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第7話 夜の冒険!?さよなら滝原

その夜、壊れた箱を泊まっている自室へと持って帰った。あんな風に燃やしただけで、はい解決!―何て都合のいい展開があるわけが無いと思うと、まだ一波乱ありそうだ。あの教会の地下で見つけた4つの単語。

『厄災』『瘴気』『役割』『生贄』

前2つは解決したものとして見ても良いかもしれないが、後ろ2つ―これが何一つわかっていない。この村で行われている儀式が?あの御幣はそのための物?生贄というのは?まさか、あの子供が生贄という役割を担っているという事なのか。何とも煮え切らない気持ちを抱え目を瞑る。


しかし、数時間後誰かの叫び声と、ドタドタと走る音が宿全体へと響き渡り目を覚ます。何事かと部屋から出て下の階を確認しようと手すりに手を置くが、力を入れてないのにメキョッと嫌な音を立て崩れ落ちた。それに驚き足がもつれ階段下へと身体が傾く。掴めるものは先程のようなおそらく、脆くなった手すりのみ

(不幸死ってこういうことを言うのかな)

ああ、落ちていく――グンと身体が跳ね、腕に力を感じた。視界の端に少し写っているのは倉瀬さんに早希さん。2人も音に驚いた様で部屋から出てきたところ、壊れた手すりに焦る俺を目撃したようだ。

「大丈夫ですか。」

「…はい…心配をお掛けしてすみません。」

「さっきの音、何だったんでしょう?叫び声が聞こえたと思ったらドタドタと走る音がしました」

2人も同じ理由で出てきていてるので、夢ではないことは確かだが、あそこまで響く足音となると、1階の下に大きな隙間がないと、2階以外ありえない。しかし、階段を下りる音を俺たちは聞いていない。走る音と下りる音では大きく異なるはずだ。

「こ、怖いですし、誰かを起こしませんか?こういう時、神谷さんが起きてこないのが不思議なんです。」

倉瀬さんの言うとおりだ。朝に弱い2人ならこんな物音がした程度じゃ起きては来ないだろう。しかし、神谷さんは倉瀬さんの次に早起きで、朝には強い方なのだと思っていた。神谷さんの部屋へ行きドアをノックするが、扉に耳を当てても、中から起き上がってくるような音はない。

(はぁ、神谷さんこんな時に何してるだよ!)


とりあえず3人だけで下の階へと向かい音の正体を確かめに行く

『後ろ』

「おわ!なんだお前ら、夜更かしか?」

「っ!た、滝原さんでしたか…」

「…なんだ、滝原さんかー。良かったぁ」

「ちょっと滝原さん!びっくりさせないでくださいよ!心臓止まるかと思いました!」

リビングで、飲み物を貰いに来たらしい滝原さんと偶然出会い、彼が暗い色をしているから余計なのか、後ろからヌッと出てきて心臓が跳ねる。しかし、タイミングが良い。先程の音について心当たりはないかと聞いてみることにした。しかし滝原さんは俺たちの話を聞いている最中、終始不思議そうな顔をしており、本人の話でも、ここを人が通った気配はしなかったと言う。背筋が凍る感覚に恐怖が増していく。外を見てみようという提案に乗りはしたが、月は隠れ、街灯もない。手を伸ばした先ですら視認できない程の暗闇がこの村を覆い、音の方向をたどろうにも、足元がおぼつかず、どこを進んでいるのかも分からない。既に消えた音を見えない空間で追うのは至難の業で、外に人がいたとしても俺達には見えないだろう。

「静まり返ってますね。うぅ、何も見えません」

4人で身を寄せ合い、周りをキョロキョロと見回すが、何も分からない。これ以上進むと、宿の場所すら分からなくなってしまいそうだ。1度戻らないかと提案しようと3人の様子を見ると、2人は恐怖に満ちた顔をしているのに対して、もう1人はある一方向へと向き、何かを言うように口を動かし続けていた。

「伊吹さん?どうしたんですか?」

「何か、滝原さんさっきから、ずっと同じ方向見てません?滝原さんの目元はよく見えないんで、どこ見てるかは分かんないですけど」

確かに、と2人とも滝原さんの言動を観察し始め、誰も本人に聞こうとはしない。

(だってなんか怖いし)

「向こうになんかいるのか?」

いや、だとしても、滝原さんはこの暗さで前が見えているのか?もしそうならヤバすぎだろ。目がいいってレベルじゃねぇぞ――

「ふぅ、あの滝原さん。もしかして、その先何か居るんですか?」

「しっ!、おい倉瀬、お前これ被っとけ」

そう言うと腰に巻いていた黒い布を倉瀬さんの頭に被せ、先程の方向を見ながら後ずさりしていく。

(本当に何がいるんだ?目を凝らしてもわからん)

倉瀬さんも不思議そうに滝原さんへと音を立てないように着いていく。しかし早希さんはその場から動かない。俺は怖いので人が多い方に着いていくことにし、滝原さんの側による。

「やっべ…逃げろ!」

先程まで前かがみに後退していた人とは思えないほど、素早く方向転換し、俺の前から忽然と姿消した。咄嗟に俺も走り出し、滝原さんを視界に捉えることができたが、反応が遅れた倉瀬さんは、またもや何かの餌食となったのだろう。

「滝原さん!滝原さん!何が見えてるんですか!俺夜目効かないんすよー!」

「ああ?そんなん、そんなんあいつに決まってんだろーが!」

滝原さんもパニックになっているようで、何が見えているのか詳細を教えてくれない。

「あ、神谷!いい所に!その扉を開けてくれー!」

目の前にいるらしい神谷さんにそう頼むと、どこかの建物に飛び込み、扉を閉めてもらう。

(この壁、この床――わぁ最悪教会じゃーん)

「お二人とも走ってどうしたんですか〜?珍しいですねぇこんな時間に」

「で!扉も閉まりましたし、教えてくださいよ!何がいたんですか!」

すると扉がドンと叩かれガチャガチャと何かが扉を開けようとしているようだ。しばらく続いたが、諦めたのか音が消える

「はぁ、危ねぇ」

「何が!居たんですか!」

「はぁ?この状況でもわかんないのかよ、そんなん『山野』に決まってんだろ」

はい?緊張した空間は一瞬で緩み、俺は目が点になる。

(早希さんから逃げてたと?あんな迫真めいてた割に?)

理由を聞いたら納得できるのかもしれない――と思った俺が馬鹿でした。

つまり、なかなか起きないから毒飯くわされそうになって、昼間から早希さんに合わないように逃げているらしい。

「くっだらな!」

「俺が捕まったらてめぇも一緒の飯にしてやるからな」

「もう、何を争ってるんですか〜?それよりこの人はどうするんです?」

そういい、神谷さんが引っ張る人を見ると、白い服の…えーっと上官?

「神官さんな」

そうそう、あの瘴気でぐったりと座っていた神官の1人だ。顔は曇り、目が泳いでいる。時折俺達のことを睨みつけては、神谷さんの手から逃れようともがく。しかしなぜ神谷さんはこの神官を連れているのだろうか、なんだかただ事ではないような……まぁ、とりあえず――

「へっへっへっ、おうおうおう!俺たちの秘密を知られたからにゃ、無事に返すわけには行きませんなー!」

俺は出来る限り悪い顔でそう話し、指をポキポキと鳴らす動作をする。災難を乗り越えたばかりの村、夜の教会、突然入ってきた俺たち。どう見たってヒーローのすることではないだろう。なら悪役になりきってしまおう。

「なんだそのキャラ。…あー、まぁとりあえず死刑でいいんじゃねぇか?」

滝原さんは真顔でそう言うと神官と神谷さんを引き剥がし、頭をガシッと掴む。その手は少し力が加えられているようだ。ほんとに死んでしまうとでも思ったんだろう、神官が恐怖の顔へと歪んでいく。

「ひぃ!ゆ、許してください。もう儀式なんて辞めます!生贄ももうとりません!」

「ああ?何の話だ?」

「あらあら…んー何だか良くない気配がしますねぇ」

神谷さんは顔が全く見えない分何も情報がなくて怖い。でも、神谷さんがここにいた理由、なにかわかった気がする。あの御幣について調べてたんだろう。そして行き着いた先がここ、神官の集まる場。俺自身は何も調べてないから、考察の域を出ないんだけどさ

「滝原さーん、やっと見つけましたよ。」

一気に空気がピリつき、誰も後ろを向けない。まるで森で魔物にあった時の気分だ。しかしあの時とは違い、滝原さんは1歩も動くことはできない。

「ご飯、まだですよね?私用意しましたから。帰って食べてくださいね。」

声の主は俺たちを無視し、滝原さんへと真っ直ぐ歩みを進める。その手は滝原さんの肩へと触れ、がしりと服を掴み、顔がこちらを振り向く

「お2人も、次庇ったら同罪ですからね!」

ニコニコした笑顔はピクリと動き、本当に笑っているわけではないとひしひしと伝わってくる。そして扉を開けると滝原さんをいとも容易く引きずり、去り際に滝原さんの悲鳴が聞こえてきた。それは自室で聞いた叫び声と似ている気がして、少し同情する。


「神谷さんひとつ聞いていいですか?最近の学生ってマッチョなんでしょうか」

「あー、そうですねぇ…火事場の馬鹿力では無いでしょうか?まぁ、危機が迫っていたのは滝原さんの方ですが」

ふぅ、と一息つき。俺も帰ろうと立ち上がる。リンッという靴の音。どこかで聞いたことがある。でも後ろにいるのは、神官さんを捕縛しているであろう神谷さんのみ。恐る恐る後ろを振り向くと、さっき滝原さんを連れて行ったはずの早希さんが立っていた。顔は暗くて見えず、何を考えているのか分からない。

「楽しかったね。また遊んでくれる?」

早希さんの方からそう聞こえた気がした。キョトンとしていると、早希さんの姿が霧のように消え、ボールの転がる音が聞こえた。

「う、うわぁああ!お化けー!」

俺は神谷さんを置いて、おそらく宿であろう方向へと一直線に走っていった。


『その後、この村は幽霊が出る村として有名になり、多くの旅人がここを訪れるようになったとか、ならなかったとか。何年後かは…しーらね。』

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