#005.1年A組
「―皆、入学式ご苦労だった。改めてになるが、今日からこのクラスの担任となる橘 六花だ。よろしく頼む」
入学式を無事に終え、教室に戻ってくると、黒いスーツに身を包んだ女性が、教壇の前で開口一番に目元をキリッとさせてそう話した。
第一印象としては、真面目で厳しそうな美人さんと言ったところだろうか。
肩甲骨の辺りまで伸びたストレートの黒髪、茶色い瞳がキリッと見える奥二重の目、身長は女性にしては少し高いかもしれない。
「校長の話が特に長くて退屈だったかもしれんが、あれはそのうち慣れるから安心してくれ。正直、我々教師陣もあまり真面目には――と、そんな話はどうでもいいな。さて、改めて、今日からこのクラスで3年間、我々は共に過ごしていくことになる。それに当たって、まずは全員の自己紹介をしてもらおう」
ということで、以下、自己紹介タイムの始まりだ。
……と言いたいところだけど、人数が人数なので一部抜粋して出席番号順に紹介しよう、私の感想つきで。
紹介しなかった人たちも後々ちゃんと紹介するから、多分、きっと。
「……鹿央 一だ。仲良くしてくれ」
額をのぞかせるセンター分けの鮮やかな紫髪、金色の瞳が宿る切れ長の目元のイケメン高身長。
人を引きつけなさそうな雰囲気を醸し出してるのに言ってることがシンプルにかわいい。
「神崎 美穂です。奥水市から来ました。よろしくお願いします」
私。
「佐藤 楓です! 後ろの後ろの席のやつの双子の『姉』です! よろしくね!」
ショートカットのサラサラの淡い緑髪、茶色の瞳に少し吊り目の目元、女子にしては男子と遜色ない身長、ハキハキとした口調。
気が強そうな子だ。
「佐藤 風鈴です……。えと、前後で双子に挟まれたみたいだけど、私は全然関係ないです。あと、みんな仲良くしてくれると嬉しいかな。よろしくお願いします」
今の子とは真逆で全体的にフワッとした雰囲気、肩甲骨の下辺りまで伸びてる水色の髪もフワッとウェーブがかってて緑色の瞳も目元も真ん丸、顔も真ん丸、なんかフワッとしててかわいい。
ぜひ友達になって抱き着きたい。
双子に挟まれて少し気まずそう。
「佐藤 颯です。前の前の席のやつの双子の『兄』です。まあ、『妹』ともどもよろしくお願いしゃす」
双子の男の子のほう。
見た目は楓さんをそのまま男にしたような感じ。
ただ、身長はこちらのほうが高い。
なんかどっちがきょうだいの上かわかんないけど、私からすればどちらも同級生なのでぶっちゃけどうでもいい。
「須藤 茉央です! アビリティは氷のフォース使います! 一緒に冒険行ってくれる仲間募集中です! よろしくお願いします!」
気が強そう女の子その2。
橙色の髪は肩につかない程度の長さ、橙色の瞳をのぞかせる童顔はちょっとイケメン系にも見える。
「俺は武井 諒。家が鍛治屋やってるんで、何かあれば一声掛けてくれ! 友達割りで安くするぞ! よろしく!」
灰色の短髪に少し青みがかってる灰色調の瞳、全体的に小麦色の肌、気さくそうな雰囲気、良い子そう。
「ヤー! エルーラ・ディファール、デス! ワタシの耳見ればわかる思いますが、ワタシクォーターエルフ、デス!ヨーロッパからリューガク、コッチに来まシタ! 言葉タラズかもしれないけど仲良くシテネ!」
エ……エルフだ!
クォーターってことは、1/4エルフだ!
生で初めて見た!
ビジュ強っ!!!
一本一本が凄く細そうで腰まで伸びた綺麗な金髪、碧色に輝く瞳、整った鼻筋、アイアンクローしやすそうな小顔、透き通るような白い肌、そしてエルフ言えばこれ!
クォーターだからか、ほんの少しだが尖っている耳。
絶対友達になろ。
「七木田 将路だ。使うフォースは雷。よろしく頼む」
無造作のセットか寝ぐせかわからない明るい茶髪、ちょっと何考えてるかわからない表情、なんかボーっとしてるように見える髪色よりさらに明るい茶色の瞳、身長は170後半くらい?
でもはっきりと喋ってるし、なんかわかりづらそうな人かも。
「二階堂 瞬。馴れ馴れしいのは好きじゃない」
……うん、初っ端から何言ってんだこいつ。
多分、クラスで孤立するな。
少なくとも私は話しかけたくない。
「猫塚 伊織でっーす! クラスのみんなとはちょー仲良くしたいからばんばん話しかけてねー♪ あ、あと、制服は女子の着てるけど、僕これでも男の子なのでよろしくね♪」
またかわいい女s……男の子!?
いや、“男の娘”……か?
え……いや、ええ……?
ちょっとみんなザワザワしてるじゃん。
そりゃそうだよ。
長い黒髪を高めのサイドテールでまとめてて、名は体を表すと言わんばかりの黄土色の瞳をのぞかせる猫目、なによりかわいい!
なのに男の子!?
『うわ……まじかよ!』って声聞こえたよ!?
大丈夫?
誰か性癖破壊されたりしてない!?
「俺、長谷川 学! 魔法使い! よろしく!」
『うわ……まじかよ!』って頭を抱えてたその人。
黒髪に黒の瞳で、なんというか他の人に比べて特徴がない普通の男子って感じ。
性癖歪んでなきゃいいけど。
あ、あと席が前後だからか、HR前に日向くんと親しげに話してるのが見えた。
多分悪い人ではなさそう。
「日向 南です。どうぞよろしく」
日向くん、自己紹介シンプル過ぎない?
まだ詳しいこと何も聞いてないけど、ハバネロといいあの強さといい君絶対何か色々話せることあるでしょ。
ま、あとで個人的に色々聞くとしよう。
「ふっ……我は光と闇を統べし者……福山 紗奈である! 今、この瞬間から我が覇王伝説が幕を開けりゅっ……よりょっ……しく……」
噛んじゃった。
えーと……まあそういう年ごろだもんね、わかるよ。
でも、学校とか人がいる場所ではそういうのは控えたほうがいいと思うよ私は。
白みがかってる長い金髪、黒の前髪メッシュ、黒と金のオッドアイ、あれはカラコンかな?
せっかく小柄でかわいい顔立ちなのに、中二病チックなのがもったいない気がする。
「え……えと……冬木 綾です……。その……よろしくお願いします……」
そう、こんな感じで良いと思うよお姉さん。
同じく小柄でこっちの子はちょっとオドオドして小動物みたいな雰囲気なんだけど、藍色の腰まで伸びた長髪、同じく藍色の瞳がこれまた長い前髪から見え隠れしてる顔は絶対美人さんだ。
間違いない。
あとで声かけてみよっと。
「結城 晃太です! 肉体派魔法使い目指してます! 将来の目標はレンジャーになること! よろしく!」
晃太くんはレンジャーになりたいのかー。
確かに合ってそうな気はする。
肉体派魔法使いに関してはまあ……否定できないものを目の当たりにしてるので何も言うまい。
「……うん、なんというか……中々個性的なクラスになりそうで楽しみだな。……さて、これから3年間、君たちは苦楽を共にするクラスメイトで仲間となる。仲良くしろとは無理には言わん。だが、互いが困っている時には手を差しのべあえるような存在になってくれるとこちらとしても嬉しい。そしてもちろん、私も君たちに対して最大限の手助けはするつもりでいる。だから、何かあれば遠慮せずに私を頼ってくれ。改めて、これからよろしく頼むぞ」
若干の戸惑いの表情を見せつつ、平静を保っている先生。
まあ……うん、気持ちはわかる。
冒険者になる人は個性が強いみたいな風潮が昔からあるとは噂で聞いていたけど、それでも自己紹介で個性出してくる人ってこんなにいるのだろうか……?
普通は双子とか鍛冶屋の息子とかそういうのが、「へえ凄いな」ってなるのに、それ以上に強烈なのがいる!
「――以上が連絡事項だ。それでは、今日はここまでにしておこう。各自、月曜日までに準備をしっかり進めておくように」
さっきの自己紹介での出来事が忘れられずにいると、いつの間にかHRが終わりを迎えていた。
「……と、そうだ。神崎美穂、日向南、結城晃太はこの後私と一緒に職員室に来い」
…………ん?
唐突な指名に、思わず日向くんと晃太くんの方に視線を向けると、2人も戸惑ったような表情をしていた。
でもまあ、この3人が呼び出されるということはこの間の一件のことなのだろう。
私たちは、言われるがまま先生と一緒に職員室へと足を運んだ。




