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第12節

 「安らかなお眠りを……魂の平穏を……」


 遺体となったルイーズが棺の中で手を組んで眠っている。

 明るい茶髪も穏やかな笑みも普段見ていた彼女の姿そのものでまるで眠っているかのようだった。

 葬儀は村の墓地で執り行われた。

 彼女の遺言で死んだあとは村に埋葬してほしい、そう家族に言っていたようだ。

 家族や孤児院の人間は勿論、村人も大勢参加し悲しみの表情を浮べながら喪に服している。


 「君が……フィリップ君かね?」

 「はい」


 皆で棺に花を手向けていくのを黙って見ていると身なりの整った中年の男性が声をかけてきた。

 明るい茶髪といい青い瞳といいどこかルイーズの面影があるその男性は恐らく彼女の父親だろう。


 「私はルイーズの父親だ。君の話は娘からよく聞いていた。最後の時も手を尽くしてくれたそうだね」

 「お助けすることは……叶いませんでしたが」

 「……実を言うと、君が娘を殺したのだと思っていたのだが……」

 「神に誓って申し上げます。そのようなことは決してありません」


 恨みのこもった瞳を向けてくる父親。

 その怒りと憎悪はまっとうな物だろうが、生憎正直になるつもりは毛頭ない。


 「……すまない。娘が死んで誰彼構わず疑うようになってしまっている」

 「いえ、お気持ちはわかります」

 「今日が出発の日だったか、君はもう行きなさい。後の事は私たちがやっておく」

 「その前に一つだけお願いしても?」

 「なにかね?」

 「花を手向けさせてください。ルイーズ様に」

 「ああ、頼む」


 踵をかえしたフィル。

 花を渡しているのは孤児院の院長だ。


 「……旅人さん」

 「花を、もらえますか?」

 「惜しい人を亡くしたよ……本当に」

 

 そう言いながら院長が花を渡してくる、花の名前はマーガレット。

 雪の様に真っ白い綺麗な花だ。


 「おさらばですルイーズ様……」

 

 言葉に詰まりながら、なんとか捻りだす。

 考えに考えた結果のこの言葉だったが、別れの言葉は驚くほど短かった。


 「それでは。いつかまた機会があれば」

 「またね。旅人さん」

 「ええ。お元気で」


 荷物を担ぎ、人を押しのけその場を後にする。


 「さようなら。ルイーズ様」


 フィルは指にはまっていた指輪を空高く投げ捨てた。

 地面に落ちたそれからは仕込みの刃が飛び出し、毒々しい液体が漏れていた。



 †



 ルイーズが居た村から出て数日。

 途中食料が尽きるなどの些細な問題は発生したものの無事にフィルは自分の村にたどり着いた。

 彼が一番に向かった場所は……


 「やあフィル。よくやってくれた」

 「どうも。シモン神父」


 がらがらで人の居ない教会……シモン神父の教会だ。

 神父らしい穏やかな笑みを浮かべながら椅子に座ったフィルに葡萄酒を持ってくる。


 「それで今回はどうやって?」

 「『毒』です。指輪に仕込んで、手をつなぐときに……」


 話している途中でルイーズの顔を思い出す。

 笑顔で自分が殺されるなんて微塵も思わなかった哀れな女……その姿を。


 「どうかしたかね?」

 「失礼、少し考え事です」


 シモンは少し怪訝そうな顔をしたがすぐに元の顔に戻った。


 「まあいい。さて、褒美は何がいいかね?」

 「葡萄酒か蜂蜜酒、もしくはビールを樽で5つ。それとチーズを」

 「ふーむ……相変らず酒か。もったいない。領地や地位でも喜んで渡してくれるだろうに」

 「僕はこういう仕事柄、目立たないほうがいい」

 「それでももったいなく思うがね私は。まあいい手配しておこう。今日はゆっくり休むと良い」


 こうして貴族の娘一人を殺した報酬としてフィルは酒を貰った。

 価値にして金貨数枚程度だった。

 

 

 

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