変なことになってるなぁ……なのになんで秋屋さんあんなに冷静なんだろ……)」


舞は兄が拉致されているのだ。それなのに、当の本人は全く意に介していない。

それどころか、興味すらなさそうな様子だ。


事情を全く知らない奏には、ある意味当然の疑問だった。


そんな心情をよそに、裕子は指示を続ける。


「準備を整えて、次の『スノーホワイト』の公演に出発。公演自体は明後日みたいね。他にもFHの動きとか無理しない範囲で調べてもいいかもね」


「はい。…まだ、調べないといけないこと、たくさんありますから。」


奏がそういったすぐあと、ぱたん、と舞は本を閉じる。

そして、机の上に置かれていた八咫鏡の資料を取り出した。


「……この鏡、確か遺産(レガシー)なんですよね」


「えぇ、そうよ。」


裕子の返事を聞くやいなや、舞は眼鏡を外した。


「………じゃあ、私少し寝ます。」


「えっ?」


奏が少し不思議そうな顔をするが、その言葉でいつみも裕子も一瞬で理解した顔をする。


「わかったわ。なるべく静かにしてるわね?」


「…助かる。」


そういうや否や、舞は、ソファに座ったまま目を閉じた。

奏は不思議そうに舞を眺めていたが、やがて裕子が少し小さい声で奏に言った。


「そだ、奏くん。ちょっと機材を運んで来たいの。手伝ってくれる?」


「え?機材?」


「いいから、いいから♪」


裕子は奏を引っ張るように手を掴むと、そのまま舞の邪魔をしないように立ち去ったのだった。



   ◆  ◆  ◆



  ………トプン………



意識の深い場所へ、舞は自ら潜っていく


まるで水の中へ、身を投げるような感覚。

だが、息苦しさなど全く感じず、彼女は自然に緩やかな引力に身をゆだねていた。


ずっと意識の海を潜り、そしてその先に舞と同じ見た目の「くれは」がそこに居た



「…なんだ、君か。」


全く同じ姿見、髪の色だけが、二人の分別をつけている。

舞は目の前の少女に、呆れたような顔をして言う。


「…その私に対する猫かぶりやめたらどう?」


「いきなり来たかと思えば嫌味か、相も変わらずキツイ性格しているな」


「…貴方も対外よ、くれは」


「俺はそこまで毒吐いたりしねーよ」


と、言いながらくれはは含み笑いをした。

そして、言い直すようにして真面目な顔をする。


「…で、君が来たということは、俺が知っている何かを知りたいんだろ?」


「話が早くて助かるわ…知りたいのは鏡についてよ。」


「鏡?鏡ったら…」


そういいくれはは少しだけ考えるような素振りを見せてから


「…八咫鏡、か。」


と、呟くように言った。


「貴方に聞きに来そうな鏡なんてそれしかないわよ」


「まぁそれもそうだな…」


くれははそう言いまた含み笑いをひとつ。


「…多分察しの良い君なら、あれが遺産(レガシー)であることはもう言わずもがなだな。」


「…えぇ」


「…あの男、奏と言ったか?あいつが持っている石と同じ系統の遺産(レガシー)だ、相当に厄介な能力も持ち合わせている。」


「………」


舞はじっと黙って、その話を聞いていた。


「…言っちゃなんだが、君は本当に不幸というか、不運だな」


「…うるさいわね」


舞はくれはに言われて、ムッとしたような顔になって言う。


「まぁそれはいい、あの遺産たちは人の手に有り余る物ばかりだ、相手にしてたら碌な目にあわない。

手を引くのも、また選択の一つだと思っておいてくれ。」


「…私が一度首突っ込んでおいて、むざむざ引くような女に見えるの?」


「…ああ、聞いた俺が馬鹿だった、だがな。」


くれはは一呼吸おいて、舞に告げる。


「…お前、"混ざり始めている"ぞ。」


その言葉に、舞は一瞬息が詰まるような感覚を覚える。


「入ってきた俺が言うのも何だが、これ以上レネゲイドの力を使うな、何もかも失って、全て崩壊するぞ。」


くれはの忠告に、舞は一寸の躊躇いも見せなかった。


「………残念ながら私は不器用なんでね。

もう貴方を拒絶して生きない、貴方と共存していく方法を探すことにしたの。

…例えそれが混ざりきって、私が私じゃ無くなったとしてもね。」


くれははその言葉をじっと黙ったまま聞き、そして


「…勝手にしろ。」


とだけ言い、彼女は意識のさらに深いところへ潜っていった。


それを見届け、舞は意識を元の場所へ戻す。

少しだけ、息苦しさを覚えながら、舞は意識は現実へと引き戻すのだった。

おひさしぶりです。色々あって更新遅れました。

舞と奏は情報収集が苦手です。社会あんまないです。

だから情報収集失敗しまくりで……この話は二つくらいシーンをまとめてお送りしています。

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