【3】
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それでは、本編をお楽しみください!
岩壁を背に叩きつけられたのは、ただ吹き飛ばされた結果の偶然だ。
だが、その偶然が今の俺にひとつの戦術的な事実をもたらしていた。
背後には、分厚く冷たい岩の壁。
つまり、奴らは俺の背後や側面へ回り込むことができない。どれほど素早く獰猛な魔物であろうと、俺を殺すためには必ず「正面」から飛び込んでくるしかないのだ。
「……前だけ見てりゃいいなら、上等だ」
死の恐怖を捨て去った脳が、極限の集中力で状況を処理していく。
視界を狭め、余計な情報を削ぎ落とす。四方への警戒を完全に放棄し、正面で唸りを上げる三頭のブラッドウルフだけに意識を研ぎ澄ませた。
『グルルルゥッ!』
先陣を切って、一頭が直線的な軌道で跳躍してきた。
さっきまでなら、そのスピードに反応すらできなかっただろう。だが、今は攻撃の軌道が正面のみに限定されている。加えて、俺の目は死線の淵で、このオーバースペックな速度に強制的な「慣れ」を起こし始めていた。
俺は躱さない。防御すらしない。
ただ、己の命と引き換えにするように、飛びかかってくる獣の喉元へ向けて、真っ直ぐに剣を突き出した。
「シィッ!」
ガツンッ! と、凄まじい衝撃。
獣の鋭い牙が、俺の左前腕に深々と食い込んだ。肉が裂け、骨を削る激痛が走る。
だが、同時に――俺の突き出した鉄剣は、ブラッドウルフの開いた口内から脳髄へと狂いなく突き刺さっていた。
「ガ、ァ……ッ」
ビクビクと痙攣し、そのまま絶命する一頭。
相打ち覚悟のカウンター。致命傷を避け、肉を切らせて骨を断つ完全な捨て身の剣撃だ。
「ハァッ……! 次だ、来いッ!」
俺は左腕に噛みついたままの重い死骸を乱暴に振り落とし、間髪入れずに剣を構え直した。
血が滝のように流れ落ちる。だが、視界は奇妙なほどクリアだった。
残り、二頭。
壁に追い詰められているのは俺のはずなのに、敵の目には、俺が底知れぬ狂気を孕んだ化け物のように映っているのかもしれない。獰猛なはずのブラッドウルフの動きに、ほんの一瞬、明らかな「躊躇い」が生じた。
その僅かな隙を、極限状態の俺の感覚が見逃すはずがなかった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近戦闘シーンを書いていなかったので、ただただ「泥臭い死闘」と「痛みを伴う戦闘」が書きたくて始めました。
高尚なテーマやメッセージ性はありません。死にたがりの男と、後ろから勝手についてきて全回復させてしまう少女。このバグった二人が限界の死線でどんな最適解を弾き出すのか、作者自身もシミュレーションを回すような感覚で書いています。
チートのない血みどろの戦闘がお好きな方は、この先もお付き合いいただけますと幸いです。




