第5話 大友宗麟の外交学部
戦国大学は着実に大きくなっていた。
政治。
軍略。
経済。
国を動かす三つの柱は揃った。
だが私は気づいていた。
日本だけを見ていては
この国は守れない。
世界はもう海でつながっている。
南蛮船。
銀。
火器。
宗教。
すべてが日本に流れ込んでいた。
僕は講堂で宣言した。
「次の学部を作る。」
学生たちが静まる。
僕は黒板に書いた。
外交学部
僕は言った。
「これからの時代――」
「国を守るのは刀だけではない。」
「外交だ。」
学生たちがざわめく。
僕は続ける。
「世界を知らぬ者は」
「必ず世界に飲み込まれる。」
そして
講堂の扉が開いた。
ゆっくりと入ってくる一人の男。
南蛮服。
胸には十字架。
九州の大名。
南蛮外交の達人。
大友宗麟
宗麟は学生を見渡し言った。
「世界を知らぬ者は」
「国を守れぬ。」
宗麟の授業は
これまでの学問とは違った。
黒板には日本では珍しい世界地図。
宗麟は指を置く。
「ここが日本。」
「そして――」
ポルトガル。
スペイン。
明。
東南アジア。
「世界は広い。」
学生たちは息をのむ。
宗麟は続ける。
「南蛮人はただの商人ではない。」
「国家じゃ。」
「商船の後ろには」
「軍がある。」
講堂が静まり返る。
宗麟は言う。
「だから外交が必要なのじゃ。」
そして授業が始まる。
外国語。
南蛮貿易。
国際政治。
学生たちは
初めて世界の仕組みを知った。
その時だった。
講堂の扉が突然開いた。
「面白い話をしているな。」
派手な甲冑。
三日月の兜。
鋭い目。
奥州の覇者。
伊達政宗(講師を頼んでいない)
僕は驚いた。
「呼んでないんですが?」
政宗は笑った。
「勝手に来た。」
学生たちがざわめく。
政宗は宗麟の隣に立つ。
「外交なら俺も専門だ。」
宗麟が苦笑する。
「確かにのう。」
政宗は学生を見渡す。
「お前たち。」
「世界を知りたいか?」
学生たちがうなずく。
政宗は言った。
「なら海を見ろ。」
「世界は海の向こうにある。」
宗麟が続ける。
「外交とは」
「戦を起こさぬ戦じゃ。」
学生たちは、必死にメモを取る。
ここで教えられているのは
戦国ではなく
世界の政治だった。
授業が終わる。
学生たちは
外国語を学び始める。
ポルトガル語。
スペイン語。
中国語。
世界地図を囲み議論が続く。
戦国大学は変わった。
もう国内の学校ではない。
国際大学だ。
私は校庭から講堂を見上げる。
政宗が笑う。
「面白い大学だ。」
宗麟が静かに言う。
「ここから」
「世界と戦える人材が生まれる。」
僕は小さく呟いた。
「日本を守るのは」
「知だ。」
夕日が寺の屋根を照らす。
戦国大学。
ここから
未来の外交官が生まれようとしていた。




