梅雨明け。
朝、目を覚ますと、窓から明るい光が差し込んでた。
カーテンの隙間から見える空は、雲ひとつない青色だった。
「……晴れてる。」
ここ最近、ずっと雨だった。
窓を叩く雨音を聞きながら、何度も屋上に行きたいと思った。雨に飽き飽きしていた。
澪ちゃんと中庭で過ごした日も、ずいぶん前のことみたいに感じる。もう、梅雨も終わるのかな。
そんなことを考えていると、体調確認に来た看護師さんがカーテンを開けた。
「結香ちゃん、おはよう。今日はいい天気ね。」
「おはようございます。」
「そろそろ梅雨明けかな。しばらく晴れの日が続くみたいよ。」
梅雨明け。
その言葉を聞いて、私は窓の外を見つめた。
雨が降らなくなれば、屋上にも行ける。
中庭にも行ける。
澪ちゃんと、また一緒に。
……そういえば、澪ちゃん、今日は来るのかな。
考えかけて、私は小さく息を吐いた。
期待するのは、もう少しだけやめよう。
朝食を終え、リハビリを受ける。
今日は昨日より、少しだけ足が動いた。
「頑張りましたね。」
夏希先生の言葉に、私は笑って頷いた。
できることが、いつまでできるのかはわからない。
それでも、今日できたことを、明日もできたらいい。
リハビリを終えた頃には、窓の外はすっかり夏の空になっていた。
昼食の時間。
私は食堂へ向かう車椅子の上で、何度も入口を見た。
もしかしたら、今日は。
けれど、澪ちゃんはいなかった。
もうそろそろ、澪ちゃんが来なくなって一週間かな。
いつもの席に座り、窓の外を見る。
眩しいくらいの青空。
雨に濡れていた中庭の木々も、太陽の光を浴びている。
梅雨が明けたんだ。
季節は、ちゃんと前に進んでいる。
私の知らないところで、時間は過ぎていく。
澪ちゃんに会えないまま、夏が来た。
「……会いたいな。」
呟いた声は、食堂の賑やかな音に溶けて消えた。




