表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結城組  作者: マー・TY
22/24

22話 御守りが手榴弾

 俺の名前は苗木宗佑。結城組の舎弟だ。

 この日、結城組の全ての構成員が事務所に集められた。

 皆の前に出てきたのは、長こと結城組長。

 長は殺し屋クーガーからの奇襲を受け、今まで入院していた。

 そして今日、ついに復帰してきたんだ。

 その隣には、塚原のカシラも付いている。

「…こうして顔を合わせるのは久しぶりだな。皆、よく集まってくれた」

「とんでもねェっス!」

「長が居なきゃ始まりませんよ!」

「どこまでもついて行きますよ!長!」

 構成員から次々と賛美の声が上がる。

 本人の人柄もあってか、長は下からの信頼が厚い。

 かく言う俺も、この人の背中で見せる組長像に、憧れを抱きつつある。

 塚原のカシラが構成員達を宥めると、長は本題に入った。

「…今日集まってもらったのは他でもない。“刃裟羅”についてだ」

 さっきまでのにこやかな表情から一変。

 真剣な眼差しを俺達一人一人に向ける。

「先日、蓼丸、仙堂、夏目の3人が、“刃裟羅”のトップ 神木蓮と接触した」

 “刃裟羅”…。

 俺達結城組と敵対関係にある組織。

 暴力、人攫いから、殺人まで平気で行う救いのない連中だ。

 俺の親友 山井義成も、“刃裟羅”No.3 牧浦遊真によって殺されたんだ。

 接触した時のことを思い出しているのか、蓼丸の兄貴と仙堂の兄貴の目には怒りが宿っていた。

「解ったのは、奴らが赤木町の利権を狙ってること。弱者を傷つけることに何とも思ってねェこと。そして何より、結城組をナメているということだ」

 長が鋭い眼光を放つ。

 普段は温厚な人だが、やはり複数の武闘派をまとめ上げるだけあって威圧感も半端ない。

「加えてクーガーという殺し屋を雇っていることも判明した。奴には俺と海星が襲撃されている。これまで膠着状態が続いていたが、流石にもう生かしちゃおけねェだろう」

 長は再び全員の目を見た。

「結城組は本格的に“刃裟羅”殲滅へと乗り出す!トップの神木、並びに幹部連中とクーガー。奴らを全員この世から消せ!」

「「「「「はい!!!!」」」」」

 俺達は気合いを入れた返事をする。

 こうして“刃裟羅”のトップ層への殺害命令が下された。

 後に結羅けつら戦争せんそうと呼ばれるこの戦いは、ここから本格化していく。




「宗〜佑♪」

「黒宮の姉貴……」

 解散後、黒宮の姉貴が話しかけてきた。

 この人とは“琵出御”粛清後、交流ができた。

 最近飲みに誘われて、石田の兄貴との思い出話を聞かされている。

「この後どうするの?」

「そうですね…。今日のシノギまでまだ時間ありますし、見回りに行こうかと」

 “刃裟羅”に集中したいところではあるが、シノギも無視できないんだよな…。

「だったらさ、車出してくれない?海星にさっきのお話聞かせてあげなきゃ」

「そうですね。すぐに出します」

 入院中の石田の兄貴は、唯一あの場に居なかった。

 もしかしたら、既に長やカシラから話を聞いているかもしれない。

 だけど、ここから本格的に“刃裟羅”を叩くんだ。

 俺もせめて顔を合わせとかないと。

「よぉ。海星のとこ行くんだな?」

 車に向かおうとしていると、後ろから低い女性の声が聞こえた。

 俺は振り返る。

 そこに立っていたのは、背の高い女性だった。

 長い金色の髪を一纏めに結んでいて、山吹色の法被みたいな上着を着ている。

 両手の甲には、花火みたいな入れ墨。

 そして左側の首元から鎖骨の辺りまで、火傷の痕が目立つ。

 この人の名前は確か…椿野つばきの燈子とうこ

椿姉つばきねえも来る〜?」

「あぁ。丁度今から見舞いに行くとこだったんだよ。これも渡しておきたくてな」

 椿野の姉貴はそう言って、白くて小さい布袋を見せてきた。

 もしかして、見舞いの品だろうか。

「椿野の姉貴、それ何ですか?」

「あぁ、これな。手榴弾」

「はぁああ!!?」

 平然ととんでもないことを言う姉貴に、俺は驚く。

 近くに居た組員達が皆、怪訝そうに俺を見てきた。

 俺は彼らに謝りつつ、話を戻す。

「お見舞いに手榴弾って、なに考えてるんですか!?」

「ピン抜かなきゃ大丈夫だって〜。それに、入院中に襲われるかもしれないだろう?だったら護身用に持っててもいいだろ。御守り代わりだよ。御守り代わり」

 椿野の姉貴はヘラヘラしながらそう言った。

 そういえばこの人って、火薬庫を管理してたっけ…。

 その手榴弾も、そこから持ってきたのか。

 ていうか、こんなイカれた人に火薬庫を任せて大丈夫なのかよ…。

「それより…。お前が苗木だな?今海星が面倒見てるっていう」

「えっ…?あぁ…はい……」

 椿野の姉貴が唐突に話題を変えてきた。

「海星のこと、どう思ってる?」

「どうって、そうですね…。メチャクチャ厳しくて、ヘマする度にシメられてます。ですけど、筋は通すんですよね。ちゃんとアドバイスもしてくれますし。最初怖いと思ってたんですけど、意外と優しい人です」

「宗佑、解ってる〜♪」

 俺の石田の兄貴への見解が良かったのか、黒宮の姉貴が上機嫌になる。

 椿野の姉貴も、微笑を浮かべて頷いていた。

「だろう?海星は俺達が育て上げたんだからな。とはいえあいつ、組のために無茶するところがあるからな。お前もよく見といてやってくれ」

「はい。解りました!」

「つー訳で、闇医者へ出発だ」

「おー♪」

「車出してきます!」

 俺は事務所の外へ走っていく。

 椿野の姉貴…。

 多少おかしいところはあるけど、もしかしたら、結構良い人なのかもしれない。




 石田の兄貴が居る病院へ向けて、俺は車を走らせる。

 助手席には椿野の姉貴。

 後部座席には、黒宮の姉貴が乗っている。

 走行中暇なのか、椿野の姉貴が話しかけてきた。

「なぁ苗木。お前、なんで結城組に入ったんだ?」

「えぇと……褒められるような理由じゃないですよ?」

「皆が皆、大層なモンを抱えて入ってくる訳じゃねェよ。とにかく暴れたい。名を売りたい。カッコよさそう。そういうのばっかだ」

「そういうもんスか……」

「私も気になる。宗佑が入ってきた理由」

 黒宮の姉貴にまで興味を持たれてしまった。

 話しづらくはあるが、ここは言っとくしかないか。

「俺、孤児院出身なんですけど、そこで一緒に育った奴が居たんですよ。ですがそいつが、“刃裟羅”の牧浦に殺されまして…。それで、復讐のために入ったんです」

「…」

「……」

 俺が話すと、2人は黙ってしまった。

 石田の兄貴は激怒したけど、姉貴達はどう思ってるんだろう…。

 何にしても、沈黙は気まずい。

「……その…ごめんね、宗佑」

 葬式ムードの中、黒宮の姉貴がガチトーンで謝ってきた。

「デリケートなこと聞いちゃった……」

「いやいや!気にしないでください!俺ももう目が覚めたんで!今は赤木町のために戦う所存でございます!!」

 俺は動揺で若干言葉が変になる。

「言い出しっぺは俺だ。すまない苗木」

 椿野の姉貴にまで謝られた。

「姉貴、俺は気にしてないんで…!」

「孤児院で幼馴染…もはや家族同然だろう。胸が裂けそうになるよな……」

 椿野の姉貴は、しみじみとそう言った。

 この切ない雰囲気。

 もしかして、姉貴も誰かを亡くしてるのか…。

「あの…椿野の姉貴……」

 俺が姉貴のことを訊こうとしたその時…。

「ッ…!!苗木止めろ!!」

 椿野の姉貴が、突然叫んだ。

 なんと、前方に少女が飛び出してきたんだ。

「うぉおおおおおおおおおお_____!!!」

 頼む。間に合え。

 俺は絶叫しながら、急ブレーキを掛けた。

 車はなんとか少女の目の前で止まった。

「ッ……!!」

 少女は血の気が引いた顔で、車道の上に倒れた。

「やべっ!」

「大丈夫!?」

 俺と黒宮の姉貴が慌てて車から降り、少女の元へと向かう。

 椿野の姉貴も、降りようとした。

「……?」

 その時、姉貴は見ていたんだ。

 現場から走り去る、別の少女達の姿を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ