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だっく  作者: 君島極
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第5話:帰る準備

コントロールルームに、少しずつ静けさが戻っていく。


さっきまで笑い声でいっぱいだった部屋には、今は片づけの音だけが響いていた。


石崎は大きなごみ袋を広げる。


「お菓子の袋はこっちね」


「はーい」


ミーアが床に落ちていた袋を拾って走ってくる。


その横ではコウが空になったジュースのコップを重ねていた。


「これも?」


「うん」


「ありがとう」


「えへへ」


嬉しそうだった。


少し離れた場所では、ミルダがソファを元の位置に押している。


「重い……」


「無理するな」


石崎も反対側に回り、一緒に押す。


ゆっくり元の位置に戻すと、ミルダが小さく息を吐いた。


「終わった」


石崎はほっと笑った。


「助かった。ありがと」


ミルダも少し照れくさそうに笑った。


「カイト」


ルナが映画のディスクケースを抱えてやってきた。


「これ、戻してくるね」


「お願い」


石崎が笑って頷く。


ルナは一枚ずつ棚に戻していく。


その様子を見ていた石崎が苦笑した。


「ほんと丁寧だな」


ルナは少し照れくさそうに笑った。


「えへへ」


その頃、だっくは雑巾をくわえたまま、一生懸命床をごしごし拭いていた。


「ぐわっ♪」


石崎はその姿を見つけ、小さく笑って歩み寄った。


「だっくちゃん、ありがとう。頑張ってるね」


頭を優しく撫でると、だっくは嬉しそうに目を細め、もう一度同じ場所をごしごし拭き始めた。


「そこ、もう三回目だけど」


石崎が苦笑すると、だっくは「ぐわ?」と首を傾げる。


どうやら一番きれいにしたい場所だったらしい。


「そこはもう大丈夫。今度はこっちお願い」


石崎が指を差すと、


「ぐわっ!」


だっくは元気よく返事をして、今度は素直にそちらに歩いていく。


その様子を見ていたミーアが笑った。


「だっく頑張ってる」


「一番働いてるかも」


コウも笑いながら頷く。


褒められただっくは少しだけ胸を張り、羽をぱたぱた動かした。



掃除が終わる頃には、コントロールルームもすっかり元の姿を取り戻していた。


机の上のお菓子やジュースは片付き、映画のディスクも棚に戻っている。


石崎は部屋を見回し、小さく頷いた。


「よし、終わり」


その声に、みんなが自然と集まってくる。


「それじゃ、部屋に戻ろうか」


少しだけ部屋が静かになる。


「もう終わっちゃった……」


ミーアが小さく呟いた。


石崎は笑って頷く。


「今日はね。でも、楽しかったでしょ?」


「うん!」


「すっごく!」


コウも元気よく手を挙げる。


「また映画見たい!」


「カードも!」


「アイスも!」


「ぐわっ!」


だっくまで元気よく鳴いた。


石崎は思わず吹き出す。


「欲張りだな」


みんなも笑った。


「じゃあ、部屋に戻ろう」


その一言に、子どもたちは素直に頷いた。


その間にも、だっくは部屋の隅で雑巾をくわえたまま、まだ床を拭いていた。


石崎は笑いながら、ルナたちを一人ずつ部屋まで送り届けていった。


「じゃあね」


「またね」


「おやすみ」


重い扉が一つずつ閉まり、電子ロックが静かに掛かる。


最後の部屋を閉め終えると、石崎は時計に目を向けた。


もうすぐ上司たちが戻ってくる時間だった。


「ちょっとトイレ行ってくるか」


そう呟いてコントロールルームの前を通り過ぎる。


廊下に足音だけが遠ざかっていく。


静かなコントロールルーム。


そこでは、小さな白い影がきょとんと首を傾げていた。


「……ぐわ?」


だっくだった。


石崎は、だっくだけを送り忘れていることに、まだ気付いていなかった。


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