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第13節

 フィルが教会から自分の家に帰ろうとした時、青かった空は薄暗くなっていた。

 村人と少し世間話をした後いつもの道を通って家に帰る道中、気が付いたことがある。

 

 (こんなにきれいだったかな?)


 下草が刈り取られ所々板状の石を組み合わせて道が作られている。

 フィルが出ていく前はこんなふうに整備などされていなかったはずなのに……


 「ただいま」

 「おかえりなさい。フィルさん」

 「ああフィルかい。お邪魔してるよ」


 家の扉を開けて入ると、そこはまるで別の家のようだった。

 出迎えに現れ笑顔を向けてくるミラベルと奥で座ってフィルが隠していた葡萄酒を飲んでいるレアはさておき……

 見える部屋が気になった。

 戸棚や床、部屋は綺麗に掃除されており、ちらりと見える寝室の毛布はきちんと畳んでおいてある。

 

 「ええと……家を間違えたかな?」

 「何言ってんだいアンタ」


 思わず苦笑いしながらそんな言葉が漏れた。


 「アンタがほったらかしにしてた掃除や医者の仕事をこの子がやってくれたんだよ。薬の調合なんかもやってくれてアンタよりいい医者になるかもね」

 「おいおい酷いなあ」


 散々言われた後、ミラベルに視線を向ける。

 レアが居たとはいえ殆ど交流という交流も無い少し喋りたいが……それ以上に気になることが増えた。


 「ミラベル、君は何者なんだい?」

 「え?私はただの流れてきた娼婦です」

 「高級娼婦だとしたらこんな小さな村に流れてくるのはおかしいし、ただの娼婦にしては教養がありすぎる。薬入れに入ってる文字も読めたんだろう?」

 

 フィルが薬を入れている陶器の瓶にはそれぞれ蓋に文字が彫ってある。

 この国の識字率は高くないし、彼女の隣で座っているレアも文字は読めないし当然薬の調合も出来ない。

 中身を見て判断したとしても乾燥してしわしわの薬草類や軟膏が入っているだけ、素人に見分けなど付くはずもない。

 

 「もういちど聞くよ。君は何者なんだい?」

 「…………」

 「フィ~ル~?女の子の秘密をほじくり返すのはどうなんだい?」

 「けど……」

 「うるさいねぇ、言いたくない事無理やり言わせるんじゃないよ。はいはいこの話はお終い。で次の話だ」

 「何の話?」


 聞きたいことが聞けず若干不服そうなフィルを置き去りにしてレアが話を進め出した。


 「この子の事さ。怪我が治ったらどうするかと思ってね」

 「ああ、なるほど」

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