↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だっく  作者: 君島極
PR
6/9

第6話:気になるボタン

コントロールルームは静けさを取り戻していた。


大型モニターは待機画面に戻り、照明だけが部屋を明るく照らしている。


「……ぐわ?」


部屋の真ん中で、だっくがきょろきょろと辺りを見回した。


石崎がいない。


少しだけ寂しそうに鳴きながら部屋を歩き回る。


ふと、部屋の奥にある操作卓の前で足を止めた。


「ぐわ?」


そこは、いつも石崎たち研究員が触っている場所だった。


並んだモニター。


赤、青、黄色。


色違いのボタンが横一列に並び、その下には大小さまざまなスイッチがある。


だっくは興味津々で近づき、小さなくちばしでつついてみた。


動かない。


今度は足でちょん、と触れてみる。


まだ動かない。


「ぐわっ」


赤いボタンに、もう少しだけ力を入れた。


カチッ。


次の瞬間だった。


ビーッ!!


けたたましい警報が、施設中に鳴り響く。


色灯が一斉に点灯する。


《セキュリティレベル1》


無機質な音声が静かに流れた。


「ぐわっ!?」


突然の大きな音に、だっくは驚いて飛び上がる。


羽をばたばたさせながら、その場でくるりと一回転した。



その頃。


トイレで手を洗っていた石崎の耳にも、その警報ははっきり届いていた。


ビーッ!!


「……え?」


蛇口を閉める。


聞き間違いじゃない。


施設中に響く警報だった。


「うそだろ……」


嫌な予感が胸をよぎり、石崎はそのままコントロールルームへ向かって駆け出す。


「何があった!?」


自動扉の前まで駆け込んだ、その瞬間だった。


ガチャンッ。


重いロック音が響き、自動扉の表示が赤く切り替わる。


《ロック中》


石崎は思わず足を止めた。


「……え?」


透明な防爆ガラスの向こうでは、小さな白い影がきょとんと立っている。


ガラスの下部には、細かなメッシュ状のスリットが設けられていた。


「……あ」


だっくだった。


その姿を見た瞬間、石崎はようやく思い出した。


「しまった……だっくちゃん、てっきり誰かの肩に乗ってるもんだと……」


部屋へ送り届けるのを、すっかり忘れていた。


石崎はスリットに顔を近づける。


「だっくちゃん!」


「ぐわっ?」


だっくは石崎に気付き、嬉しそうに羽をぶんぶん振った。


「ぐわっ!」


返事だけは、いつも通り元気だった。


石崎は小さく息を吐いた。


怪我はしていない。


それだけは分かった。


「よかった……」


けれど安心したのも束の間だった。


だっくのすぐ後ろには、さっき押した赤いボタンがある。


その隣には青いボタン。


石崎は表示画面に目を向けた。


《セキュリティレベル1》


まだ間に合う。


解除できる。


そう判断すると、石崎はガラス越しに手を上げた。


「だっくちゃん」


「ぐわ?」


「終わったらおやつをあげるから、一つだけお願い」


「ぐわっ!」


嬉しそうに頷く。


石崎は青いボタンを指差した。


「赤の隣」


「青いボタンを一回だけ押して」


人差し指を一本立てる。


「一回だけ」


だっくは石崎の指先を追い、青いボタンを見る。


それから石崎を見上げると、


「ぐわっ!」


力強く頷いた。


ゆっくり足を持ち上げる。


青いボタンの前で一度止まり、


カチッ。


青いボタンが沈む。


《解除確認中》


石崎の表情が少しだけ緩んだ。


その直後だった。


カチッ。


だっくは、同じ青いボタンをもう一度踏んだ。


《解除操作キャンセル》


《セキュリティレベル2》


ビーッ! ビーッ!


警報音がさっきより一段大きく施設中に響き渡り、赤色灯の回転もさらに速くなった。


石崎は目を見開く。


「……あれ?」


ガラスの向こうでは、だっくが嬉しそうに羽をぱたぱた振っていた。


「だっくちゃん違う!」


「ぐわっ?」


だっくは首を傾げた。


「一回!」


「一回だけって言っただろ!」


「ぐわっ♪」


だっくは何度も頷く。


どうやら、ちゃんとできたと思っているらしかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。