【5】
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
残るは最後の一頭。
群れが半壊しようと、下級の魔物に駆け引きをするような知能はない。
間合いを測ることもなく、血走った眼で俺を睨みつけ、地を蹴って一直線に突っ込んできた。
(……見える)
さっきまでの俺なら、この単調な直進すら捉えきれず、成す術なく喉を食い破られていただろう。
だが、オーバースペックな死闘の連続が、俺の動体視力と反応速度をかつてない領域まで強制的に引き上げていた。
敵の殺意、踏み込みの予備動作、そして飛びかかってくる軌道。
そのすべてが、はっきりと脳内で線として結ばれる。
俺はもはや、無様に転がることはしない。
迫り来る獣の牙が俺の肉に届くほんの一瞬前、最小限の動きで左へと半歩だけ身体をズラした。
耳元を、唸り声と獣の体臭が通り抜けていく。
完全に狙いを外され、空中に投げ出された形となったブラッドウルフの無防備な側腹部。
俺はそこへ向けて、すれ違いざまに鉄剣を迷いなく突き立てた。
「――シッ!」
ズリュッ、と生々しい肉を裂く感触が腕に伝わる。
俺の突きは、魔物の急所を的確に捉えていた。
奴自身の突進の勢いも相まって、刃は深く内臓を抉り、背中側までを容易く貫通する。
「ギャ……ッ!?」
短い悲鳴を上げ、最後の一頭は勢いそのままに地面へと激突し、二度と動かなくなった。
静寂が戻った洞窟の中で、荒い息遣いだけが響く。
血に塗れた剣を引き抜きながら、俺は転がる三頭の死骸を見下ろした。
一頭目は、ただのラッキーだった。
二頭目は、地形を利用した死に物狂いの足掻きだった。
だが、この最後の一頭に見舞った一撃は違う。敵の動きを見極め、躱し、的確に急所を突いた。
マグレではない。
俺は自らの意志と『実力』で、この死地を生き残ってしまったのだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近戦闘シーンを書いていなかったので、ただただ「泥臭い死闘」と「痛みを伴う戦闘」が書きたくて始めました。
高尚なテーマやメッセージ性はありません。死にたがりの男と、後ろから勝手についてきて全回復させてしまう少女。このバグった二人が限界の死線でどんな最適解を弾き出すのか、作者自身もシミュレーションを回すような感覚で書いています。
チートのない血みどろの戦闘がお好きな方は、この先もお付き合いいただけますと幸いです。




