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第9話 クリティカルヒット

オリビエは、祈っていた。

イースト大森林公園にある、軍事研究基地には、小さな礼拝堂がもうけられていた。

「神よ。フィナンシェさんが無事でありますように」

心を込めて祈った。

フィナンシェが、大きなベヒーモスに連れ去られた。

その一報を聞いた時、オリビエは身体から崩れ落ちた。

フィナンシェ。

優しい瞳の男の人。

小型ベヒーモスに噛まれて、獣人となり、獣軍人となった人。

あの人は、不幸になってはいけない。

不幸になってほしくない。

ただ、神に、祈りをささげる。

その時。


「ベヒーモス。基地に接近中。注意してください」


基地内部に、緊急アナウンスが響いた。


第9話 クリティカルヒット


イースト大森林公園。

軍事研究基地は、サイレンの音に満ちていた。


「…うぬぬ」

仮面軍人セシールは、レーザースコープを中型ベヒーモスに向ける。

撃つ。

はずれる。

その繰り返しをしていた。

『軍、全部、倒してやるキャア…』

中型ベヒーモス・クイーンは、縦横無尽に敷地内を駆けまわる。

素早さがある。


「…セシールさんっ!」

軍の小隊たちとフィナンシェが、到着した。

「少年!やはり、無事だったか…!」

セシールが、レーザー銃を構えながら、これを喜ぶ。

「セシールさんも無事で?」

「ワタシは、現在、苦戦している…」

「…少し、時間をもらっていいかな」

フィナンシェは、両手をあげて、クイーンの前に出る。


「しょ、少年!…やめろ。危険だ!」

「…この女性と会話をしたんだ」

フィナンシェは、クイーンに静かに話しかける。

「…クイーン。話がわかるんだろ。攻撃をやめてくれ」


『オオカミ様キャア…?』


クイーンは、反応した。

「キミは、女性だろ。僕は、女性に攻撃したくない。できれば、攻撃をやめよう。お互いにだ…」


『オオカミ様…』


中型ベヒーモスのクイーンが、その様子を静かに見つめる。

オオカミ様。

大好きな、オオカミ様。

攻撃をやめろと言う。

優しい男。


『じゃあ、攻撃は、“ビッグ”にやらせるキャア〜』


中型ベヒーモスが、黒いオーラを消す。

紫色の長い髪の女性に戻る。


「!」


その場にいた軍人全員が、目を見開く。

ベヒーモスが、人間に変わった。

しかも、女性。

美しい紫色の長い髪の女性。

美しい…。

多くの軍人が、心奪われる。


『クイーン様。オレが戦うカア…?』

どしっ…。どしっ…。


大型ベヒーモスが、現れる。

ビッグだ。

基地敷地内の軍人たちに衝撃がはしる。

「ビッグ。我々、魔物のため、軍を倒すキャア」

クイーンは、美しい紫色の髪をかきあげる。

『わかったカア…』

どしっ…。どしっ…。

ビッグは、ゆっくり基地内部を目指す。


「今度は、大型か。…少年!」

「戦う以外の手段は、ないのか…!」

フィナンシェは、いら立ちをおぼえた。

戦い。

戦い。

戦い…か。

言葉が通じるんだろ。

他の、平和的手段はないのか?

むしゃくしゃしてきた。

わからず屋に…。


『お前、弱かったヤツカア。今度は、避けないから。攻撃してみろカア…』

ビッグが、フィナンシェを挑発する。

「知らないぞ」

右手の拳に力が入る。

「知らないからなあ…!」


ドガーーーーーンッ…


フィナンシェの右拳の一撃が、ビッグに直撃する。

クリティカルヒットだ。

ビッグは、吹き飛び、基地敷地内の倉庫の壁に激突する。

小型のように溶けない。

ぐったりとして、ビッグは沈黙した。


「獣軍人が勝ったぞ…!」

軍人一人が、声をあげる。

「軍の勝利だ…」

二人目が言う。

そして。


ワアアアッ…


軍人たちの歓声があがる。


人類は、未知なる敵。

未知なるモンスター。

ベヒーモスに勝ったのだ。

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