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【カクヨムコンテスト11 中間選考突破】 累計336万8千PV 僕の戦国時代  作者: 虫松
新選組列伝ー誠の残響ー

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第12話 伊東甲子太郎の野心と新選組の分裂

九州、薩摩の遠い


海の向こうから黒い煙。


轟音。


イギリスの軍艦。


鉄の塊の砲撃。


一撃で城の石壁が砕け散る。


薩摩藩の砲台が吹き飛ぶ。


複数の兵が一瞬で吹き飛ぶ、倒れる。


剣では、もちろん届かない。


「……こんなものに、勝てるのか」



場所は変わる。

長州藩、関門海峡。


戦場は、一面焼け野原の炎。


イギリス、フランス、オランダ、アメリカの連合艦隊。


圧倒的火力。


長州藩の畑や田んぼ、家や寺社が焼かれる。


「攘夷……など」

(外国勢力を武によって追い出す)


幻想だった。


長州藩と薩摩藩の外国との戦いは

圧倒的な敗北で終わった。



その日、日本は知った。


“刀の時代は終わった”と。


薩摩藩と長州藩。


かつての敵同士。


だが彼らは理解する。


「戦う相手を間違えた」


外国ではない。


「この国の仕組みそのものだ」


そして


【薩長同盟】によって手を結ぶ。


かつての敵同士が


血を流し合った者たちが。


それでも


「倒幕」

(打倒、徳川幕府)


その一言のために。


これはただの同盟ではない。

“時代そのものが裏返った瞬間”だった。


さらに孝明天皇、崩御。

薩摩藩と会津藩の公武合体という柱が消える。


もう幕府を支える理屈はない。




京の風が変わる。

新選組の隊士が誰も口にしない。


だが。


誰もが感じていた。


(終わる)


(幕府が徳川の時代が)


壬生屯所は沈黙。


新選組の彼らだけが。

まだ時代遅れの刀を握っている。


だが。


その刀は、もう今の時代の中心にはない。


伊東甲子太郎


「……お話があります」


静かな声。


全員が顔を上げる。


「私は」


「新選組を離れます」


ざわめき。


土方歳三。


「なぜだ」


伊東は、まっすぐに答える。


「朝廷より命を受けました」


空気が凍る。


新選組は幕府と朝廷に両方に仕える隊士。


朝廷からの命

それは、逆らえぬ命令。


「御陵を守る役目」


「護陵衛士として動けと」


静かに。


「……朝廷の護衛として」


「抜けざるを得ません」


誰も、軽くは受け取れない。


土方の目が細くなる。


「幕府を捨てる気か」


伊東は首を振る。


「違う」


一歩。


「時代に従うのです」


沈黙。


「薩摩も長州も」


「外国に敗れ」


「現実を知った」


「……だが我々は」


「まだ武士道の過去にいる」


言葉が刺さる。


誰も否定できない。


「山南敬助も……それに気づいた」


空気が沈む。


近藤勇。


ゆっくりと口を開く。


「……伊東」


「それは、お前の意思か」


一瞬。


わずかな揺れ。


だが。


「……はい」


「命ではありますが」


「私自身の判断でもあります」


静寂。


風の音だけが通る。


近藤、目を閉じる。


(止めれば斬ることになる)

(だが、朝命には逆らえぬ)


そして。


目を開く。


まっすぐに伊東を見る。


「……伊東先生」


その一言に。


場の空気が変わる。


「今まで有難うございました」


誰もが息を呑む。


別れの言葉。


伊東の表情が、わずかに揺れる。


だが、すぐに整える。


そして


静かに続ける。


「つきましては」


一歩。


「私と志を同じくする者たち十五名」


「引き連れて脱退しても、よろしいでしょうか」


ざわめきが広がる。


十五名。


その中には藤堂平八や斎藤一も含んでいた。


それは小さくない。

新選組の大人数の核が削られる。


土方が舌打ちする。


「……お前だけじゃねぇえのか」


吐き捨てる。


「朝廷の命ですので」


だがその目は鋭いまま。



近藤はしばらく黙る。


長い。

重い沈黙。

やがて。


「……構わん」


低く。


だがはっきりと。

それが最後の許し。


近藤、目を閉じる。

ゆっくりと開く。


「……行け」


伊東は、深く一礼。


「……お世話になりました」


それだけ

誰も引き止めない。


伊東と十五名との静かな別れ

だが二度とは戻れない。



新選組 三番隊 隊長


斎藤一が動く。


土方と視線が交わる。


(任せろ)


土方、鼻で笑う。


「勝手にしろ」


新選組はその日、分断した。





夜、酒場にて


近藤が問う


「……どう思う」


土方、酒を飲む。


「遅ぇんだよ」


「全部な」


風が吹く。


その風はもう

新選組のものではなかった。



つづく

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