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【カクヨムコンテスト11 中間選考突破】 累計336万7千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
新選組列伝ー誠の残響ー

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第14話 武士の世界の終わりの始まり

慶応三年。


江戸城。


土佐藩主の山内豊信の提案や勝海舟の説得により、江戸幕府の将軍、徳川慶喜は決断する。

朝廷と戦うのではなく江戸幕府の政治権限をやめる。


「大政奉還」


政治を朝廷へ返す。

これにより内戦の危機を一時回避した。


それは敗北ではない。逃亡でもない。

だが、武士の世界にとっては終わりのはじまりだった。


その裏で一人の男が未来を描いていた。


新しい国。


坂本龍馬


「新政府綱領八義」


身分ではなく。


能力。

議会。

近代国家。


刀ではなく、言葉と制度の時代。


だが現実は甘くない。


朝廷は動く。


岩倉具視

大久保利通


討幕の密勅。


「徳川慶喜を討て」


そして。


王政復古の大号令。

徳川の領地と役職の没収。

徳川幕府の廃止。


その瞬間、新選組は反転した。

朝廷に歯向かう逆賊として。


尚、江戸城無血開城後も、勝海舟は徳川家の存続と慶喜の助命に

奔走したが、新政府を薩長両藩の「大私」(極悪)と強く批判したため

勝海舟の立場は危うくなった。



京。

壬生屯所。


沈黙。


誰もが理解していた。


「……俺たちは」


一人が呟く。


「賊か?」


昨日まで京の治安を守る守護者。


今日から“反政府軍”。


近藤勇が静かに立つ。


「関係ねぇ」


一言。


「俺たちは変わらねぇ」


土方歳三。

目を閉じる。


(……読めていた)


時代はもう

剣では止められない。


だが止まらない。


沖田総司は口から淡をだした。


「……ゴホッ……」


血が混じる。



一方、江戸では。


放火。

強盗。

辻斬り。

混乱。


これは偶然ではない。


仕掛けたのは


西郷隆盛


「幕府に先に手を出させる」


挑発と罠。

戦争の火種。

浪士たちが暴れる。


街が壊れる。

民が怯える。


「戦が始まる」


誰もが悟る。



大坂城。

旧幕府軍。


怒り。

殺気。

爆発寸前。


だが徳川慶喜は言う。


「動くな」


抑え続ける。限界まで。

しかし歴史は止まらない。


新選組その立場は

完全に決まった。


「時代に逆らう者」


だが誰一人。

刀を置かない。


”誠”それは

時代ではない“信念”だ。



■慶応三年 十二月十八日

京・伏見


冷たい風が通りを抜ける。


馬の蹄の音が、乾いた道に響く。


コツ、コツ、コツ――


先頭を行くのは、新選組局長

近藤勇。


馬上。


背筋を伸ばし、まっすぐ前を見据えている。


その姿は


まだ“敗北”を知らぬ武士のものだった。


後ろには数名の隊士。


護衛。


だが

この日。


それは“足りなかった”。


十字路。


墨染。


道が、交差する場所。


運命が、分かれる場所。


近藤の馬が


ふっと、足を緩める。


その瞬間。


風が、止まった。


パンッ!!


乾いた破裂音。


銃声。


一瞬遅れて


「局長!!」


叫び。


だが、遅い。


近藤の体が、ぐらりと揺れる。


右肩。


撃ち抜かれていた。


血が、飛び散る。


着物を染める。


「……っ!!」


歯を食いしばる近藤。


だが、落ちない。


落ちない。


“局長”は――


馬から落ちない。


「走れぇぇぇ!!」


従者が叫び、


馬の尻を叩く。


バシンッ!!


馬が跳ねる。


一気に加速。


蹄が地面を叩き割るように鳴り響く。


ドドドドド――!!


だが。


敵は一人ではない。


闇の中。


気配。


次の瞬間


パンッ!! パンッ!!


連続する銃声。


「ぐあっ!!」


後方の隊士が倒れる。


血しぶき。


さらに――


影が飛び出す。


刀。


一閃。


「っ……!」


斬撃。


肉を裂く音。


護衛の一人が崩れ落ちる。


「局長を守れ!!」


叫び。


だが。


声は、途中で断ち切られる。


斬。


血。


倒れる。


次々と。


近藤は振り返らない。


振り返れない。


(ここで止まれば終わる)


歯を食いしばる。


右肩から血が流れ続ける。


感覚が薄れていく。


だが。


手綱は離さない。


「……まだだ」


低く、呟く。


「まだ……終わらん」


馬は駆ける。


一直線に。


その先にあるのは


伏見奉行所。


唯一の“生”への道。


後ろでは。


仲間が倒れていく。


一人。


また一人。


銃に撃たれ。


刀で斬られ。


地に沈む。


だが。


誰も。


逃げない。


最後まで。


局長を守るために。


やがて


門が見える。


伏見奉行所。


「開けろ!!局長だ!!」


怒号。


門番が振り向く。


その瞬間


近藤の馬が飛び込む。


ドンッ!!


門をくぐる。


同時に。


近藤の体が、ぐらりと傾く。


だが落ちない。


最後まで“局長”として。


門が閉まる。


バタンッ!!


外の音が、遮断される。


静寂。


血の匂いだけが残る。


近藤勇は右肩を撃ち抜かれたが、生きている。


だが、その代わりに多くの命が、消えた。


屋敷の外。

闇の中。


倒れた隊士たち。


動かない。


冷たい地面に。


血が広がる。


時代は、もう変わった。


刀の時代は終わり、銃が支配する時代へ。


そして新選組もまた終焉へと、引きずり込まれていく。


この銃弾の一発はただの狙撃ではない。


それは新選組の時代が終わる。

その合図だった。



つづく



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