【26】
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
魔法も、特殊能力も、小細工も一切ない。
ただ純粋な『剣の技量』のみによる、極限の殺し合いが始まった。
キンッ!! ガガガガギィィィンッ!!!
暗い墓所のような第三層に、火花と甲高い金属音が連続して弾け飛ぶ。
「ハッ、ハハハハッ!!」
俺は笑いながら、雨霰のように剣を振るった。
上段からの振り下ろし、袈裟斬り、下段からのすくい上げ、そして心臓を狙う最短の突き。
俺のオーバースペックな身体が弾き出す、一撃必殺の無駄のない連撃。これまでの魔物なら、最初のひと振りで首が飛んでいたはずの速度だ。
だが、死霊騎士はそのすべてを、ただの一歩も退くことなく弾き返していた。
俺の剣が届く数ミリ手前。常にそこに、大剣の刃か鍔が『置かれている』のだ。
俺の速度に反応しているのではない。俺の肩の入り方、視線、足の踏み込みから、次に剣が来る軌道を完全に『予測』し、あらかじめ防御の壁を構築している。
(なら、これはどうだ……!)
俺は防御されている鉄剣を強引に引き戻し、自らの左胸を大きく開いて無防備に晒した。
相手が大剣を振り下ろしてくる、その軌道にわざと自分から飛び込む。心臓は逸らす。鎖骨から肺にかけてを斬らせて大剣の刃を俺の肉と骨で『固定』し、その隙に相手の首を刎ねる完全な相打ち(カウンター)狙い。
俺の胸めがけて、大剣が音もなく振り下ろされる。
もらった。俺が剣を跳ね上げようとした、その瞬間――。
死霊騎士は、振り下ろしていた大剣の軌道を空中でピタリと止め、そのまま手首を返して刃の『腹』で俺の剣を強烈に弾き叩いた。
「なっ!?」
相打ちすらさせない。俺の捨て身の戦法すらも、この騎士には完全に読まれていた。
弾かれて体勢を崩した俺の顔面へ、死霊騎士は剣ではなく、鋼の『籠手』に包まれた左拳を叩き込んできた。
ゴシャッ!!
「ぐ、ふぁっ……!?」
鼻骨が砕け、視界が白く飛ぶ。
吹き飛ばされ、石畳を無様に転がる俺の背中に、即座にリナの『ヒール』が飛んできた。
「ごほっ、かはっ……!」
治癒の光で砕けた顔面が元に戻る。だが、俺が体勢を立て直すよりも早く、死霊騎士はすでに俺の眼前に立っていた。
大上段に構えられた巨大な剣が、俺を真っ二つに両断せんと振り下ろされる。
「ヒィッ……!」
背後でリナが悲鳴を上げる。
俺は地面を転がりながら、ギリギリでその一撃を回避した。
ズドォォンッ! と、俺が先程までいた石畳が紙くずのように砕け散る。
ただの筋力ではない。体重の乗せ方、剣の落とし方、すべてが理にかなった『武の極致』。
「……ああっ、すげえな、お前」
俺は砕けた石の破片で頬を切り裂かれながらも、歓喜に顔を歪めて立ち上がった。
俺の強さは、所詮「死線を潜り抜けたことによる極端な反射神経と動体視力」でしかない。
だが、目の前の騎士は違う。
生前、何十年、いや何百年と剣を振り続け、血反吐を吐くような修練の果てに辿り着いた『本物の剣士』の姿がそこにあった。
「俺の捨て身のカウンターじゃ、お前の足元にも及ばないってわけか」
死霊騎士は答えない。ただ、青白い眼光を静かに俺に向け、再び無駄のない構えを取る。
「……リナ」
「は、はいっ!」
「魔力、温存しとけよ。ここから先は……さっきまでみたいなチマチマした怪我じゃ済まないぞ」
「わ、わかってます……っ! いつでもいけますから!」
背後のリナの震えながらも力強い声を聞き届け、俺は再び剣を握り直した。
純粋な剣術で、俺は完全に負けている。
このまま戦えば、確実に俺は千切りにされて死ぬだろう。
だが、俺にはもう一つだけ、この死霊騎士にも負けない武器があった。
それは、自分の命に対する『絶対的な無関心』と、背後にいる『最高のヒーラー』だ。
「さあ、第二ラウンドだ」
俺は狂ったように笑いながら、再び死の剣舞が待つ嵐の中へと、自ら歓んで飛び込んでいった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
最近戦闘シーンを書いていなかったので、ただただ「泥臭い死闘」と「痛みを伴う戦闘」が書きたくて始めました。
高尚なテーマやメッセージ性はありません。死にたがりの男と、後ろから勝手についてきて全回復させてしまう少女。このバグった二人が限界の死線でどんな最適解を弾き出すのか、作者自身もシミュレーションを回すような感覚で書いています。
チートのない血みどろの戦闘がお好きな方は、この先もお付き合いいただけますと幸いです。




