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だっく  作者: 君島極
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第8話:助けなきゃ

実験区画にも、そのやり取りがはっきり聞こえてくる。


「……石崎さん、怒られてる」


ミーアが目を丸くする。


「どうしたんだろ?」


コウも不安そうにスピーカーの方を見る。


「なんかあったのかな」


ミルダが首を傾げる。


ルナも小さく頷いた。


「……あれ?」


ルナが部屋を見回す。


「だっく、いない」


三人もはっと顔を見合わせた。



その頃、コントロールルームでは。


だっくが、ガラス越しに石崎をじっと見つめていた。


「ぐわ?」


さっきまで笑っていた石崎が、今はガラスの向こうで困った顔をしている。


だっくは首を傾げると、石崎が何度も指差している操作卓へ目を向けた。


「ぐわっ」


小さく頷き、そのまま操作卓へ歩いていく。


その姿を見つけた石崎の表情が変わる。


「だっくちゃん!」


「ぐわっ! だっくです」


「待って!」


石崎は両手を振る。


「そこじゃない!」


「ぐわ?」


石崎はガラスに張りついたまま、操作卓を指差した。


「今から言う順番で押して」


だっくは真剣な顔で頷く。


「ぐわっ!」


石崎は操作卓の赤いボタンを指差した。


「赤」


だっくは足を持ち上げる。


カチッ。


黄色。


「違う!」


「赤!」


カチッ。


青。


「違う違う!」


「赤!」


カチッ。


赤。


「そう!」


その瞬間だった。


「ぐわっ♪」


カチッ。


黄色。


「違う!」


カチッ。


青。


「だから全部押すなってぇぇぇぇぇ!!」


警報はまだ鳴り続けていた。


(何とかしないと……)


石崎は一度大きく息を吸い、ゆっくり吐き出す。


震える手を、防爆ガラスにつく。


「だっくちゃん」


「ぐわっ!」


「もう一回だけ! 今度で最後だから」


「ぐわぁいく?」


「そうそう、あとでアイス食べようね」


だっくは満足そうにこくりと頷いた。


石崎は操作卓を指差す。


「青」


だっくが足を下ろす。


カチッ。


青。


「黄色」


だっくがもう一度足を動かす。


カチッ。


黄色。


「青」


カチッ。


青。


「あと一つ!」


石崎がガラス越しに身を乗り出す。


「赤!」


カチッ。


赤。


その瞬間だった。


警報音が、ぴたりと止まる。


赤色灯の回転もゆっくり止まり、操作卓の表示が切り替わる。


《セキュリティ解除》


「助かったぁ……」


石崎はその場へへたり込んだ。


モニターに映る研究員たちも、一斉に大きく息を吐いた。


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