第4話:また遊ぼう
それからの一週間は、驚くほど早く過ぎていった。
朝になると、石崎が部屋を開ける。
「おはよう」
「ぐわっ!」
だっくが真っ先に飛び出してくる。
その後ろから、みんなが続く。
「おはようー」
ルナが小さく頭を下げ、
「今日なにするの?」
ミルダが笑う。
ミーアとコウも眠そうな顔のまま部屋を出てきて、自然と石崎の後ろについて歩き始める。
食事を終えれば、みんなでコントロールルームに集まる。
映画を見たり。
カードゲームをしたり。
お菓子を食べたり。
だっくが回転椅子でまた転げ落ちて怒ったり。
特別なことは何もない。
ただ、一緒に過ごすだけだった。
それでも、その時間は子どもたちにとって何より嬉しい時間だった。
◇
「かいと!」
昼下がり。
トランプを片付けながら、ミルダがふと口を開いた。
「なんでいつもみんなで遊べないの?」
石崎の手が少し止まる。
「え?」
「みんな一緒の方が楽しい」
そう言って笑う。
「部屋にいるより、ずっといい」
その隣でコウも大きく頷いた。
「俺も!」
「広いし!」
「走れるし!」
「お菓子あるし!」
「アイスもある!」
その一言に、だっくが勢いよく振り向く。
「ぐわぁいく! チョーダイ」
石崎は思わず吹き出した。
「だっくちゃんはそればっかりだな」
「ぐわっ♪」
嬉しそうだった。
ルナはみんなを見回しながら、小さく笑った。
「……楽しいね」
石崎も自然と笑みをこぼす。
「うん」
ルナは少し照れたように笑った。
「こんなにいっぱい遊んだの、初めて」
「そう?」
「うん」
ルナは少し視線を落とした。
「また、みんなで遊びたい」
その言葉に、石崎はすぐには返事ができなかった。
代わりに、小さく笑う。
「また遊ぼう」
その一言だけを返した。
「うん。遊ぶ!」
ルナも嬉しそうに頷いた。
◇
気づけば、一週間は終わろうとしていた。
机の上に置いてあった予定表を見る。
職員帰館予定。
今日、午後三時。
石崎は時計に目を向け、小さく息を吐いた。
「……そろそろ帰ってくるな」
その言葉に、みんなの動きが止まる。
「そうなんだ……」
ミーアが寂しそうに言った。
「うん」
石崎は頷く。
「だから、元通りにしよう」
部屋を見回す。
お菓子の袋。
ジュースの空き容器。
カードゲーム。
映画のディスクケース。
普段のコントロールルームとは違う、子どもたちだけの一週間がそこに残っていた。
「掃除しようか」
石崎が笑って言う。
「終わったら、みんな部屋に戻ろう」
部屋が少しだけ静かになった。
「もう終わり?」
ミーアがぽつりと呟く。
「うん。みんな帰ってきちゃうからね」
石崎は少しだけ寂しそうに笑った。
「でも、また機会を作れそうなら、ちゃんと考えるから」
「ほんと?」
ミーアが顔を上げる。
「うん。約束はできないけど……また遊べたらいいね」
ミーアは少し笑った。
「わかった!」
その一言だけで十分だった。
子どもたちは頷き合うと、それぞれ掃除を始めた。




