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家賃滞納地雷ちゃん  作者: leemero


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7/8

初出勤の朝はうるさい

 地雷ちゃんの初出勤の日が来た。


 神谷優人は、朝六時半に目を覚ました。


 いつもより早い。


 別に、地雷ちゃんのためではない。


 断じて違う。


 今日はたまたま早く目が覚めただけだ。


 昨日、寝る前に「ちゃんと起きられるだろうか」と少し考えた気もするが、それはただの隣人としての常識的な心配である。


 常識的な心配。


 便利な言葉だ。


 優人は布団の中で天井を見上げた。


 隣の202号室は静かだった。


 静かすぎた。


 地雷ちゃんは今日、カラオケ店の初出勤である。


 勤務開始は九時。


 本人いわく、目覚ましは五個かけたらしい。


 五個かけたなら、普通は起きる。


 普通は。


 だが、地雷ちゃんに普通を期待していいのか。


 そこが問題だった。


「……いや、知らん」


 優人は声に出して言った。


 起きるかどうかは本人の問題だ。


 働くと決めたのも本人。


 面接に受かったのも本人。


 初出勤に行くのも本人。


 自分は関係ない。


 そう思いながら、優人はなぜか布団から出た。


 洗面所で顔を洗う。


 歯を磨く。


 髪を整える。


 スーツに着替える。


 いつもの朝だ。


 ただ、いつもより少しだけ耳が隣に向いていた。


 202号室から音はしない。


 静かだ。


 不気味なくらい静かだ。


 優人は時計を見る。


 七時十分。


 まだ時間はある。


 だが、地雷ちゃんが準備にどれだけ時間をかけるのか分からない。


 昨日の髪の跳ね方を見る限り、十秒で終わるタイプではない。


 いや、十秒で終わらせるタイプだから危ないのかもしれない。


 優人は玄関まで行き、靴を履いた。


 そしてドアノブに手をかける。


 そこで止まった。


 もし、開けた先に地雷ちゃんが起きていなかったら。


 もし、まだ寝ていたら。


 自分はどうするのか。


 起こすのか。


 起こさないのか。


 起こしたら負けではないのか。


 何と戦っているのか。


 優人は自分でも分からなくなった。


「……出勤するだけだ」


 そう言い聞かせて、ドアを開けた。


 廊下には誰もいなかった。


 珍しい。


 本当に珍しい。


 この数日、202号室の前には高確率で地雷ちゃんがいた。


 むしろ、いないことに違和感がある。


 慣れとは怖い。


 優人は202号室のドアを見る。


 静かだ。


 あまりにも静かだ。


「……」


 何もしない。


 そう決めた。


 他人の生活に踏み込まない。


 それが大人の距離感だ。


 優人は階段へ向かう。


 その瞬間。


 一階から、とんでもない声が響いた。


「地雷ちゃああああああん! 朝だぞおおおおお!」


 優人は階段の途中で固まった。


 熱田翔だった。


 声で分かる。


 というか、この声量を出す住人は一人しかいない。


 翔が一階から階段を駆け上がってくる。


 手には鍋のフタ。


 なぜ鍋のフタなのか。


 答えを知りたくない。


「神谷くん! おはよう!」


「おはようございます。声を小さくしてください」


「今日は地雷ちゃんの初出勤だ!」


「知ってます」


「起こさないと!」


「なぜ鍋のフタを持っているんですか」


「鳴らすためだ!」


「絶対やめてください」


 優人は即座に止めた。


 朝七時過ぎのアパートで鍋のフタを鳴らす男。


 想像するだけで迷惑だ。


 いや、想像するまでもなく迷惑だ。


「でも起きないかもしれないだろ!」


「普通にノックしてください」


「普通だな!」


「普通でいいんです」


「普通はつまらん!」


「朝はつまらなくていいんです」


 翔は不満そうだったが、さすがに鍋のフタを鳴らすのはやめた。


 少しだけ安心する。


 すると今度は、一階のドアが開く音がした。


 きっちりした足音。


 嫌な予感と安心感が同時に来る。


 黒崎真琴だった。


 今日も完璧なスーツ姿。


 髪も乱れていない。


 社会人という生き物の完成形みたいな人である。


「おはようございます」


「おはようございます」


「おはようございます!」


 翔だけ声が大きい。


 黒崎は眉を寄せた。


「朝から声が大きいです」


「すまん!」


「小さくしてください」


「分かった!」


「小さくなっていません」


「よく言われる!」


「直してください」


 黒崎の声は冷静だった。


 翔は笑っている。


 通じているのかいないのか分からない。


「今日は地雷ちゃんの初出勤ですね」


 黒崎が言った。


「黒崎さんも覚えてたんですね」


 優人が言うと、黒崎は少しだけ視線を逸らした。


「一応です」


「優しいですね」


「違います」


「はい」


 もう否定されることにも慣れてきた。


 黒崎は202号室を見る。


「静かですね」


「静かです」


「起きていない可能性がありますね」


「ありますね」


「起こしましょう」


「黒崎さんが言うんですか」


「初日から遅刻すると、本人が困ります」


「それはそうですけど」


 黒崎は淡々としている。


 だが、やっぱり面倒見はいい。


 優人はそう思った。


「よし! 俺がいく!」


 翔が前に出る。


「やめてください。声が大きいので」


「俺の長所だ!」


「今は短所です」


「ひどい!」


 結局、優人が202号室の前に立った。


 なぜ自分なのか。


 分からない。


 気づけばそうなっていた。


 優人は軽くドアをノックする。


「地雷ちゃん」


 返事はない。


 もう一度ノックする。


「地雷ちゃん。朝ですよ」


 やはり返事はない。


 翔が鍋のフタを構える。


「待ってください」


「まだか!」


「まだです」


 黒崎が腕時計を見る。


「このままだと危ないですね」


「そうですね」


「もう少し強く」


「分かりました」


 優人は少し強めにノックした。


「地雷ちゃん。初出勤ですよ」


 しばらく沈黙。


 そして。


 部屋の中から、何かが落ちる音がした。


 ドン。


 ガタッ。


 バサバサッ。


「……生きてますか」


 優人が言うと、中からくぐもった声が聞こえた。


「死んだ」


「生きてますね」


「朝、強すぎ」


「起きてください」


「あと五分」


「駄目です」


「三分」


「駄目です」


「一分」


「起きてください」


「鬼」


「現実です」


「現実ハラスメント……」


 声が弱い。


 かなり眠そうだった。


 黒崎がドアの向こうに向かって言う。


「地雷ちゃん、初日から遅刻したら印象が悪くなります」


「黒崎さん……?」


「はい」


「朝から正論やめて……」


「起きてください」


「はい……」


 強い。


 黒崎の声は、目覚まし五個より効くらしい。


 部屋の中で、ばたばたと動く音がし始めた。


 翔が嬉しそうに鍋のフタを掲げる。


「起きたな!」


「鳴らしてないのに役に立ちませんでしたね」


「持ってきた意味!」


「ありません」


「ひどい!」


 数分後。


 202号室のドアが開いた。


 地雷ちゃんが出てきた。


 髪は跳ねていた。


 服は昨日よりさらにまともだった。


 ただし、靴下が左右で違った。


 優人は黙った。


 黒崎も黙った。


 翔だけが言った。


「おお! 気合い入ってるな!」


「どこを見てそう思ったんですか」


 優人は思わず聞いた。


「顔!」


「眠そうですけど」


「眠そうでも気合いは入る!」


「便利ですね」


 地雷ちゃんは目をこすりながら廊下に出た。


「おはよ……」


「おはようございます」


「おはようございます」


「おはよう!」


 三人分の挨拶が返る。


 地雷ちゃんは少しだけ目を細めた。


「朝から人数多くない?」


「あなたが起きないからです」


「私、人気者?」


「要注意人物です」


「ひど」


 黒崎が地雷ちゃんの足元を見る。


「靴下が左右違います」


「え?」


 地雷ちゃんは自分の足元を見た。


 片方が黒。


 片方が白。


 見事に違う。


「おしゃれ」


「違います」


「個性」


「違います」


「多様性」


「違います」


 黒崎はきっぱり否定した。


「替えてきてください」


「時間ない」


「ならせめて同じ色に見える靴にしてください」


「そんな技ない」


「部屋から同じ靴下を探してください」


「部屋が迷宮なんだよ」


「整頓してください」


「今それ言う?」


「今後のためです」


 地雷ちゃんは渋々部屋に戻った。


 しばらくして、今度は両方黒い靴下で出てきた。


 なぜか片方だけ少し短い。


 黒崎は見なかったことにした。


 優人もそうした。


 翔は気づいていなかった。


 ある意味幸せな男だ。


「履歴書は?」


 優人が聞く。


「ある」


 地雷ちゃんはクリアファイルを見せる。


「スマホは?」


「ある」


「財布は?」


「……」


「財布は?」


「ある、たぶん」


「確認してください」


 地雷ちゃんは鞄の中を探る。


 数秒後、財布を取り出した。


「ある」


「中身は?」


「聞くな」


「交通費は?」


「ある」


「本当に?」


「昨日、翔にもらった」


「え」


 優人は翔を見る。


 翔は笑顔で親指を立てた。


「初出勤祝いだ!」


「貸したんですか?」


「いや、あげた!」


「甘やかさないでください」


「三百円だぞ!」


「金額の問題では」


「神谷」


 地雷ちゃんが横から言う。


「ちゃんと返す」


「本当ですか」


「給料出たら」


「かなり先ですね」


「覚えてたら」


「覚えててください」


 黒崎が地雷ちゃんを見る。


「お金の貸し借りはきちんとしてください」


「はい」


 素直だった。


 黒崎の前ではやはり少し弱い。


「それで、何時に出れば間に合うんですか」


 黒崎が聞く。


「八時二十分くらい」


「今、七時四十五分です」


「余裕じゃん」


「余裕を持って出てください」


「黒崎さん、余裕って言葉嫌い?」


「余裕を潰す人が嫌いです」


「刺さる」


 優人は時計を見る。


 自分もそろそろ出ないといけない。


 だが地雷ちゃんの初出勤の準備が、まるで小学生の遠足前みたいで目が離せない。


 いや、小学生の方がしっかりしているかもしれない。


「地雷ちゃん」


「なに」


「今日は勤務初日です。遅刻しない。挨拶する。分からないことは聞く。勝手に帰らない」


「最後の何?」


「一番大事です」


「帰らないよ」


「本当に?」


「たぶん」


「たぶん禁止」


「帰らない」


「よし」


 地雷ちゃんは少しむっとした顔をした。


「神谷、親みたい」


「嫌なこと言わないでください」


「保護者」


「もっと嫌です」


「監視員」


「それならまだ」


「いいんだ」


 翔が大きく笑う。


「いいじゃないか! おんぼろ荘みんなで応援だ!」


「みんなではありません」


 黒崎が言った。


「私たちは各自出勤です」


「冷静!」


「当然です」


「でも応援はしてるだろ?」


 翔が明るく言う。


 黒崎は少しだけ黙った。


 そして地雷ちゃんを見る。


「遅刻しないでください」


「それ応援?」


「応援です」


「厳しめの応援だな」


 優人も鞄を持ち直した。


「初日は疲れると思うので、終わったらすぐ帰って休んでください」


「祝い飯は?」


「まだ言ってるんですか」


「初出勤終わったら祝いじゃん」


「毎回祝ってたら給料より食費が先に来ます」


「それは困る」


「困るならやめてください」


 地雷ちゃんは少しだけ笑った。


 昨日の不安そうな顔とは違う。


 まだ眠そうではある。


 でも、行こうとしている顔だった。


「じゃあ」


 黒崎が階段へ向かう。


「私は行きます」


「いってらー」


「地雷ちゃんも、ちゃんと行ってください」


「行くって」


 翔も一階へ戻ろうとする。


「俺は夜勤じゃないから二度寝する!」


「ただの休日ですか」


「今日は休みだ!」


「それで朝から鍋のフタ持ってきたんですか」


「もちろん!」


「元気ですね」


「元気が取り柄だ!」


 翔は笑って階段を下りていった。


 黒崎も外へ向かう。


 優人も続こうとした。


 その時、地雷ちゃんが声をかけてきた。


「神谷」


「何ですか」


「ちゃんと行ったら、褒めろよ」


「行って、働いて、帰ってきたら褒めます」


「ハードル上がってる」


「それが初出勤です」


「厳しいなぁ」


「でも」


「でも?」


「行くだけでも、昨日よりは進んでます」


 地雷ちゃんは少しだけ目を逸らした。


 そして、クリアファイルをぎゅっと抱えた。


「……うん」


 その返事は小さかった。


 けれど、いつもの適当な返事ではなかった。


 優人はそれ以上何も言わず、階段を下りた。


 会社に向かう道の途中、何度かスマホを見そうになった。


 連絡先は知らない。


 だから見る意味はない。


 それでも気になる。


 初出勤に間に合ったのか。


 途中で帰っていないか。


 いらっしゃーいと言っていないか。


 それを考えている自分が、少しだけ嫌だった。


 完全に巻き込まれている。


 仕事中も、ふとした瞬間に思い出した。


 会議中。


 上司が資料の数字を指摘している時。


 優人の頭には、左右違う靴下の地雷ちゃんが浮かんだ。


 駄目だ。


 仕事に集中しろ。


 人類はなぜ働くのか。


 地雷ちゃんは今働いているのか。


 思考がだいぶ汚染されていた。


 夜。


 優人は少しだけ早く仕事を終えた。


 早く帰ろうと思ったわけではない。


 たまたま仕事が片付いただけだ。


 そういうことにしておく。


 おんぼろ荘へ戻ると、一階の前に翔がいた。


 なぜか腕を組んでいる。


「神谷くん!」


「こんばんは。何してるんですか」


「待ってた!」


「俺を?」


「いや、地雷ちゃんを!」


「でしょうね」


 翔の横には、黒崎もいた。


 仕事帰りらしく、いつものスーツ姿でバッグを持っている。


「黒崎さんまで」


「たまたま帰ってきただけです」


「本当に?」


「本当です」


「そうですか」


 優人は深く追及しなかった。


 黒崎は追及されるのを嫌がりそうだ。


 三人がアパート前にいると、少し離れた道から人影が見えた。


 地雷ちゃんだった。


 歩いてくる。


 クリアファイルを持っている。


 朝より髪が乱れている。


 顔は疲れている。


 だが、ちゃんと帰ってきた。


 それだけで、優人は少しだけ安心してしまった。


「おかえり!」


 翔が大声で言った。


「声でか……」


 地雷ちゃんが疲れた声で返す。


「どうだった!」


「疲れた」


「最後までいましたか?」


 黒崎が聞く。


「いた」


「勝手に帰ってませんか?」


「帰ってない」


「挨拶は?」


「した」


「いらっしゃーいは?」


 優人が聞く。


「一回だけ言いかけた」


「言いかけたんですか」


「でも飲み込んだ」


「偉いです」


 地雷ちゃんはその言葉を聞いて、顔を上げた。


「今、褒めた?」


「はい」


「もう一回」


「よく行って、ちゃんと働いて、ちゃんと帰ってきました」


「もっと」


「初出勤、お疲れ様です」


 地雷ちゃんは、にやっと笑った。


 疲れているのに嬉しそうだった。


「働いた」


「働きましたね」


「人類、すごいな」


「そうですね」


「毎日これやってる神谷、すごいな」


「普通です」


「黒崎さんもすごいな」


「普通です」


「翔は?」


「俺は元気だ!」


「それは知ってる」


 地雷ちゃんは笑った。


 そして、その場にしゃがみ込みそうになったので、優人は慌てて止めた。


「部屋に戻ってください」


「足が死んだ」


「死んでません」


「初出勤って戦争?」


「違います」


「でも勝った?」


「勝ちました」


 優人が言うと、地雷ちゃんは少しだけ目を丸くした。


「勝った?」


「今日は勝ちです」


「やった」


 地雷ちゃんは小さく拳を握った。


 その姿は少し子供っぽかった。


 でも、悪くなかった。


「よし!」


 翔が言った。


「勝ったなら祝勝会だ!」


「駄目です」


 優人と黒崎が同時に言った。


 翔は大きく笑った。


「息ぴったりだな!」


「疲れているので休ませてください」


 黒崎が冷静に言う。


「明日も勤務ですか?」


「明日は休み」


 地雷ちゃんが答える。


「なら今日は休んでください」


「でも腹減った」


「食べてから寝てください」


「金ない」


「そこは働いてもすぐ解決しないんですよね」


 優人はため息を吐いた。


 翔がポケットから何かを取り出す。


「じゃあこれ!」


 出てきたのは、コンビニの鮭おにぎりだった。


 地雷ちゃんの目が輝く。


「神」


「俺は熱田翔だ!」


「熱男」


「お、いいなそれ!」


 地雷ちゃんが初めてそう呼んだ。


 翔は気に入ったらしい。


 優人は少し嫌な予感がした。


 このあだ名は定着する。


 間違いなく定着する。


 黒崎は軽くため息を吐く。


「食べたらすぐ休んでください」


「はい」


 地雷ちゃんは素直に返事をした。


 今日は疲れているせいか、いつもより抵抗が弱い。


「神谷」


「何ですか」


「今日、私、偉かった?」


「偉かったです」


「黒崎さん」


「初日に遅刻せず、最後まで働いたのは良いことです」


「熱男」


「最高だ!」


 地雷ちゃんは満足そうに頷いた。


 そして鮭おにぎりを抱えて、ゆっくり階段を上っていく。


 途中で振り返った。


「明日も仕事じゃないけど」


「はい」


「明後日も行く」


「そうしてください」


「起こして」


「嫌です」


「そこは変わらないのかよ」


「自分で起きてください」


 地雷ちゃんは笑って、二階へ上がっていった。


 その背中は朝より少し重そうだった。


 けれど、昨日より少しだけしっかりしているようにも見えた。


 優人はそれを見送る。


 黒崎が隣で言った。


「一日目は、何とか終わりましたね」


「そうですね」


「明後日が問題です」


「現実的ですね」


「現実なので」


「黒崎さんまで現実ハラスメントですね」


「やめてください」


 翔が明るく笑う。


「でもいいじゃないか! 一歩前進だ!」


 優人は否定しなかった。


 確かに一歩前進だ。


 まだ家賃は払えていない。


 まだ給料も出ていない。


 まだ何も解決していない。


 でも、地雷ちゃんは今日、ちゃんと働いて帰ってきた。


 それだけで、おんぼろ荘にとっては大事件だった。


 優人は二階を見上げる。


 202号室のドアが閉まる音がした。


 その音が、少しだけ頼もしく聞こえた。


 直後。


 ドアの向こうから地雷ちゃんの声が響いた。


「制服、店に忘れた!」


 優人は額を押さえた。


 黒崎も目を閉じた。


 翔だけが笑った。


 やっぱり、一歩前進しても地雷は地雷だった。

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