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魔道具棒部隊 誕生

作戦室には隊長、副官、数名の兵士が集まっていた。


机の上には――

あの木の棒が置かれている。


隊長がそれを手に取る。


「魔導士が再現した魔道具」


副官が頷く。


「王国兵が使っていた秘密兵器」


兵士の一人が言う。


「試した者は皆、脚の軽さを感じています」


隊長は静かに棒を見つめた。


「ならば使わぬ理由はない」


副官が一歩前に出る。


「提案があります」


隊長が視線を向ける。


「言え」


「この道具を扱う専門部隊を作るべきです」


兵士たちがざわめく。


「魔道具を運用する部隊」


副官の声は真剣だった。


「名付けて――」


「魔道具棒部隊」


一瞬の静寂。


そして兵士が力強く言った。


「いい名前です!」


別の兵士も頷く。


「王国の秘密兵器に対抗する部隊」


隊長は少し考えたあと言った。


「よし」


「作れ」


その日の午後。


砦の中庭。


二十人の兵士が整列していた。


副官が宣言する。


「本日より諸君は魔道具棒部隊である!」


兵士たちは胸を張る。


「はい!」


棒が配られる。


隊長が言う。


「この道具は王国の秘密兵器」


「扱いを誤るな」


兵士たちは慎重に棒を受け取る。

まるで聖剣でも扱うように。


副官が続ける。


「使用方法は確認済みだ」


「足に当てて転がす」


兵士たちは真剣に頷く。


そして一斉に――


コロ……


コロ……


足裏に棒を転がす。


数秒後。


一人の兵士が言った。


「……軽い」


別の兵士。


「本当だ」


「脚が楽だ」


副官が腕を組む。


「やはり魔道具」


隊長も頷いた。


「恐るべき王国の技術」


その頃。


研究室では魔導士が窓の外を見ていた。


兵士たちが棒を転がしている。


(……完全に広まってしまった)


魔導士は小さくため息をついた。



―――その夜。


研究室。


机の上には棒と木の球。


魔導士は椅子に座り

足の裏で棒を転がしていた。


コロ……


コロ……


「……ふむ」


同じ場所を転がすと

同じように楽になる。


魔導士は球を手に取る。


背中と壁の間に置く。


ぐり。


「……なるほど」


彼は紙に何かを書き始めた。


人の体の図。

筋肉の線。


そしてもう一つ。


細い線のようなもの。


魔導士はそれを見ながら呟く。


「やはり……」


彼は古い記憶を思い出していた。


若い頃。


魔法研究のために

古文書を読み漁っていた時のこと。


その中に――


「人体の内を巡る細き道」


という奇妙な記述があった。


当時の魔導士たちは

ほとんど相手にしなかった。


魔法とは関係が薄いからだ。


だが彼は覚えていた。


その文書にはこう書かれていた。


「身体の奥には触れれば響く道がある」


「そこを押せば力が緩む」


魔導士は棒を見る。


「……まさか」


彼は再び棒を脚に当てる。


コロ……


そして球を腰に当てる。


ぐり。


筋肉が緩む。


魔導士は小さく笑った。


「魔法ではない」


紙に書く。


「筋肉の緊張」


「血の巡り」


「人体の反応」


そして小さく付け足す。


「古文書に記された“身体の道”と一致」


魔導士は椅子にもたれた。


「つまりこれは」


棒を持ち上げる。


「魔道具ではなく」


少し笑う。


「人体の仕組みを利用した道具」


窓の外を見る。


兵士たちはまだ真剣に棒を転がしている。


コロ……


コロ……


魔導士は思った。


(王国には、この仕組みに気づいた者がいる)


それは魔法ではない。


だが。


「非常に合理的だ」


魔導士は呟いた。


「賢い」


しかし同時に思う。


(だが今これを言ったら)

(あの連中は)

(絶対信じない)


外では副官の声が響く。


「もっと集中しろ!」


「それは王国の魔道具だぞ!」


兵士たちが真剣に棒を転がす。


魔導士は机に棒を置いた。


「……まあ」


コロ。


自分でも少し転がす。


「気持ちはいい」

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