112 三日目:(ファミチキください)
天使
[既に契約してる場合の詠唱はねー、“精霊と繋がりし我が魔力よ。想いの懸け橋となって種族の壁を越えろ。精霊念話”!]
ナターシャ
[ポエミィだねぇ]
天使
[精霊さんとお話するってなんだかとっても可愛くてポエミィな事だと天使ちゃんも思うなっ♪]
ナターシャ
[でも今からお話するの疑似剣神の精霊なんですけどね? 一刀で熊の首斬り落とすような]
天使
[可愛さ激減!]
魔法で姿を消したまま歩きスマホで階段を降り、そのまま宿の外に出るナターシャ。
宿の外では未だ冒険者達が話し合いをしていて、スマホの中では精霊魔法についての説明がされている。
天使
[まぁそもそもの話、普遍的に存在する属性の精霊さんと毎日会話して、友好的になってからようやく契約出来るようになるんですよ。だから先に勉強する事になるのはコッチの魔法なんですよなっちゃん!]
ナターシャ
[そうなんだ……。色々とすっ飛ばしちゃってるんだね]
天使
[まぁでもクッキーあげればワリとすぐ懐くんだけどね属性の精霊さん。全然難しくないよ?]
ナターシャ
[ちょろいな属性の精霊……というか精霊って食事出来るの?]
天使
[うん。精霊の核が強まれば出来るようになるよ。属性の精霊なんかは大本が強いから、小精霊でもクッキーもぐもぐ出来るの]
天使ちゃんから斬鬼丸が食事出来るようになる為の良い情報が出る。
ナターシャは詳細を聞いておく。後で斬鬼丸に教えよう。
ナターシャ
[へぇー……核を強める方法って?]
天使
[一に信仰。二に信仰。三、四に信仰。五に信仰!]
ナターシャ
[信仰って精霊にとって重要なんだね……]
天使
[精霊核に絶対必要だからねー。維持は魔力で補えるけど、信仰が無くなると核が消えちゃうから]
ナターシャ
[なるほど……。精霊って何で出来てるの?]
天使
[夢と希望]
ナターシャ
[……マジ?]
天使
[冗談っぽいけどマジです。精霊の在り方ってそういうもんだよ]
ナターシャ
[そうなんだ……]
天使
[まぁ精霊についてはこんな物かなっ。他に何か聞きたい事ある?]
ナターシャ
[聞きたい事は今の所無いかな。じゃあ今からテレビ通話繋げるねー]
天使
[はいはーい♪]
ナターシャはLINEが映るスマホの画面を操作して天使ちゃんに通話を掛ける。
3コール程鳴って通話画面に切り替わる。今日最初に映った物はリターリスとガーベリア。
安心した表情で手を振っている。
「やっほーナターシャだよー」
ナターシャも手を振り返すと二人は嬉しそうな顔になる。
おぉ、隠密魔法中でもスマホには俺の姿が映るのか。これは新発見だ。
画面の中ではリターリスが話しかける。
『こんばんはナターシャ。今は何処に居るんだい?』
ナターシャも軽い感じに対応する。
「今ねーヨステスっていう村。ガレットさんとクレフォリアちゃんが宿で寝ちゃって暇だから外に出た所」
『おぉ、そうか。道中の森を抜けるのは怖かっただろう。大丈夫だったかい?』
「大丈夫だったよ。途中魔物が出たけど、斬鬼丸が一撃で倒してくれた」
『おっ、斬鬼丸さん流石だなぁ。本気出してくれたんだね』
「うん。凄くカッコよかった。後、倒した魔物のお肉は村の人に分けてたよ」
『そうか。なら、今日の宿の食事は魔物の肉を使った料理かな。楽しみにしておきなさい』
「うん。魔物のお肉はエンシア王国でも食べてたから楽しみ」
ニッコリと笑うナターシャ。画面の向こうに居る二人もナターシャの表情を見て笑顔になる。
すると画面が動き、天使ちゃんが映る。天使ちゃんは少し頬を膨らませながら叫ぶ。
『天使ちゃんも魔物料理食べたーい!』
「お父さんに頼めば狩ってきてくれると思うよ?」
適当に抜かすナターシャ。
『ホント!? リターリスさん! 天使ちゃんも魔物のお肉食べたいです!』
『アハハ、また明日以降という事で……』
ナターシャの言葉により、画面の向こうで会話が始まる。ついでに画面が荒れ狂う。
いつ頃狩りに行くのか、いつなのか、いつ食べれるのか……主に天使ちゃんが質問攻めするがパパンが上手く受け流す。
魔物料理が食べたいならエンシア王国の冒険者ギルドに行けばいいんだよ天使ちゃん……とは言わない。だってまたエンシア王国に行く機会があるなら天使ちゃんと一緒に観光したいし。
画面の向こうが騒がしくなってきたので、ナターシャは少し大きめの声で問い掛ける。
「報告はこんなもんだけど、まだ何か気になる事あるー?」
天使ちゃんはお口チャックの動作をすると前の二人に画面を向ける。
映された二人の内、まずリターリスがナターシャに返答する。
『もう無いよナターシャ。ちゃんと安心した。そのまま旅を楽しみなさい』
「はーい」
次はガーベリアが返答。
『また明日ねナターシャちゃん。困った事があるならちゃんと人に相談するのよ?』
「うん。ありがとうお母さん」
『どういたしまして。気を付けてね』
「うん」
最後にまた画面が動き、天使ちゃんが映る。
『なっちゃんまたねー♪』
「うんまた明日―」
天使ちゃんに手を振られたので画面に向かって手を振り返す。
最後に両親が手を振っている所が映されてテレビ通話が終わる。
……まぁ上出来か。情報操作は上手くいった。
ナターシャはスマホをバッグの中に仕舞い、充電コードの吸着部を腕から首の後ろに付け替える。
そして早速教えて貰った対話魔法を使用する。
「“精霊と繋がりし我が魔力よ。想いの懸け橋となって種族の壁を越えろ。精霊念話”」
キュイィィ……と何かが鳴り響く音が脳内に響き、斬鬼丸と繋がった事をなんとなく理解する。
目の前の冒険者の中に混ざっている斬鬼丸も気付いたようで、辺りを見渡している様子が見える。
『……なんでありますかこれは』
そして脳内では斬鬼丸の声が響く。不思議そうな声音。おぉテレパシズム。
俺と会話してた時の神様ってこんな感じなんだろうなぁ。
ナターシャは脳内で返答する。
(もしもーし。斬鬼丸聞こえるー? ナターシャだよー)
ナターシャの声に気付いた斬鬼丸は気付いたように顔を上げて止まる。
『……おぉ、ナターシャ殿で御座ったか。何をしたのでありますか?』
(天使ちゃんに精霊と念話する手段が無いか聞いたら、これを教えて貰ったんだ。その名もシルフ・テレパス。私も初めてだから使い勝手とか良く分からないけど)
『……ほぉ。ナターシャ殿は不思議な事をやってのけるのでありますなぁ。それで、何処に?』
(今倉庫が左隣にある宿の前。見える?)
斬鬼丸は言われた方角を見るが、そこには誰も居ない。
首を傾げ、困ったように腕を組む斬鬼丸。しかしスグに理解したようで頷き始める。
『……あぁ、これは例の隠密魔法とやらを使われているのでありますな』
(そうそう正解。凄いでしょ。これなら斬鬼丸以外に迷惑掛けずに行動出来るよね)
『確かにその通り。……しかし、見えないのは少し不便でありますな。流石の拙者も見えない、気配も掴めない主を守る事は出来ませぬ』
あっ、そっか……そう言えばそうだな……
ナターシャは精霊念話を改造し、ちょっとした小細工をする事に決める。
(……おっけー、ちょっと待って)
『御意』
斬鬼丸にそう伝え、意識を切り替えて軽く考える。脳内でシュブブブ……と念話が止まる音がする。……おぉ?
不思議に思ったナターシャは試しに斬鬼丸に意識を向ける。するとキュィィ……と繋がる。
おぉ。思ってるより便利だぞこの魔法。再度意識を内部に向けて念話を切り、魔法を創る。
精霊念話から推測するに、斬鬼丸と俺は魔力で繋がってる。
だから、魔力の経路を伝って俺の位置と姿が見えるように簡単な詠唱を創ればOKだ。
つまりー……精霊と繋がりし我が魔力よ。その強固な絆を使い、契約せし精霊に我の姿、位置を常に知らせよ。で行けるだろう。
後は適当に二つ名……よし、決まった。
物は試しだ。使ってみよう。
ナターシャは創った魔法を詠唱する。
「……“精霊と繋がりし我が魔力よ。その強固なる絆の力を使い、契約せし精霊に我の姿、位置を常に知らせよ。位置通知”」
詠唱すると、なんだか斬鬼丸との繋がりが強くなった気がする。
しかし具体的には分からない為、再度念話を起動して斬鬼丸に聞く。
(もしもし斬鬼丸? これで見える?)
問い掛けられた斬鬼丸は早速ナターシャの居る方角を見る。
『確認するであります。……おぉ、見えているであります……が、……半透明でありますな』
斬鬼丸の言う通り、宿の前に居るナターシャの姿は若干薄い。背景が透けて見えている。
しかし、この中途半端さが逆にいい方向に働いてくれていると思う。
ナターシャは成功を理解して嬉しそうに話す。
(お、見えてるんだね。ならおっけー。半透明なら隠密魔法解けてるかどうかの判別も付きやすいでしょ)
『……成程。完全に見えている場合は他の人にも見えているという事でありますか。悪い部分が良い具合に働いたでありますな』
(だね。……よし、これで心配事は無くなったかな。今からそっちに行くねー)
『御意』
ナターシャは部隊編成を話し合っている冒険者達に混ざり込む為、少し駆け足で斬鬼丸の元に向かう。




