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第5話 奇跡?初めての魔法!

「あの…」

声の主に一斉に顔を向ける。誰も言葉を発せず、生唾を飲み込む

「わ、私はまだ死にたくないんですー!連れていくには若すぎますよー!」

「何であんたがここにいんの、あんたはもう―」

2人は驚き、震えた声で目の前のものを否定しだし、他の2人は言葉が出ないのか、疑いの目を向け、もう1人は

「古賀さーん!?―し、死んでる!?」

「バッカおめぇ、縁起でもないこと言うんじゃねぇ!おい、目ぇ覚ませ!」

「はっ!…あんなもん見ちゃったから幻覚見てただけか。お化けなんて現実にいるはず―って幻覚じゃなーい!」

「ああ、また古賀さんが白目を向いて気絶してしまいました」

目の前に居るのは、あの森で餌ゲフンゲフン―儚く命を散らせて行った倉瀬 克樹。置いていかれた恨みで怨念になり、我々をあの世へと連れ去りに来たのだ——っ!

「そんなわけないでしょう。はぁ、あの後色々ありまして、何とか助かったのですよ。」

俺を起こし、倉瀬さんはあの後何があったのかを簡単に説明してくれた

「あの後、魔物は僕を丸呑みし、僕はただ死を待つのみでした。車のトランクに押し込まれているような感覚で、視界は暗く何も見えない。」


(あぁ、僕はこの後どうなるんでしょう。頭から溶けていくのでしょうか。それともすり潰されてしまうのでしょうか。僕はただ、久しぶりの休みをボーッと過ごそうと思っていただけなのに―)

「クソ…」

その一言。何に反応したのかは分かりません。僕が付けているこのマスクが、突然光出し、突如として煙を吐き出したのです。その煙が顔にかかり目を細めると、魔物が暴れだしたようでした。景色が見えず、ただ自分が動いているという感覚だけが頼りで、揺れが大きくなったのを感じました。それが僕が魔物の腹の中で感じた最後の感覚。いつの間にか外へと投げ出され、目の前には嗚咽を繰り返す魔物。状況を理解できず呆然とその姿を見ていると、魔物の口から、おそらく僕のマスクが出したであろう煙がスルスルと出てきて、段々と動かなくなっていきました。あの魔物はおそらく死んだのでしょう。もちろん、急いで合流を果たそうとしたのですが、随分と移動させられ何処にいるのかが分からない。その場で困り果てていると、今度は別の生き物がやって来ました。その生き物は白くて大きく、僕を喰らった魔物をひとのみすると、僕を見つめ動かない。敵意も感じませんでしたので、あまり警戒はしなかったのですが、その生き物は僕をここへと導くかのように、少し進んでは僕の方を振り向き、僕が着いてきているかを確認していました。そして、その生き物について行った先が森の出口、この村から森へと入る入口だったのです。


「お陰で、皆さんと合流することができたので感謝しかありません。」

「そんないい子があの怖い森にいるんですか?私も見てみたかったなぁ〜」

「ご覧になられてはいかがですか。」

そう言い、自らの背後に目配せをする。出て来たのは白くて小さく、小さい舌をチロチロと出し入れする可愛いヘビだった。しかし、そのヘビは倉瀬さんの話とは違い、迫力もなく、あの魔物をひとのみしたとは到底思えないほど小さい。するとそのヘビはゲップをするかのようにケフと音を出し、白い煙を口から出した。

「近くに来たあたりで、だんだんと小さくなりだしたんです。原因は分からないのですが、元気そうなので異常は無いものだと…」

神谷さんはヘビをじっと見つめ、時折驚くように目が見開かれる。どうかしたのかと問うとが、返事はなく、分からないことは、ただ見とれているだけとしておく事にした。早希さんも随分と気に入ったのか、興奮気味に観察している

(生き物全般好きなのかな)

ただ、あまり興味のない人もいるようで、滝原さんと浅田さんは今後の計画を話し合っていた。

(突然真面目になると、逆に怖いとはまさにこの事だ)

俺も、滝原さん達に混ざり今後の計画を立てる事にしたのだが、魔法書を読んでもどのくらいで習得できるのか、薬の作り方などは載っておらず、毒魔法を使える人が見つかったとしても、薬が作れるのかが分からないことに気づき、先行きが不安だ。…本当に。


「なぁ、一つ気になったんだが、倉瀬の出した煙、毒だったりしないか?煙で魔物が死んだんだろ?なら毒の可能性が高いと思うんだが」

「ああ!倉瀬さんの毒を使って薬を作るということですね?それが出来ればわざわざ王都に戻る必要もなし、それに戦力も手に入って一石二鳥ですね!」

「いや、どうやったのか僕にもわからなくてですね…」

「とりあえずやってみてよ下さいよ」

それでも抵抗する倉瀬さんに早希さんの声がだんだんと暗くなる。あまり気づかれないような変化だが

(最初から観察している俺は見逃さないぜ!)

目がいつもより少し開かれ、瞳孔が縮み、少し圧のある声色。しかし、いくら何度も抵抗するからと言って、ここまで圧をかけている事に面食らった。そして、早希さんは俺の方をちらっと見ると、少し目を細めたかと思うとすぐにいつもどうりの早希さんに戻っていた。


「み、満たせ、ぽ、ポイズン…」

倉瀬さんがそう唱えると器の中に紫色の液体が溜まっていく。本当に出来たのが自分でも驚きなのか、倉瀬さんは目を丸くして固まる。早希さんは自分もできるようになりたい、と目を輝かせて倉瀬さんに教えを乞う。倉瀬さんは手を開き上に挙げ、困ったように眉をひそめ方法が分からないと伝えるが、早希さんはそれでも引き下がらず、倉瀬さんに詰め寄る。

「ほんとに勘弁してください…」


それから1日、猛特訓が始まり薬用に改良を重ねる。ただ、実験体がいないので草を引きちぎり、どうなるか観察するしかない。そんな事で毒なのか薬なのか判別などつく訳ないのだが、しないよりはマシだ。

(何回目かは覚えてないけど、草が溶けて行った事があったんだよな)

一日中特訓をしていてわかったことがある。倉瀬さんは毒に強いのか、俺たちが弱い毒で肌がヒリヒリしだすのに対して、あの溶けるような強い毒ですら、倉瀬さんにはピリピリする程度なようだ。皮膚が強いのか、はたまた全部位に効かないのかは分からないが、毒の魔法使いはそういう毒に強い人にしかなれないのかもしれない。


「はぁ、疲れた」

「てめぇは何もしてねぇだろ」

「見るのも疲れるの」

「はいはい、そうだな。そういや古賀、お前が持ってきた箱には何が入ってたんだ?食料か?飲み物か?」

「あーそう言えば、開けたことありませんでした」

滝原さんに言われるまで気づかなかった。あの箱には何が入っているのだろう。頑丈で、重みがあり、あんなに雑に扱っても開いた様子を見たことがない。薬作り班が準備している間に、箱の中身を見てみることにした。

「箱の中身は何じゃろなーっと。」

箱を開けた瞬間何かムワッとした空気がが顔を吹き抜けていく。2人も覗き込むが、顔を顰めあまりいい顔をしない。入って居たのは、なにかの儀式に使う為の物だろう。御幣と呼ばれる神様への捧げ物や依り代に使われる道具に似たものが入っていた。ただ、俺たちも、そんな事ではこんなに驚かない。御幣に付いている白い紙には札に書かれているようなぐにゃぐにゃとした文字がびっしりと書かれていた。

「…そんな気持ちわりぃもの抱えてくんじゃねぇよ。早くしまえ」

「これで呪われたら伊吹のせいだから」

「そんなぁ。酷いですよー!俺だって知らなかったんですから!」

見なかったものとして蓋を閉じ、固くぎゅっと押し込む。薬作り班の準備が整ったようなので、重い腰を上げ、村の中へと入っていく。

(ほんとに入んなきゃダメ?俺めっちゃ頑張ったくない?)

入口前で足を止め外から中を覗く。幸せそうな雰囲気だが、実際の状況をまじまじと見た身からするとこの景色でさえ寒気がする。しばらく俺が来ないからか、滝原さんが村から出てきて無言で腕を引っ張る。しかしすぐに足で踏ん張り何とか外にいようとした

「やだよー!行きたくないんですー!」

「往生際が悪いな、覚悟決めろ、男だろ!」

「無理なものは無理です!なら今すぐ女性になりますわー!あたし女ですの〜!」

滝原さんは一瞬手が緩み、引きつった顔をする。

(うわ、めっちゃ引いてんじゃん)

「何馬鹿なこと言ってんださっさと行くぞ!」

「イテッ」

頭を引っぱたかれ足が緩んだ隙に再び村へと引きづり込まれた。

「もう来たくなかったよbro…」

『仕方ないだろ、言われた通り覚悟決めろ』


薬作り班からいくつか薬を渡され、持ちきれないのでカバンへとポンポン放り込む。既に入口付近の何人かは薬を飲み元の意識を取り戻していた。俺だけがあんな目にあうのは許せない、道連れじゃー!滝原さんと浅田さんを連れ村の奥、教会のあった場所へと走った。しかし、一人で行ったときとは違い空気の重さも感じず、呼吸もしやすい。不思議に思い立ち止まって観察するが、俺は地下を出てから村を出るまでずっと息苦しさを感じていたことを思い出す。おかしいなと思い思慮にふけるが

「どうしたの、急に止まって」

「ここが骨があった場所なんだろ?他になんかあるのか?」

「あ、いや何でもないです。何か2度目だと何か違うなって思っただけなので、気にしないでいいです。」


違和感が拭えないまま、この辺り一帯の人々に薬を渡しにまわる。いつもなら、分からないことは適当に理由を付けて流せるのに、今回はそうはいかない。頭のモヤはまだ晴れぬまま、薬をばら撒き終わりまた皆で集まり、次に何をするのかを話し合う。

「もう日もくれてきたし、ここで泊まらない?あたし布団のあるとこで寝たい」

「良いですね、僕は風呂に入りたいです。あの後から入っていなくてずっと気になってるいて」

「では、ここで今日はここで休める場所を探し…そうですね〜明日ここに起きた厄災についてなにか情報収集とでも行きましょうか?」

「「「「「賛成!」」」」」

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