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けもの耳ろぼっととマンダム

 ばたん。

 玄関から音がした。

 ナースのけもの耳ろぼっとが帰ってきたようだ。


 前の日。いろいろあったが、高さ1cmのマトリョーシカを作ってた小さいけもの耳ろぼっと。今日納品してきたようだ。

 お金持ちに7万円で売れたみたいだった。


「はい。おこずかい…」ナースのろぼっとから7000円を渡された。


「ありがとう」おこずかいをもらって上機嫌だ。


「私にはお小遣いは無いのですか」大きいけもの耳ろぼっとが言う。


「なぜ。あなたにあげないといけないのですか?」


「それは生活費に必要だからです。あなたの食料の消費分も増えましたし…」


「それはお小遣いではありません。生活費です。しょうがないです。これをあげましょう」


 ろぼっとの整備用のサービス券だった。

「それは何?」僕はろぼっとに聞いた。


「オーバーホール用の券です。普通は所有者にチケットを買ってもらうのです。

ちなみに2万5千円します」


「おー。それは良かった」


「ちなみに私は、この券がなくてもオーバーホールしてもらえる契約をしています。5年だけですが…

今気が付きましたがこのチケットの有効期限は1年前の今日ですね」


「そうですか。気が付きませんでした。今日持って行ってはどうですか。期限切れに気が付かないかもしれません」


「やっぱりいらないです」というやりとりをろぼっとの間でする。


 さて、今日も休みだ。何をしよう。

 その前に、僕は大きいけもの耳ろぼっとの耳が黄金のままだったので、センターに連絡をした。

 センターの人は5分で家に来てくれた。


「おめでとうございます。1万円です」金一封を渡してくれた。そして背中のハッチを開けて番号を入れた。がちゃ。ロックが解除された音がした。

 僕はボタンをおした。にゅー。にゅー。今度は銀色の狐耳と5尾の尻尾が出てきた。

「お。これも当たりです。すごいです。今車から景品を取ってきますね」

 センターの人は家から出て行った。


 そして手にしていたのは… 賞味期限無限の油揚げセットの箱だった。


「これ。ほしかったのです。良かったです」けもの耳ろぼっと。嬉しそうに言う。

 そーですか。油揚げ。僕はテンションが下がった。


 僕はまたボタンを押した。にゅー。にゅー。あ。また黄金色の狐耳が出てきた。尻尾は1つだったが。


「それはただの黄金色の狐耳です。いちおう景品はありますが。ほしいですか?」


「うん。何かな…」

 センターの人は耳を見て、車からとってきますね。と言った。

 きつねうどんのカップラーメン。12個の箱入りだった。


 僕はまたボタンを押した。にゅー。にゅー。今度はタケノコが出てきた。

 僕はまたボタンを押した。にゅー。にゅー。今度は『マンダム』の小瓶が2つ耳の位置に出てきた。


「なんだよ。耳ですらないよ…」


 僕はまたボタンを押した。にゅー。にゅー。今度はいつものネコミミになった。

 あー。もういいや。


 今度はナースの子のボタンを押した。

 がちゃ。がちゃ。今度は『たわし』が2つ耳の位置に生えてきた。


「なんだよこれ…」

 僕はまたナースの子のボタンを押した。がちゃ。がちゃ。耳の位置に小さい『まねきネコ』の置物が出てきた。

 はあ。また耳ですらないよ…


「あのさ。この隠し耳。普通の動物の耳にしてきてよ… タケノコとかマンダムはいいから…」


「わかりました。これは大人向けでした。マンダムとか出すと喜ぶのですよ。酔っぱらった人には大うけですが…」


「早く行ってきて…」


「わかりました」


「えーと君も、隠し耳。かえてきて…」

 僕はナースのろぼっとにも言った。

「えー。めんどくさいです。ユニットを外すので、坊ちゃん行ってきてください。自分で選んだらどうですか?」


「選べるんだ。わかった。一緒に行ってくるよ… ユニットを外して…」


「ごめんなさい。頭の後ろは見えないので、坊ちゃんが外してください…」

 わかったよ…


 隠し耳用ユニットを取り外す。以外に小さい。


「あ。それは外さなくていいのです。私のボディ部分にあるカートリッジから隠し耳が頭へ運ばれて出てくるので、ボディ部分のカートリッジになります。ナース服を脱がしてハッチを開けてください」


「めんどくさいな」


「そう。めんどくさいのです」


 僕はナース服をひっぱがして、カートリッジを取り出す。40cmの長さがあるカートリッジ。『隠し耳』用と書いてあった。この中にたわしとか、まねきネコとか入っているのか。


「じゃあ行ってくる」


「念のため。隠し耳カートリッジ2型ですよ。1型は電圧が違いますので…」


「わかったよ…」


☆☆☆


「こんにちは。技術者の方いますか?」おおきいけもの耳ろぼっとがセンターの受付で聞く。


「いますよ。お待ちください。300分ほど…」


「そんなに待てないよ…」受付も『けもの耳ろぼっと』だった。


「では1分12秒ほどお待ちください…」

 ずいぶん細かいな…


 きっかり1分12秒後に技術者が裏から出てきた。


「どうしたの。またばらばらになったとか?」


「いや。これなんだけど。子供用の隠し耳に変更してほしくて、たわしとかタケノコとかマンダムとかいらないから… そしてこの大きいけもの耳ろぼっとの隠し耳も代えてよ…」


「ぼっちゃん。わがままですね。まあいいでしょう。交換料金として10円いただきますが」


「ずいぶん安いんだけど…」


「いや、ちょうど自動販売機に入れるお金が10円足りなかったから…」


「10円ぐらいなら。私があげます… 1年後に1000円にして返してくれればいいのです」


「ずいぶん高い10円だね…」

 ろぼっとは10円を渡す。


「冗談です」ろぼっとは技術者に隠し耳用のユニットを外してもらう。


「ところで、前は頭に入ってなかったっけ」僕は記憶をたよりに聞いた。


「前のボディではそうでした。今のは隠し耳の個数が増えたので頭に入らなくなったのですよ」


 けもの耳ろぼっとは隠し耳用のユニットを交換してもらった。

「さあ。交換しました。これで帰ってもらって大丈夫ですよ…」技術者が言う。


 僕はボタンを押した。


 にゅー。にゅー。ネコミミが出てきた。

 何回かボタンを押した。

 普通の耳しか出てこなかった。


「ちょっとこっち来てください」けもの耳ろぼっとが技術者を呼ぶ。


 てぃっと足はらいをして技術者を転ばす。そして床の上にうつ伏せで寝っ転がった技術者のお尻の上にどすんと座り込むけもの耳ろぼっと。


「ぼっちゃん。背中の上にまたがって抑えてください…」とろぼっと。


「う。うん」僕は言うとおりにした。


「な。何をするんだ…」


「坊ちゃん。ボタンを押してネコミミモードにしてください…」

 僕はボタンを押してネコミミモードにした。


「きちんと確認をしましたか?」


「いやぁ。どうだったかな…」


「死刑です。では執行をします」ろぼっとは自分のネコ尻尾を手に持って、技術者のサンダルを脱がせて、足の裏をネコの尻尾を使ってくすぐりはじめた。


「あは。はっはっは。やめてくれ。足の裏はだめ。足の裏は… ひゃははは。だ。だめ」

 こしょこしょ。こしょこしょ。


足をばたばたしようとするが、ろぼっとにより押し付けられているので動かせないし、お尻の上にろぼっとが座っているのでけもの耳ろぼっとをどかせられない。


「いちおう念のため坊ちゃんに言っておきますが、言うことをきかないときは坊ちゃんにこれをします。ものすごいです。24時間このままくすぐり続けると死にますよ…

さて、反省しましたか? あのまま帰っていたらまた、ここに歩いてこないといけなかったのですよ」


「ひゃ。は。わ。悪かった。ははは。はんせいしてる…」

 こしょこしょこしょ。

 

 あー。足の裏を尻尾で強制的にくすぐる。あれは耐えられないだろう。


 けもの耳ろぼっとは立ち上がった。僕も技術者の背中からどいて立ち上がる。


 技術者はぐったりしていた。


 ユニットの電気の接点についているシールをはがし忘れてたようだ。


 隠し耳ユニットを付け直してもらった。


 僕は大きいけもの耳ユニットのボタンを押した。

 にゅー。にゅー。狐耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。狐耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。白い狐耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。銀色の狐耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。ネコ耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。コアラの耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。あらいぐまの耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。フェネックの耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。ウサ耳になった。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。パンの耳が出てきた。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。わんこの耳が出てきた。

 僕はボタンを押した。

 にゅー。にゅー。アルパカの耳が出てきた。


 一回変な耳が出てきたけど。問題はないかな。


「ちなみに、本人を連れてきたらよかったのかな、こっちのナースのろぼっとにつけるユニットなんだけど。大丈夫かな…」


「まあ。大丈夫じゃなかったら、けもの耳ろぼっと2人でまた来ますよ…

こんどは足の裏だけではなく、わきの下もナースろぼっとにネコの尻尾でくすぐってもらいます」


「大丈夫だ。大丈夫。さて、私は用事があるから、午後から休みをもらって退社するかな…」


「えーとそれはだめです。私が家に帰ってから動作確認をします。確認したら電話します。それまではここにいてください。もしいなかったらどうなるかわかりますね…」


「はい」技術者はうなずいた。


☆☆☆


 僕たちは家へ帰り、ナース用ロボットの隠し耳ユニットを交換して動作確認をした。

 問題なかった。


「ご飯作ります」ナースろぼっとはそのままごはんの支度をしてごはんタイムとなった。


 で、何か忘れている気がした。

 次の日。センターに連絡を忘れていることに気が付いた僕。


「さっき電話したら、あたしたちが帰った後。すぐに届けを出して退社したと言ってました。

今日の午後にでもしばいてきます」


「そう」

 今日は学校がある。

 

 僕はおおきいけもの耳ろぼっとのボタンを押した。

 にゅー。にゅー。こあらの耳が出てきた。

 僕はナースろぼっとのボタンを押した。

 がしゃ。がしゃ。あらいぐまの耳が出てきた。


「学校に行ってくるよ…」

 僕は家を出た。



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