↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/25

【15】

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


ギルドの扉が開いた瞬間、むせ返るような濃烈な血の匂いが鼻を突いた。

周囲の冒険者たちが息を呑み、あからさまに道をあける。


そこにいたのは、彼だった。けれど、今日の姿は今までとは比べ物にならないほど凄惨だった。

全身が赤黒く染まり、足を引きずり、壁伝いに歩くことすらやっとの状態。そのまま、いつもの薄暗いテーブルへと倒れ込むように座り込んだ彼を見て、あたしの心臓は跳ね上がった。


「すぐに治癒します……っ! 『ヒール』!!」


あたしは慌てて駆け寄り、両手をかざして全力で治癒魔法を展開した。

温かな光が彼の身体を包み込む。だが、光に照らし出された傷口の有様を見て、あたしは絶句しそうになった。


(ひどい……今回は、今までで一番酷い怪我だ……)

特に酷いのは、左肩から腕にかけてだ。まるで巨大な何かの牙に、生きたまま噛み砕かれたような異常な裂傷。骨まで達しているのがわかる。

さらに、胸部。息をするたびに不自然に胸が上下しており、肋骨が何本も折れて内臓を傷つけているのは明らかだった。


普通の冒険者なら、痛みと出血でとうの昔にショック死しているレベルだ。

一体なにと戦ってきたのだろう。

第一層をうろつくブラッドウルフに、こんな傷を負わせる力はない。もっと巨大で、圧倒的な暴力と質量を持つ何か……想像するだけで身の毛がよだつような化け物だ。


(聞くのは、治癒の後……!)

あたしは湧き上がる疑問と恐怖を強引に振り払い、必死で彼の治癒を続けた。

傷が深すぎるせいで、あたしの体内から普段の倍以上の魔力がものすごい勢いで吸い取られていく。額にじっとりと汗が浮かび、魔力枯渇の予兆で視界がぐらぐらと揺れ始めた。


けれど、絶対に手は止めない。

時間がかかっても、なんとかしなくては。ここで少しでも気を抜けば、彼が死んでしまう。


「……お願い、繋がって……っ!」


祈るような気持ちで、残りの魔力をすべて患部へと注ぎ込む。

砕けた肋骨がミシミシと音を立てて本来の位置へと戻り、左肩の凄惨な肉の裂け目が徐々に塞がり、新しい皮膚が覆い被さっていく。

どれだけの時間が経っただろうか。


「……はぁっ、ふぅ……っ」


すべての傷が完全に塞がったのを確認し、あたしは膝から崩れ落ちそうになるのをテーブルに手をついて必死に堪え、荒い息を吐き出した。

身体の奥が空っぽになったような強い疲労感。けれど、彼の呼吸は落ち着き、顔色も少しだけ戻っていた。


彼もまた、ゆっくりと一つ大きな溜め息をつき、静かに目を開けた。

そして無言のまま懐を探ると、いつものようにテーブルの上に報酬を置いた。

だが、その日そこに置かれたのは、いつもの小さな魔石ではなかった。大人の拳ほどもある、黒ずんだ禍々しい光を放つ異様な魔石が二つ。

その異様さに背筋を寒くしながらも、あたしはずっと堪えていた疑問を、恐る恐る口にした。


「あの……今日、一体なにと戦ってきたんですか……? その怪我、絶対に第一層の魔物じゃありませんよね……?」


最後までお読みいただきありがとうございます。


最近戦闘シーンを書いていなかったので、ただただ「泥臭い死闘」と「痛みを伴う戦闘」が書きたくて始めました。


高尚なテーマやメッセージ性はありません。死にたがりの男と、後ろから勝手についてきて全回復させてしまう少女。このバグった二人が限界の死線でどんな最適解を弾き出すのか、作者自身もシミュレーションを回すような感覚で書いています。


チートのない血みどろの戦闘がお好きな方は、この先もお付き合いいただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。