【4】
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
仲間が殺されたことで、残り二頭の瞳に確かな殺意が灯った。
一瞬の躊躇いを振り払うかのように、二頭は左右に広がり、斜め前方から同時に跳躍してくる。
右と左。完璧な連携による同時攻撃。
いくら極限の死地で目が慣れ始めているとはいえ、最弱の俺に、同時に二頭の牙を捌き切るような高度な剣術の技量などあるはずがない。
その場でまともに迎え撃とうとすれば、どれだけ足掻いても必ず死角から喉笛を食いちぎられる。
だから、俺は動いた。
壁を背にしたまま、飛びかかってくる『右側』の一頭に向かって、自ら距離を潰すように右へと鋭くステップを踏み込んだのだ。
あえて右の敵へ向かって動くことで、左から飛び込んでくるもう一頭との間に、右側の魔物自身を「障害物」として挟み込む。
二頭同時の攻撃軸を物理的にズラし、ほんの一瞬だけ、強引に『一対一』の状況を作り出したのだ。
「シィッ!」
右へと踏み込みながら、俺は下段からすくい上げるように鉄剣を一閃する。
右側のブラッドウルフは、獲物が自ら死地に飛び込んでくるとは予測していなかったのだろう。空中に身を躍らせてしまっている魔物に、急な軌道修正などできるはずもない。
ザシュッ!
刃が獣の無防備な首筋を捉え、動脈を深く切り裂いた。
鮮血を撒き散らしながら、右側の魔物が勢いよく床に転がっていく。
その直後――背後で「ガチィッ!」と硬い音が鳴った。
ワンテンポ遅れて左側から襲いかかってきたもう一頭の牙が、さっきまで俺が立っていた空間を空しく噛み鳴らした音だ。俺が右へ移動したことで、左の魔物の攻撃は完全に空を切っていた。
「……ハッ」
荒い息を吐きながら、俺は体勢を立て直す魔物へと剣を向ける。
最初の生還は、ただの捨て身が生んだラッキーでしかなかった。
だが、今は違う。極限状態の中で必死に足掻くうちに、俺の脳と身体は「どう動けば致命傷を避け、敵を殺せるか」という泥臭くも確実な戦闘ロジックを、勝手に組み立て始めていたのだ。
残るは、一対一。
俺は血に塗れた顔を歪め、最後の標的を見据えた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近戦闘シーンを書いていなかったので、ただただ「泥臭い死闘」と「痛みを伴う戦闘」が書きたくて始めました。
高尚なテーマやメッセージ性はありません。死にたがりの男と、後ろから勝手についてきて全回復させてしまう少女。このバグった二人が限界の死線でどんな最適解を弾き出すのか、作者自身もシミュレーションを回すような感覚で書いています。
チートのない血みどろの戦闘がお好きな方は、この先もお付き合いいただけますと幸いです。




