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113 三日目:作戦会議、そして出発

 冒険者の傍に寄ったナターシャは聞き耳を立てる。なになに?


 集団の中、ディビスと長髭の男性が代表として話し合っている。

 既に色々と決まっているようだ。聞くの遅かったか。


「……ではディビス、我々が主要メンバーという事で良いな」


「あぁ、それで構わない。馬車の護衛は銀等級二人に任せよう。索敵要員としてアストリカにも来て欲しかったが、魔力が殆ど残っていないから役に立たない」


「聞こえてるわよー!」


 不満そうに叫ぶアストリカ。その声を聞いた冒険者達は軽く笑う。

 ディビスも軽く笑いながら話す。


「ハハ……じゃあもう一度確認する。今回クエストを受ける人数は5人。俺とオデル、フェリ、エイト、ベスだ。斬鬼丸さんもそれで良いな?」


「御意。拙者の役割は?」


「親衛隊の兵士を守ってくれ」


「承った」


 斬鬼丸が頷く。

 ディビスは更に話を続ける。


「今回は魔物討伐じゃなくて突入からの救出だ。ルートも決まっているらしい。……本来ならアウラを連れて行きたいが、まだブロンズだ。それに持久力も無い。連れて行ったら狼の餌食になっちまう」


「うぅ、役に立たなくてごめんなさい……」


 アウラは申し訳なさそうに謝る。

 傍にいたアストリカがアウラをよしよしと慰める。


「……そこでだ。俺が代替え品を提供する。これだ」


 ディビスは腰のポーチから1本の試験管を取り出す。中には緑色の液体が入っている。


「これは回復ポーションだ。一本銀貨60枚。大盤振る舞いだぞ」


 ディビスが試験管を揺らしチャプチャプと音を鳴らしている所で、カレーズが突っ込む。


「……ディビス、なんで銀貨で言ったんだ? 金貨で良いだろ」


 ディビスは顔の向きを変えずに振るのを止め、バツの悪そうな表情で答える。


「金貨3枚だとなんか安っぽく聞こえるじゃねぇか。だから銀貨で言った」


「なるほど」


 カレーズも納得する。


「……アーデルハイド教官。このポーション分の報酬も上乗せしてくれよな?」


 ディビスに問い掛けられたアーデルハイドは中指で軽く眼鏡を上げて返答。


「成功したら考えます」


 無慈悲に突っ撥ねる。一考するだけで出すとは言ってない所が鬼である。

 ディビスは悔しさで叫びながら仲間を扇動する。


「クッソォォォ! この緊急クエストには俺のポーション代が掛かってるんだァッ! 絶対成功させるぞお前らァ!」


『おぉぉーーッ!!!!』


 そんなノリでやる気が出るのだから、冒険者って不思議だなぁとナターシャは思う。

 冒険者達の話を聞く為、黙っていた親衛隊の兵士がようやく口を開く。


「……失礼だが、そこの鎧の御仁。貴方は何者だ? 冒険者では無いのだろう?」


 まず兵士は腕を組んで立っている斬鬼丸に所属を問う。

 斬鬼丸は返答に困っているようで、ナターシャに念話を繋げてくる。


『……ナターシャ殿。拙者はどう答えれば良いのでありますか?』


(ユリスタシア家所属の騎士って言えば良いよ。お父さん副団長だし)


『御意』


 斬鬼丸はナターシャの言う通り返答する。


「拙者はユリスタシア家所属の騎士であります」


「おぉ、ユリスタシア家という事は……あのリターリス副団長の。通りで装備が整っているのですね。失礼しました」


 兵士は言葉を正し、丁寧な口調で軽く謝罪。同じ騎士としての対応だろう。

 そのまま冒険者達の方を向いて作戦の概要を話す。


「……まず分かっている事だが、森の中に居る狼達は非常に統率が取れている。数も多い。出会う度に撃破していてはいつまで経ってもタリスタン様の元へ辿り着けない。……そこで我々は、鋒矢ほうしという一本の矢のような陣形を組んで森の中を真っ直ぐ突き進む。人数も少なく、待ち時間は無い。少しでも遅れれば狼の餌食になる。その覚悟は出来ているか?」


 兵士の問いに、クエストに出る冒険者達は緊張した面持ちで頷く。

 斬鬼丸は相変わらず呑気な感じ。

 冒険者達の表情を見た兵士は次に配置を話す。


「そして配置だが、私が隊長として先頭を走る。その後ろに斬鬼丸が続く」


「御意」


「その両サイドをディビス、オデルが挟む」


「おう」「うむ」


「フェリ、エイト、ベスは斬鬼丸の後ろに続いて走ってくれ」


「「「了解」」」


 冒険者達は一切の不満を言わず兵士の言葉に了承を返す。相当な手練れ感を出している。

 ナターシャはなんかすごくカッコイイ……!と思いながらその作戦概要を聞いている。(よく分かってない)


「最後になるが、私は一人たりとも死なせるつもりは無い。私の作戦通り進めれば必ず成功する。……その命、信じて私に預けろッ! 良いなッ!」


「「応ッ!!!」」


 兵士の鼓舞する声に冒険者達もノリ良く掛け声を出す。そして面白がるように笑い合う。

 これから死地に向かうとは思えない面持ちである。


「……ふっ、ただの冒険者だと思っていたが、中々肝の座った人達だ。軽んじていた事を謝罪しよう」


 兵士もその様子を見て微笑みながら詫びを入れる。

 ナターシャは斬鬼丸の隣に移動。斬鬼丸をチョンチョンと突く。


『どうしたのでありますか?』


 太ももをつつかれた斬鬼丸は隣に来たナターシャに聞く。


(あのさ、クレフォリアちゃん達が心配だから、部屋に見張りを付けてってサラっと伝えて欲しいんだ。アーデルハイドさんに問いかける感じで)


『御意』


 斬鬼丸は準備運動を始める冒険者達から離れ、アーデルハイドに話しかける。


「……アーデルハイド殿。お願いしたい事が」


「斬鬼丸さん。どうしましたか?」


「いえ何。拙者が居ない間、宿にいるクレフォリア殿達の護衛もお願いしたく」


「あぁ、成程……」


 アーデルハイドは考え始めるが、二人の話を盗み聞きしていたアストリカがアウラを連れて割り込んでくる。


「なら、私達が部屋に誰か入らないか見張るわ!」


「えぇっ!? あ、アストリカさん、私達には馬車の護衛が……!」


「大丈夫よアウラ。馬車はどうせ倉庫に入れるんだし、男が4人もいれば襲撃されても対応出来るわ。カレーズも居るし。……それに、お風呂での借りはちゃんと返さないと。ねっ?」


「そ、そうですけどぉ……」


 つい流されそうになるアウラ。

 アストリカがアウラを連れて馬車の護衛から逃げようとしている事を察知したカレーズが叫ぶ。


「あっ! 汚ねぇぞアストリカ! 護衛から逃げるな!」


「逃げてないわよー! ただ馬車から少し離れた場所で待機しようとしてるだけ! どうせ魔力足りなくて戦闘でも役に立たないもの! 魔法使えないし!」


「嘘付け! そのワンド魔力無しで伸びるだろうが! 前衛張れ!」


 アストリカは聞こえなーいと言いながらアウラの手を握り、


「なんかあったら叫びなさいよー! そしたら駆けつけるからー!」


「わっ、ちょっと、アストリカさぁぁ~ん……!」


 そのまま引っ張って宿へと向かっていく。

 カレーズはため息をついて額を抑える。


「まったく、あんなんだから彼氏出来ないんだっての……」


『それとこれとは関係ないってのー!』


 地獄耳なのか、カレーズの呟きに返答してから宿に入るアストリカ。

 手を引かれるアウラが申し訳なさそうに頭を下げる様子が見えるが、下ろしきる前に宿のドアが閉まる。


 クエストに出る冒険者達は準備運動が終わったようで、意気揚々に腕や肩を回している。

 代表としてディビスが元気よく兵士に告げる。


「よぉし! 兵士さん、俺達は準備オーケーだ。後はアンタ次第だぜ」


 ディビスを含む冒険者5人と斬鬼丸は兵士を見て指示を待つ。

 兵士は静かに頷くと鞘から剣を抜き、掲げて叫ぶ。


「タリスタン様救出部隊! 武器を揚げよ!」


 斬鬼丸と冒険者も指示に従い、各々の武器を抜いて兵士と同じように掲げる。

 そして剣先を合わせ、そのまま降ろして円陣を組む。


「必ず任務を遂行し、生きて帰るぞォッ!」


「「おぉぉーーーーッ!!!」」


「打ち鳴らしッ!」


 最後に思いっきり武器を揚げ、打ち鳴らす。ガイィン!と心地よい金属の音が鳴る。

 これが出発のだ。部隊の士気も十分に高まった。


「出発ッ! 進めェッ!」


 親衛隊の兵士が不安そうに見守る村人の一人から松明を譲り受け、先陣を切って村の外に向かう。冒険者、斬鬼丸もそれに続く。

 救出部隊は武器を手に持ったまま、兵士を先頭に陣形を組んで森へと向かう。


 隠密魔法で隠れたままのナターシャも救出部隊の後ろをぴょこぴょこと付いていく。


 ……夕日は既に地平へと沈み始めている。

 救出部隊は夜間の森での戦闘を強いられるだろう。

これもう(描写適当過ぎて訳)分かんねぇな

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