第6話 マドレーヌ
「あー。生き返るー」
湯上がりのフィナンシェは、輸送されたばかりの野菜リンゴジュースを飲んでいた。
ごくごく。
美味しいなあ。
落ち着く。
いつもの湯上がり…。
では、ない。
頭に耳。尻尾もある。
軍事研究基地。
軍人浴場。
初任務を完了したフィナンシェは、疲れた身体を洗い流したばかり。
「戦ったな…」
右手に感覚が残っている。
僕は、一撃で、ベヒーモスを倒せる。
何でだろうか。
何かが、僕を突き動かす。
「フィナンシェさん…。湯上がりにお飲み物は…」
修道服のオリビエが、来た。手には、野菜ジュース。
「ああ、オリビエ。飲み物はあるよ」
「…」
オリビエが黙り込む。
「どうしたの?オリビエ」
「…お身体が…!」
赤面して、オリビエが走って消えていく。
バスタオルを腰にするだけで、フィナンシェは、服を着ていなかった。
第6話 マドレーヌ
「フィナンシェって、本当に奥手ね。ワタシの気持ちに気づかないの?」
「え」
「あなたが好きよ。恋人同士になりましょう」
「え、え…」
フィナンシェは、照れて下を向く。
幼なじみのマドレーヌは、フィナンシェの働いてるお菓子屋の娘だ。
学校を卒業後、スクーターの免許をとった。
そして、チーズ菓子店の配達員になった。
お菓子屋で働くのは、子供の頃からの夢だった。
チーズケーキが大好きで、お菓子屋で働けば、それを毎日食べれると考えていたからだ。
自分でも、子供の発想だな…と思っている。
学生の頃に、よく通ったチーズ菓子店の店長に気に入られ、この店の配達をまかされるようになった。
店長の娘・マドレーヌとも、より仲良くなった。
それで、告白された。
店で働いて、三ヶ月後くらいである。
「こんな僕の、どこが良かったんだろう…」
服を着ながら、ボーッと考える。
お風呂で、ひと息ついて落ち着いたのか。
マドレーヌのことを思い出していた。
彼女は、強気で、優しい女の娘だった。
告白されて、恋人同士になったが、デートには、あまり行っていない。
配達員の仕事が忙しかったからだし。
自分から誘う勇気などないし。
マドレーヌは、厨房でお菓子作りの勉強に追われていたからだ。
「いつ、戻れるだろう。あの生活に…」
与えられた自室に行くと、セシールがいた。
自室は、セシールと相部屋だ。
「風呂上がりか。オリビエが赤面して走っていたが、何をしたんだ?」
先に、お風呂をすませていたセシール。
仮面姿のままだが、身体がほてっている。
「え…」
「裸で抱きついたりしたのか?」
「ええ…!そんなことしないよ…!」
慌てて、後ずさる。
誤解だ。
「まあ、いい。軍人にも、休息は必要だ。それより…」
セシールは、ファイルを取り出す。
それを開いて、フィナンシェに見せてくる。
『オオカミ』
動物園にいるオオカミの資料だ。
東の都。
イーストエリアでは、動物は、全て動物園にいる。
「オオカミ…?動物園の動物かい?」
「そうだ。軍の研究チームによると、キミは、この動物の力を持つ“オオカミ人間”であることがわかったらしい」
「…オオカミ人間?」
オオカミ人間は、古い映画などに出てくる架空の存在である。
月の見える満月に人間から変身するオオカミ人間。
それは、作中に人に恐れられる…。
「それが、僕…?」
「そうらしい。あと、最悪な情報がある」
「さ、最悪な情報…?」
フィナンシェは、目を丸くする。
「体長2メートルの大きなベヒーモスが発見された」




