第2話「あわわ!? 二人きりは聞いてないですぅ…!」
――静かだ。
昼休み。
さっきまで騒がしかった教室は、嘘みたいに人がいなくなっていた。
(……なんでだ?)
俺は、ぼんやりと辺りを見渡す。
和泉はどこかに行った。
芽衣咲もいない。
時雨は……たぶん誰かに連れて行かれた。
そして――
「……あわわ」
目の前には、桜森未珠。
(……なんで二人きりなんだよ)
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「え、えっと……」
未珠はそわそわしながら、弁当箱を抱えている。
「き、今日のお昼……その……」
顔が赤い。
めちゃくちゃ赤い。
「よ、よかったら……一緒に……あわわ!」
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(……これ、断れる空気か?)
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「……いいよ」
そう言うと。
「ほんとですか!?やったぁ……あわわ!」
一瞬で笑顔になる。
……分かりやすいな、この子。
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二人で席に座る。
弁当を開く音だけが、やけに大きく聞こえる。
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「す、すみません……急に……」
「いや、別にいいけど」
「その……ひ、一人で食べるの寂しくて……あわわ」
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(……可愛いな)
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「じゃあ俺も助かった」
「えっ?」
「ちょうど一人だったし」
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「……」
未珠が、少しだけ固まる。
そして。
「……えへへ」
小さく笑った。
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(なんだ今の)
ちょっと、ドキッとした。
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「そ、それで……これ……!」
未珠が弁当箱を差し出す。
「よかったら……食べてください……!」
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「え、いいのか?」
「はいっ!一生懸命作ったので……あわわ!」
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(手作り……?)
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一口食べる。
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「……うまい」
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「ほ、本当ですか!?よかったぁ……!」
目をキラキラさせる未珠。
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「料理、得意なのか?」
「い、いえ……まだまだです……!あわわ!」
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(いや、普通に上手いだろ)
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その時。
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「……あ?」
窓の外から、妙な音。
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ガタッ
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「ひゃっ!?」
未珠がビクッとする。
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見ると。
校庭で、何か揉めている。
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「……ちょっと見てくる」
「えっ!?ま、待ってください……!」
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二人で窓の近くへ。
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そこには――
上級生らしき数人と、誰かが言い争っていた。
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「……面倒そうだな」
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関わる気はなかった。
だが。
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「……あの人、困ってます……!」
未珠の声。
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その表情は、さっきまでと違っていた。
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「……助けたいのか?」
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「……はい」
小さく頷く。
でも――
手は震えている。
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(……この子)
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怖いのに。
それでも、見て見ぬふりができない。
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「……分かった」
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「えっ?」
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「行くぞ」
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「えぇっ!?あ、あわわ!?」
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俺は立ち上がる。
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「こういうのは、早い方がいい」
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「で、でも……!」
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「大丈夫だ」
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振り返る。
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「一人じゃないだろ?」
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「……!」
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未珠の目が、少しだけ大きくなる。
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「……はいっ!」
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二人で、教室を飛び出した。
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癒し系ヒロイン
でも、優しさは本物
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怖くても、踏み出す
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それを支える主人公
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(これは――)
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ただの“ほんわか日常”じゃない。
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ちょっとだけ、心が動く物語
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(続く)




