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聴雨譚  作者: 木逸昼寝
15/25

雨注

 

 

 いきおい美緒に今日起こった奇妙な話を伝えようか、しかし何と書く?見知らぬ誰かからたった一行書かれた手紙が届いたが、引き出しにしまったらそのまま消えてしまったとでも?挙げ句それは全て己の勘違い、若しくは妄想だったのかもしれないけれど どういう事だと思う?とでも書いたらいいのだろうか。


 「本当にごめん またLINEするね」

 「おっけーい」


スマートフォンのひかりが眩しい。


 そもそも送り主が誰であろうとも「手紙が届き、それが室内で紛失した」程度のことは怪談話にもなりはしない。無職で引きこもり、他者とあまりにもコミュニケーションを取らぬままに日々を過ごしているうちに脳みその按配がよろしくなく、ちょっとした幻覚か勘違いでも起きてしまったのか 私って頭おかしくなってたのかな 程度の笑い話に時間が経ったのち酒の肴程度、俎上に上げるぐらいの事でいいではないか。


 まだ飽き足らず降り続ける雨を追い出し、カーテンをしめる。

 確かに先程までこの手に置かれた手紙は感触として手とこの瞳に染み付いている。


 ベッドの端に座り直しスマートフォンのTwitterアイコンに触れ、実際の友人や知人達とは一切繋がっていない方の裏アカウントへ切り替える。瑣末な日常や愚痴、誰かに聞いて欲しくとも実際話すまでもない事ばかりを吐き出しているゴミ箱のようなもの、フォローしているのは高校の頃に好きだったバンドのボーカルや当たると評判の占い師を数名、リツイートするとあぶく銭を気前よくばら撒いてくれる大金持ちの男など本アカでは気恥ずかしくフォローしている事を表に出せない、かおりの生活とは全く無縁の向こう側の人間のものばかりだ。そしてかおりをどう言った経緯でかフォローしているのはFXがどうだとか何かの商材を売りつけようとするいかがわしいものや、胸を強調し曝け出した写真をアイコンに使用しているどれもスパムのようなフォロワーばかり、鍵をかけるまでもなく、誰も匿名であるかおりのつぶやきには興味を示さない面々である。





 

 

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