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第2話 王都と新しい服

王都に着き、豪華な男に案内され大きな建物に到着した。中はどこもかしこも豪華で大きな扉に大きな窓、その上中央には階段が。RPGでよくあるお城と言っても差し支えないだろう

「ようこそおいで下さいました救世主様、ここは王都の中心。私の住む城でございます。」

(おい、ほんとに城なのかよ!ん?私の住む?)

「ちょ、ちょっと待て。まさかあんた、いや貴方は…」

俺は慌てて言葉使いを訂正した。まさか、まさかこいつがここの…

「はい、申し遅れました。私はディエスト・グランジス。このグランジス国を統べる国王の後継でございます。」

国王という言葉に気まづい雰囲気が漂う。特に滝原さんは国王の息子に怒鳴った身であるからか見えない目が、泳いでいると分かるくらい焦っているようだ。

(冷や汗で水溜まりができそうだな)

ただ、そんな言葉にも気後れせずいつもどうりにしていたのが浅田さんである。

「そんなのあたし達には関係ない。とりあえず早く用件言って、ああいった魔物を倒して来いって話?それともほかの厄災も何とかしろって?」

「そうですね。大きく言うと厄災を抑えて欲しいのです。支援はいたします。ですので協力を」

「あーはいはい。わかった全部やりゃ良いのね、そしたら帰してくれるんでしょ。難しい話は無しにして。」

浅田さんはディエストさんの話を遮り終わらせる。

(強気なのはいいけど、ちゃんと話は聞いた方が良かったんじゃ…まだ魔法とか能力とか、重要な事なんも聞けてないよ!?)

浅田さんは一刻も早く、この場から逃げたいようで、話を終えるとそそくさと入口へと向かってしまった。ここにいる原因も、服が勝手に動き出した原因も、全てこの王様なのだから無理もないのかもしれない。ましてや、彼女はいちばん反発していた人でもある。あくまで、王様の指示に従ったのではなく、自分でやると決めたかったのかもしれない。

王様もその姿を見てか何も言わなくなっちゃったし…

(でも、変なプライドに俺を巻き込まないでくれ)


王都をブラブラと歩いていると小さな図書館のような場所が目に入る。窓から見える沢山の本、中にいる人々は静かに本を読んでいる。中に入ってみると人はそこまで多くないものの、時々本の感想を言い合っている声が聞こえる。

(ここの世界の文字も言葉もわかるのは何故なんだろうか。まぁ言語を勉強し直すのなんて簡単じゃないから楽で良いんだけどさ。)


魔法についての本はいくつかあったが能力についての本は一つもない。一般市民に見せられない本なのか、あるいは能力は本に出来るような程解明されていないのか。


図書館を出て再びブラブラと歩き出す

「魔法は貴族と、王族のみが持つ魔力によって発動、魔力には属性がある、か」

『魔道具についても乗ってたな。でも救世主についての記述は一つも無かった』

(これが初めての召喚だったのか?それにしても能力についてが分からなかったのがなぁ)


その後めぼしいものはなく、ほのぼのとした世界に本当に厄災の火の粉が降り掛かっているのか疑問に感じただけだった。皆とはディエストさんから手配された宿屋で集合し、浅田さん以外の皆となにか分かったことが無いかと情報を交換する。しかし目新しい情報もなく、皆本当に厄災が降り掛かっているという言葉に疑問を感じるのみだった。

「ただ、魔物がいるのは事実ですよね。僕、明日は王都を出てみようと思います。外なら何かわかるかもしれませんから。」

その言葉に皆顔を合わせ眉をひそめる。王都の外に魔物がいる。この事実は皆理解している。だから、危険だから自分もついて行く、この言葉を誰も発することができない。

「では、みんなで行きましょう!自分一人では力不足、でも数が揃えばマシでしょう?」

そう神谷さんは、さも良い提案をしているかのように身振り手振りで説明する。お面の奥ではニコニコとした顔があるのかと思うと少しムカつく。

(まぁでも、俺一人じゃないんだったら…)

他もそういう考えなのか誰もその言葉を否定しない。予定が決まり明日に備えて食事を済ませ眠りにつく。


美味しいご飯の後一晩ぐっすり寝たら、昨日の血の海の恐怖なんてどこへやら。すっかりいつもの頭へと切り替わる事だろう。

『そういう奴らの集まりなんだからさ』


ドアをノックする荒々しい音で目が覚めた。入ってきたのは、昨日ディエストさんを守っていたあの兵士だった。その兵士はディエストさんが呼んでいることを伝えるとすぐに戻っていってしまった。その事をまだ寝ている人達に伝えすぐに用意させるが、浅田さんは朝に弱い様で未だにポケーっとしていて、早希さんと神谷さんによって支度を済ませる。滝原さんも朝に弱いのかイライラと頭を掻きむしっているのを見て慌てて立ち上がり止めに行く。浅田さんを咲希さんと神谷さんが、滝原さんを俺と倉瀬さんが介抱し何とか城まで辿り着くことに成功した。


「朝早くにすみません。もし王都から出られるようでしたらと思い、急いで準備させました。この魔道具は1度羽織ればそれぞれにあった装備を用意してくれるものです。ぜひ有効活用してください。」

手渡されたのは人一人包める大きな白い布。こんなものが魔道具なのだろうかと訝しんだが、疑っても仕方が無いのでバサッと自分を包む

すると布が薄く光を放ちまた何も変哲のない白い布へと戻って行った

(何が変わって…)

布を取って視線を落とすと、着ていた服が全くの別物になっていた。レイヤードスタイルで上は元々着ていた半袖バージョンって感じだろうか。腰にカバンのような入れ物をつけている。

(おー凄い!いつの間に別モンに変わってんじゃん!まさか、布のなかで1回すっぽんぽんになったとか言わないよな。布あってもさすがに恥ずいよ?――そ・れ・と…俺の服どこ行ったぁぁぁ!?)

気に入っていた服が消えた事に焦りを感じ辺りを見渡し、布を広げ、ディエストさんをの手元を見るが何処にもそれらしいものがない。ガックシと肩を落とし他の人たちはどうなったのかと目をやると、みんな自分の着ている服を見て、目を輝かせているようだ。

しかし、何か違和感を感じ皆をよく観察する。


早希さんは先端に小さなガラスのような綺麗な装飾がいくつか着いたマフラーを巻き、セーターのようなモコモコな服に膝丈ほどの短いボックススカート。学生の様な雰囲気は相変わらず残りそしてやはり全体的にピンク。それでいて暖かそうな服装に変わり、可愛らしい服だ。

(ただ…動きやすいのかもしれないけど、そのスカートはあんま変わらないんだな。もーお兄さん目のやり場に困っちゃうよー)

倉瀬さんはマスクが金属なのかメカメカしくなり、牙のようなギザギザの模様が描かれていてカッコイイ。服はあまり変わらずスーツのように見えるが、今までの重そうな分厚い生地とは違い、薄い生地の服が羽織られているように見える。髪色が紫な分服が暗い色でも凄く目立つ。

(あのマスク自分の息が抜けていかなそう、カッコイイけど苦しくないのかな。)

滝原さんは帽子は相変わらずだが、上は前が開けられた分厚いトラクックジャケットの様な服にシャツ。下は細い足が分かるほどスラッとしたズボン、腰には大きな布の様な物が巻かれ片方にだけだらんと垂れている。全体的に暗く、倉瀬さんとは違い暗闇によく溶け込めそうだ。

(体型と佇まいから顔が見えなくてもイケメンなのが分かってムカつく…仕方ない、かっこいいポジは譲ってやろうじゃねーか)

神谷さんは頭に狐のお面を被り後ろで大きめなリボン結びのようで風でヒラヒラと揺れている。服装は着物のような服でラッパ袖となっている。ただ胸元にはハイネックで首までしっかりと隠れており隙がない。着物は下まで長く、だいぶゆったりとしているのか神谷さんが動くとふわりと揺れ、神谷さんは随分と満足そうに体を動かしている。あんなのでも動きやすいのだろう事に目を疑う。

(靴は下駄とかじゃなくてブーツなんだ、余計隙がないな、完全防御って感じか。そもそも女性なのか?)

そして浅田さん。彼女も自分の服を見回している事から、あの布を使ったことは間違いなのだろう。しかし、だからこそ彼女は得心のいかない顔を顕にする。何と言っても、周りとは違い見た目にほとんど変化が無い、いや全く変化がないのだ。素材が変わったのだろうか、それとも色が?とにかく見てわかる変化がない以上、彼女にとって変わったとは言えないのだろう。

「何なんだよ!なんであたしだけ変わってないのさ!あたしが何したっていうのー!」

大きな声で空へと苦言を呈す。その姿はまるで女性の仕草ではない。浮き上がる左腕は浅田さんの頭をポンポンと優しく撫でる。しかし、それが気に入らないのか上着を脱ぎ床へと勢いよく叩きつける。そして頬を膨らませ腕を組みそっぽを向いてしまった。やれやれと思いつつ脱ぎ捨てられた服に目線を落とす、きっと腕だけが勝手に動き浅田さんの元にでも戻ろうとするのではないかと思った。しかし服はまるで元から動いたことなど無かったかのようにピクリとも動かない。

(まさか服ですら拗ねることがあるのか?)

早希さんがそれに気づき服を持ち上げ浅田さんに渡そうとするが浅田さんは服から顔を背け受け取ろうとしない。俺も2人に近づき説得を試みる。

「ほら、この服だって浅田さんのこと助けてくれたんですから、そんな無柄にされると可愛そうですよ。ほらこんなに拗ねちゃって…」

「あの、もしかしたらこの子。明さんが着て無いと動けないんじゃないでしょうか。明さんの能力で動いていたなら、本人のそばに無いと動けないんだと思います。」

早希さんは浅田さんの上着を見つめながらそう話す。確かに早希さんの話は説得力があり、浅田さんもチラリと早希さんを横目に見た。しかしすぐに顔を背けそれでも嫌だとだだをこねる。

(子供じゃないんだから…)

「仕方ないし、浅田さんが着たくなるまで早希さん、少しの間預かってくれませんか?男の俺が預かるのは気が引けるので。」

「いいですけど…」

早希さんの目線は上着から動かず眉をひそめ、どこか切なそうな表情をしている。

(多分あの浮いた左腕も生き物だと思っているんだろうな。だから生き物が動か無くなって悲しくなっているのかもしれない)

俺はつられて眉を顰める。その時、早希さんの口角が少し上がったように感じた。一瞬のことに驚き不思議に思ったが、ただの見間違いだろうと片付ける。

リアクションの時間はこれくらいにして、遂に昨日予定していた王都からの旅を始めることにした。とりあえずリーダーは最初に言ったという事で倉瀬さんに決まり、ディエストさんから渡された資金を手にして王都を後にした。

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