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エイプリル・ループ ~僕と彼女の4月0日~  作者: 尾久沖ちひろ
ループ2 4月1日

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6/21

#6 「これが『三回目』です」

 一体何故、こんなことが起きているのか。



 もう夢だとは疑わない。

 認めたくはないが、これは明らかに現実だ。



 いくら今日がエイプリル・フールだからって、流石に嘘や冗談の域を超えている。

 神様のイタズラだとすれば、あまりにもタチが悪いと言わざるを得ない。



 誰が、どうやって、こんなループを行っているのか。

 どうして僕だけがそれを自覚できているのか。

 疑問は尽きないが、最も重要なことは一つ。



「どうすれば、このループは終わるんだ……?」



 恐らくこのままでは、明日もまた「今日」が繰り返されてしまう。

 どうすればそれを防ぎ、真の明日──4月2日へ進めるのか。



 まだ何も分からないが、とにかくそれを探らなくては同じことの繰り返しだ。

 僕一人の力で変えられるようなものなのかは分からないが、他の誰もループを自覚できていない以上、可能性があるのは僕だけだ。



「とにかく、今までとは違う行動を取ろう。バタフライ・エフェクト、だったっけ? 小さな行動が巡り巡って大きな変化を招く。影響が影響を呼んで、このループが終わるかも知れない」



 ハラリハラリと舞う桜の花弁が、僕の肩にそっと乗る。

 校門とその道中に植えられた桜の木々は、当然ながら「九分咲き」。



「みんな、もうちょっと寄ってね~」

「だってさ。オリオン、もっと真ん中に寄ってよ。僕が見切れちゃう」

「やめろ伯雅(はくが)、そんなに強く押すな……」

「ほらほら七香(ななか)も。もうちょっとオリオンの方に詰めなさいって」

「ちょ、ちょっと晴蘭(せいらん)……!」

「フフッ、良い感じよ。じゃあ撮るわね~」



 記念撮影をしている四人の生徒──間も無く僕のクラスメイトになる者たち。

 まずは彼らから始めてみよう。



「あの……もし良ければ、僕が撮りましょうか?」

「えっ?」



 四人を撮影している女性に声を掛けた。

 もしかしたら女優かモデルなのだろうか、太陽の如きオーラを放つ絶世の美女で、背もスラリと高く、何より──服を着ていても分かるほど、体の一部分がその辺の女性を凌駕している。

 あの四人の誰かの母親なのだとは思うが、それにしても若い。



「せっかくですから、五人一緒に映ってはどうですか?」

「いいわね。じゃあ、お言葉に甘えてもいいかしら」



 美人ママの女神級スマイルと優美なボイスに、脳が破壊されたような気がしてクラクラする。

 この行動がループ阻止に繋がるのかは分からないが、これだけでもやる価値はあったと言い切れる。



 渡されたスマートフォンで五人を撮影。

 写りは申し分無い。



「どうもありがとう」

「い、いえいえ、どう致しまして……」



 春の陽気は脳を(とろ)かす。

 半ば夢見心地のまま、僕は誘われるように校門を潜った。



 その後の入学式も、前回と変わりは無い。

 同じ者が同じ挨拶をする、実に退屈で苦痛な時間だ。

 まあ、いつ挨拶が終わるタイミングが分かるという点だけは有り難いが。



 そして予定通り、一年A組の教室へ移って自己紹介タイム。

 先程の美人ママも後ろの父兄に交じって並んでいた。



 流石に今回は、これまでと同じ自己紹介にはしない。

 入学式の間、ずっとどういう内容にするか考えていた。



染井春一(そめいはるかず)です。今日という日を迎えるのは、これが『三回目』です。だから皆さんの顔と名前もほとんど憶えてしまいました。宜しくお願いします」



 今朝の祖父と同じく、僕の言葉の意味を測りかねたクラスメイトたちが、一様に首を傾げていた。



 頭のおかしい奴と思われたか。

 或いは、今日がどういう日かを思い出して勝手に納得するか。



 そのどちらかが通常の反応だろう。

 案の定、センスが無いと苦笑した者がチラホラと目に入る。



 それからも、前回までとは多少行動を変えて、時は夜。

 寝間着に着替え、今はベッドの上で思案中。



「眠って、朝起きたらまた4月1日、というのがこれまでのループだった。だったら……眠らずに朝まで過ごしたらどうなるんだろう?」



 睡眠がループのスイッチになっているのだとしたら、起き続けることでそれを回避できるのではないか、というのが僕の推測だ。



「試す価値はあるな」



 寝間着を脱ぎ捨て、学校の制服に着替える。

 朝まで本を読むなり、ゲームをするなりして時間を潰そう。



 ベッドに横になることすらしない。

 コーヒーも用意して、徹夜の準備はバッチリだ。



 本当にこれで終わるのか、終わらなかったらどうする、という疑問は、また次の4月1日になった時に考えるとしよう。

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