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【カクヨムコンテスト11 中間選考突破】 累計336万8千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
新選組列伝ー誠の残響ー

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第19話 近藤勇と沖田総司の最期

春。

だが空は、重かった。


鳥羽伏見の敗北。

それは、すべての終わりの始まりだった。


旧幕府軍は総崩れ。


【誠】は時代に、置き去りにされた。


新選組は瓦解。

離れる者。

残る者。

信じる者。

疑う者。


もう一つではなかった。


―甲州勝沼―


甲州の戦場。


土煙。

銃声。

剣ではない。


時代が違う。


「……くそッ」


土方が歯を噛む。


パンッ!! パンッ!!

パンッ!! パンッ!!

パンッ!! パンッ!!


連続する銃声。


新政府軍の嵐のような銃撃。


押し返せない。


「退け!!」


叫び。


崩れる旧幕府軍の隊列。


その中で


永倉が立ち止まる。


振り返る。


新選組の残党を見る。


「……ここまでだ」


低く。

静かに。

背を向ける。

離脱。


誠が、また一つ割れる。


―流山―


静かな町。

風が吹く。

血の匂いは、まだ来ていない。


だが終わりは、すぐそこだった。


近藤勇は髪を整え。

着物を正す。


名を捨てる。

大久保大和の偽名、生きるため。

仲間を守るため。


それでも。

その背は

変わらない局長のまま。


そして、新政府軍に囲まれる。

銃を突きつけられ逃げ場はない。


「名は」


冷たい声。


空気が止まる。


一瞬。


ほんの一瞬だけ。


迷い。


だが

飲み込む。


「……大久保だ」


嘘。


誇りを隠す言葉。


だが目だけは死んでいない。


その報せは。すぐに届く。


土方歳三へ。


顔が歪む。


「……近藤さんが捕縛された。」


拳が震える。


「……待ってろ」


馬を走らせる

江戸へ。


一人の男のもとへ。


勝海舟。


静かな部屋。


時代の匂い。


土方が頭を下げる。


「頼む……」


声が、低い。


「近藤勇を……彼を助けてくれ」


勝は目を細める。


見る。


この男を誠を。


そして。

筆を取る。

一筆。


命を繋ぐ紙。嘆願書。


「……持っていけ」


土方は受け取る。


震える手で希望を。


風の土煙の中での荒い呼吸。


土方歳三は、ひとり走っていた。


ただ一枚の紙を握りしめて。

汗で濡れ。


皺だらけになったそれは。


命そのものだった。


「……間に合え」


低く。


絞り出す。


足がもつれる。


それでも。


止まらない。


―同刻―


薄暗い牢。

湿った空気。

鉄の匂い。


近藤勇は。

静かに座っていた。


動かない。

ただ。

すべてを受け入れた顔。


―さらに同刻―


静かな部屋。

障子越しの淡い光。


沖田総司は病で布団で横たわる。


呼吸が浅い。


胸が上下するたび。

命が削れていく。


「……はぁ……はぁ」


細い息。

遠くを見る。

誰もいない天井。


だが

そこに、近藤の幻影がいる。


―さらに同刻―


走る。

土方が転ぶ。


地面に手をつく。

血。


だが

すぐに立ち上がる。


「くそッ……!!」


走る。

また走る。


間に合わせるために。


たった一人の男を救うために。


―さらに同刻―


牢の前。


新政府軍の一人が止まる。


目を見開く。


近藤に近づく。


そして叫ぶ。


「そいつは大久保じゃねぇ!!」


空気が裂ける。


「新選組局長、近藤勇だ!!」


沈黙。


終わりが。

確定する。


近藤はわずかに笑う。


「……そうか」


それだけ。


もう隠さない。


縄に縛られ近藤は牢より出される。

処刑場へと足を進める。


―さらに同刻―


病床で沖田の指が。


わずかに動く。


何かを掴もうとする。

空を。

記憶を。


「……近藤さん……」


かすれた声。


目に涙。

あの背中。

あの声。

あの笑い。


全部。

幻が消えない。


「……俺……」


言葉が途切れる。


息が苦しい。

それでも絞り出す。


―さらに同刻―


土方が走る。

門が見える。


土方が叫ぶ。


「通せぇぇぇッ!!!」


紙を掲げる。


「勝海舟の嘆願書だ……!!」


だが。

距離。

時間。

足りない。


―さらに同刻―


場所は処刑場

曇り空。


風。

縄。


近藤が立つ。


静かに。


堂々と。


「名は?」


問われる。

迷わない。


「……近藤勇だ」


それがすべて。


―さらに同刻―


病床、沖田の目から。


涙がこぼれる。


「……ごめんなさい」


震える声。


「近藤さん……」


呼ぶ。

子供のように。

ただ。


一人の男として。


「……守れなかった……」


呼吸が乱れる。

苦しい。

だが。


最後に笑う。


―さらに同刻―


処刑場で刃が上がる。


一瞬。


静止。


近藤の目が遠くを見る。


未来を見る。


「……次は」


小さく。


「武でなく――」


言い終わる前に刃が振り下ろされる。


近藤勇の死。


―同時刻―


沖田の呼吸が。

止まる。

静かに。

音もなく。


「……近藤さん……」


最後の吐息。

消える。


沖田総司の死


―同時刻―


近藤の斬首の死を聴いた土方の手から。

勝海舟の嘆願書の紙が落ちる。

地面に叩きつけられる。


「……ぁ……」


https://kakuyomu.jp/users/mushimatsu/news/2912051596466532376


声にならない。

届かなかった。

守れなかった。


全部。

間に合わなかった。


近藤の首は落ち。

保存された。

首はホルマリンの中。


そう歴史は語る。


だが本当に残ったのは違う。


誓い。

想い。

そして二人の男の絆。



断たれる直前

近藤は確かに思った。


次は武ではない。

政治で世を変えると。


剣の時代は終わった。

誠も、ここで散った。

だがその生き様は消えない。


風に吹かれて落ちた嘆願書は何処かへ


土方の手の中には、もう何もない。

だが胸の中には消えないものがある。


それだけが、残った。



つづく

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