●出発、風が来たりて
躁状態が出てからのKの様子は、K自身が書いた詩編によく表れているのでそのまま記そう。
詩編『出発』
12月5日。混乱のあまり、時間の感覚を喪失しやすい、ため、日付を入れる。
人間の心的力動性にも、アインシュタインの時空間の理論は応用できるだろう。
電車のホームで強く思う。
もっと いろんなところへ出かけよう。
同じ景色ばかり見ていたら発展がない
だいじょうぶ 透き通った空が抱えていてくれる
この1年の木々の 枯れていく葉模様が、黒い点滅を施術されつつ、デジタル細工で散り墜ちて。
背後の晴れわたる空に、その背中を支えられて。
目の前の高校生の カップルたちの おしゃべりが思考をさえぎる。他の席に行ってくれればいいのに。邪魔くさい。
でも FFS理論が正しいのも事実だろう。ストレスの後に創発が来る。矛盾が人という集団を動かすパワーになる。
争いは好きじゃない、疲れるだけだ。でも やはり火花を散らして生きるしかないのだろう。
なぜなら、それが自分の欲望だから。
海へ行こう。
辛辣化するこの性格のなぐさめになれば。さざ波がきらめく砂浜へ。
高層ビルや低い建物たち、残された森もすべてが倒壊していく。光の足に踏みつぶされろ。暴力の嵐のあとに、新しい音階がひとつずつ ポツリ ポツリ 現れるだろう。
遺伝子のシャッフルが
まち遠しいときを 待ちわびる
その後、ある人物から紹介された福島章著の「天才:創造のパトグラフィー」を読んでから暴躁に近い軽躁状態が表れたことが、その後のKの生き方を変えた。
詩編『パトグラフィー』
○○ ○○○様
先日、ご紹介いただいた『天才:創造のパトグラフィー』、まだ途中ですが、少し読みました。
創造性の秘密を、科学的に分析し解き明かす時が、いつの日かやってくるでしょう。
その試みは、いずれ人類に、心身が潜在的にもつ能力を引き出す方法を発見させ、伝搬することになり、その能力を欲する人が殺到するでしょう。
しかし、天才数学者たちの人生や葛藤・苦しみ・喜びを生きたドラマとして描いたE・T・ベルの『数学をつくった人々』を読んでいただければわかりますが、たいていの天才は生きている間は不幸の連続を経験しています。
そして、その不幸から脱出するために創造性の火花を散らすことによって、少しでも幸せを感じたいと願うのです。
これを実行するためには、強靭な忍耐力・集中力を必要とします。
幸せな人間には、創造性を産み出す力がありません。
真の天才は、自分を天才だとは思っていません。晩年にニュートンが語ったように、海辺で戯れる子どもが、巨人の肩に乗って遠くを見たのです。ただそれだけなのです。
それに、複雑な理論を展開せずとも、創造性の秘密なら、有名なランボーの『見者の手紙』に簡潔に書いてあります。
これを読んで、見者がどのような存在かわからなかったり曲解したりする人は、精神的に盲目な方だと言わざるを得ません。
書いてある通りに理解するしかないのですから。
人によっては、ランボーが実践したことを、自分でやろうとすることに畏怖や恐怖を覚え、ランボーを精神異常者呼ばわりするでしょう。
しかし、そのような人は、フロンティア・スピリッツを持たない現状に固執する老人と同じです。
未知の領域に挑戦することについて語る何らの資格もないのです。
わたしは、ちょっと変わっているだけの凡人ですが、こう思うのです。
昔、流行った音楽に"ハイウェイ・スター"という曲があります。
これは公道をバイクで爆走する若者たちの心情を、見事に歌いきった作品です。
一心不乱に前の一点を凝視し素早く判断し、極限のスピードを追い求めることに、命を燃やし、命を削るのです。
創造性を高める人は、アルキメデスやレオナルド・ダ・ヴィンチがやったように、これを肉体ではなく精神で行うのです。
アインシュタインは、宇宙飛行士の体験をしているわけではないのに、宇宙信仰と呼べるような対象を見いだし、悪魔の秘密が知りたいと言った。
ゴッホは、光の影響を受けて、この虚空の中から、たびたび現れる精霊を見ながら絵を描き続けて、錯乱をきたしてピストル自殺をした。
わたしは、末路がわかっていても、ファウストになりたい
そのために、命を落とすことになっても構わない
わたしは、世界の縁を歩き続けたい
平面世界のことは平面世界の住民より、人間が覗き込んだほうが理解できる。
この世に紛れながら、どの国にもどの民族にも属さない異邦人なら、この世のことを理解できるようになるだろう
それが確証のない信念であったとしても、そう信じられる
そんな希望を持っているだけなのに、人の集団は、人の社会は、そのような存在を援助しないばかりか、抹消したいとさえ願うのだ。
嫌な存在だと感じているのに、その成果だけは搾取して、あとはゴミ箱に捨てたいのだ。
精神的な居場所は、ここにはない
どんな獣よりも貪欲な生き物、社会と呼ばれる生き物
何も悪いことなんかしていない
世界の縁を歩き続けたい
ただそれだけのことなのに、それさえも許してくれない社会なら滅んでしまえ
自分は神ではないけれど、
神はいつでも悪魔になることができるんだ、
それを知らない愚者の楽園のために 原子核の花を咲かせてやりたい
星を降らせる子どもたちを集めれば そんなことをするのは造作もないことを思い知るがいい




