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前線からの手紙

王城の朝。


調律所の扉がノックされた。


「失礼します」


入ってきたのは城の兵士だった。


「ユウト殿に手紙が届いています」


ミリアが首をかしげる。


「手紙?」


兵士は一通の封筒を差し出した。


「前線の部隊からです」


ユウトは封を見た。


そこには名前が書かれている。


[アンダーソン]


「……あいつか」


リュウが言った。


「無事みたいだな」


ユウトは封を開ける。


中には少し荒い字で書かれた手紙。


ユウトは声に出して読んだ。


―――――――――――――――

『ユウト殿


前線のアンダーソンです。


まず最初に伝えたいことがあります。


帰還の棒と帰還の珠。


あれは本当に役立っています。


行軍のあと

兵士たちは必ず棒を転がします。


最初は皆、半信半疑でした。


しかし今では

誰もが袋に入れて持ち歩いています。


脚の疲れが違います。


夜の見張りも楽になりました。


兵士たちの間では


「帰ってくる道具」


と呼ばれています。


これは本当にありがたいことです。』

―――――――――――――――


ミリアが嬉しそうに言った。


「広まってるんですね」


ユウトも少し笑った。


「よかった」


ユウトは続きを読む。


―――――――――――――――

『それともう一つ。


少し妙なことがありました。


先日の小さな戦闘で


敵兵が棒のような物を持っていました。


形は……帰還の棒に似ています。


戦闘中に落としそうになり


かなり慌てて拾っていました。


もしかすると


敵もこの道具を使っているのかもしれません。


もしそうなら


戦場では少し不思議な光景になります。


敵も味方も


棒を転がしているわけですから。


それでも私は思います。


兵士の身体が壊れないなら


それは悪いことではありません。』

―――――――――――――――


リュウが吹き出した。


「敵も棒使ってるのか」


ミリアも笑った。


「ちょっと想像すると面白いですね」


ユウトは手紙の最後を読む。


―――――――――――――――

『この道具のおかげで


兵士の動きは確実に良くなっています。


もし新しい使い方があれば


ぜひ教えてください。


前線でも試してみます。


アンダーソン』

―――――――――――――――


手紙を読み終える。


しばらく静かな時間が流れた。


ミリアが言う。


「前線で役に立ってるんですね」


ユウトは頷いた。


「うん」


リュウが腕を組む。


「敵も使ってるのは笑えるが」


「まあ悪いことじゃない」


ユウトは少し考えた。


そして言う。


「新しい使い方」


紙を取り出す。


「いくつか思いつく」


ミリアが目を輝かせる。


「本当ですか?」


ユウトは頷いた。


「戦場は体を酷使する」


「だから」


紙に図を描く。


「肩用」


「背中用」


「手のひら用」


リュウが言った。


「道具が増えそうだな」


ユウトは笑った。


「人の体って」


「場所ごとにケアの方法が違うからね」


ミリアが言った。


「じゃあ返事を書きましょう」


ユウトは頷いた。


「うん」


紙を広げる。


前線の兵士たちへ。


新しいケア方法を書き始めた。


遠く離れた戦場では。


その頃アンダーソンが

夜の焚き火の横で言っていた。


「棒を出せ」


兵士たちが腰袋から取り出す。


コロ……


コロ……


その少し離れた場所では。


敵軍の兵士たちも。


コロ……


コロ……


知らないうちに。


戦場の両側で


同じ文化が広がり始めていた。

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