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“界”の残響(リフレイン)−断章編−  作者: 黒っぽい猫


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空に舞う美しい魔術の裏側

第6話「天界ショッピング日和」で途中優奈と熊川先輩が離れた後本編では優奈がとても美しい魔術を駆使して魔物を倒す所を熊川先輩達が感嘆の声をあげていた時の優奈視点です。

この時優奈はどんな気持ちで魔物に向かい、戦闘したのかを中心に書きました。



「……ちょっと仕事に行ってきますね」


半分ため息、半分やる気なし。


でも足はもう動いていた。


胸元のブローチ型の飛行魔術具に魔力を流すと、背中にふわりと“羽”が広がった。


——-半透明の、大きなリボンのような羽。


空気を掴む感覚と同時に、身体が軽くなる。


「よっと」


地面を蹴った瞬間、視界が一気に開けた。


天界の空は、どこまでも澄んでいる。


けれど、その静けさとは裏腹に——


遠くの森の一角だけが、明らかに荒れていた。


木々が倒れ、土がえぐられている。


「あ、いたいた」


うちはそのまま高度を下げ、森へと滑り込んだ。


大きな影。


無秩序に暴れ回る、異形の存在。


「……あの魔物は」


記憶が自然と浮かび上がる。


ユナの知識。


膨大な知識の中から、該当するものがすぐに見つかった。


(寒さに弱いタイプ……か)


この辺りは比較的温暖な地域だ。


人が住むエリアは、さらに暖かい。


「寒さに耐えられず人里へ暖を取りに来たかな…」


なら、やることは一つ。


「人里に辿り着くまでに倒せばいい」


正直、魔物はちょっと怖い。


見た目もそうだし、普通に痛いし。


でも——


(お腹空いたし、さっさと終わらせよ)


それが一番大きい理由だった。


手のひらに、魔導書を呼び出す。


空間が歪むようにして現れたそれを開くと、ページがひとりでにめくれていく。


そして止まったのは——氷属性の攻撃魔術。


「よし」


魔力を流し込む。


瞬間、魔術陣が空中に展開された。


幾何学模様が光り、冷気が一気に広がる。


めちゃくちゃ寒い。


「確か、弱点は……」


コア。


心臓付近にある、魔力の核。


小さくて、しかも動く。


(……めんどくさいタイプ)


うちは別の魔導書に手をかざした。


普通なら“既存の魔術陣”もしくは“口頭魔術”を使う。


けれど——


「ちょっと改造するか」


魔力を練り、空中に直接、追加の魔術陣を描いていく。


位置補正。追尾補助。発動タイミングの調整。


複数の術式を重ね、ひとつの攻撃へと組み上げる。


(……これ、普通はやらないよね)


やりながら自分で思う。


でも、便利なものは使えるなら使う。


「——“起動”」


次の瞬間、氷の槍が無数に生成された。


空気を切り裂き、一直線に魔物へと向かう。


ドンッ!!


衝撃。


けれど——


「やっぱ外すか」


コアには当たっていない。


魔物が暴れる。


腕のようなものが振るわれ、空気が唸る。


「おっと」


その瞬間、別の魔導書を呼び出す。


防御用に別で待機させていた魔導書だ。


ページを開くだけで、防御魔術陣が展開される。


ガンッ!!


衝撃が弾かれる。


「危ない危ない」


軽く息を吐く。


でも、余裕はある。


攻撃。調整。再構築。


魔物の動きに合わせて、魔術を“その場で書き換える”。


普通の魔術師なら一つの術式で精一杯。


でも“ユナ”は違う。


同時に複数の魔術を扱い、さらに改造まで行う。


「……次でいける」


コアの位置を完全に捉えた。


魔術陣を再構築。


軌道を絞る。


魔力を一点に集中させる。


「——これで終わり」


放たれた氷の槍が、


一直線に——


コアを貫いた。


一瞬、静寂が訪れる。


そして——


魔物の身体が崩れ、光となって消えた。


「ふぅ……」


空中で軽く伸びをする。


「……やっぱりコア小さいのめんどくさいな」


素直な感想。


でも、早く終わったからよし。


そのときだった。


「……ん?」


なんとなく、違和感。


誰かに見られているような感覚。


うちは目を細めた。


魔力を広げる。


探知。


空間に溶けるように、周囲を読み取る。


「……あ、いた。」


反応があった。


かなり遠く。


約2km先。


複数の魔力。


その中に——


見覚えのあるもの。


(熊川先輩……と、あと数人)


たぶん。


いや、ほぼ確実に。


(……エルとルミだな、これ)


エルのあのテンション的に絶対見に来てる。


そして、ルミは賛同して見に来たってところかな。


「……いつから見てたんだろ」


ちょっと恥ずかしい。


いや、かなり恥ずかしい。


うちは軽くため息をついた。


そして指を鳴らす。


空間に魔術陣が展開される。


「……問い詰めに行きますか」


次の瞬間。


視界が歪み——


うちは、その場から消えた。


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