外①
あまり時間がないなと思い始めていた。ラオ爺もぼくもどんどん年を取っていく。ぼくたちはいつこの世からふっと消えてしまってもおかしくない年齢になりつつあった。ぼくらが事を起こさなければ永遠にこの世からアップルシードルは消えてしまうだろう。漠然とそんなことを考えていたある日、思いも寄らない知らせが舞い込んできた。
管理部からツバサがやってきて業務上の連絡事項としてぼくとラオ爺に言った。
「外出許可が降りた。城の補修に必要なものを探し、すみやかに修理できる態勢を整えるように」
そこでぼくは前々から考えていたことを伝えた。
「もちろん、申請していたように補修のためには一部の材木や石材などを持ち込めばある程度のことはできます。ただ、ぼくたち世代より下はもう外を知らない世代です。後の世代のためにも外の手引書を作りたいと考えています。城は生き物なので、セントラル連合から与えられる資材ではうまく適合しないことが多いこともあり、城だけのことにかかわらず、何かの時のために外のものをいかせるように、どこに何があり役に立つものがどこにあるかを書き残しておきたいと考えています。」
ツバサは、無表情に頷いた。
「わかりました。上に報告してみます。ではそれとは別に、外出の件はすすめなさい。」
外出許可はとうに諦めていた。ぼくたちは昔住んでいた各々の住居に住むことは許されず、居住エリアの巨大宿舎のようなものに放り込まれている。小さな個室が一つ。衣食は配給制でほとんど私物を持たないぼくたちが暮らすには部屋どころか穴蔵でも十分だった。ただ朝が来たら目をさまし、仕事に行き、仕事から帰りただ眠るだけの生活。そんな暮らしを30年以上続けてきたぼくにとって、外に資材を探しに行くことができるというのは大事件だった。
城が生き物というのは本当のことだった。いくつかの修理のための素材が持ち込まれ試してはみたものの城の戸や床材とは相性が悪く、すぐに駄目になるのだった。だから城の素材と近い天然の木や石で補修すべきだしそのために外に探しに行きたいと申請をしており、それは今の今まで放置されていた。なぜ、急に?と訝しさはあった。なぜ今なのかと。なんとうまい具合に今は秋なのだ。偶然かはたまた奇跡かはわからないが、なんにせよ選択肢はたいしてないのだ。命令なら従うのが今の社会の掟だった。
ラオ爺はもう随分足腰が弱っているので、補修のための素材を集めるのはぼくの仕事になるだろう。とはいえ、彼を外に連れ出さない選択肢はなかった。どうせものを運ぶために車が必要だった。城にある素材で簡単な荷車らしきものを作り、ラオ爺をのせて行けばいい。外にでられる。ぼくたちの家はどんな風になっているだろう、きっと雑草と雨風で朽ち果てていることだろうな。よく遊んだ空き地は、小川は、昔のままだろうかと、それから毎日のように思いを巡らせているうちに、許可の出た外出許可の当日がやってきた。




