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鍛冶屋との再会 ―「持ち歩ける癒し道具」を

翌日。


ユウト、リュウ、ミリアの三人は、城下の鍛冶屋を再び訪れていた。


火花が散り、鉄を打つ音が響き渡る。

だが、以前よりも緊張はない。


鍛冶屋は大きな鉄槌を置き、顔を上げた。


「おう。

城の“癒し屋”さんじゃねぇか。

今日は何の相談だ?」


ユウトは笑って頭を下げた。


「今回は――

“旅先で体を楽にする道具”を作りたいんです」



鍛冶屋の隅に腰を下ろし、

ユウトは昨日の出来事を話した。


遠征。

長時間の行軍。

緊張で固くなる体。


そして――兵士たちの静かな悩み。


話を聞いていた鍛冶屋は、

腕を組み、ふっと真顔になる。


「前線はな……

帰ってこられねぇ奴もいる」


「……」


「せめて“壊れずに帰れる道具”か。

悪くねぇ相談だ」


その声には、

戦地へ武具を届けてきた者だけが持つ重みがあった。



その時――


「失礼します!」


鍛冶屋の扉が開き、

昨日の兵士代表が姿を現した。


「あ、アンダーソンさん」


ミリアが微笑む。


(アンダーソン……

ストレッチ好きそうな名前だな)


――心の中でユウトは思った。


アンダーソンは敬礼し、軽く息を整えた。


「ユウト殿。

昨日はありがとうございました」


「こちらこそ。

丁度いいタイミングだね。

今、その相談の延長で――」


「兵士のための道具を考えている」


リュウが短く補足すると、

アンダーソンの瞳が強く光った。


「……本当ですか」



鍛冶屋の作業台に、

丸めた木棒や金属片が並べられる。


「候補は――

背中や脚を押したり転がしたりできる形がいい」


ユウトは図を描きながら説明する。


「・軽い

・壊れにくい

・装備の邪魔にならない

・使い方が簡単」


「贅沢な条件だな」


鍛冶屋は笑いながらも、

すでに試作の構想を練っていた。


「丸い棒を短く切るってのはどうだ?」


「いいですね!」


ミリアの声が弾む。


「脚の下に置いて、

転がすように動かすと――

固まったところが、少しずつほぐれるはずです」


「棒一本で、そこまで出来るのか」


アンダーソンは感心したように呟いた。


「素材は木で十分だな。

軽いし、加工も早い」


鍛冶屋は木材を取り出し、

手際よく形を整えていく。


削り、磨き、滑らかに。


あっという間に――

掌に収まる円柱が出来上がった。


「ほらよ。

転がして使う棒の一本目だ」


「ありがとうございます!」


ユウトは地面に棒を置き、

土踏まずに軽く当てて――


コロコロ……


「……おぉ……」


自然に声が漏れた。


「じわっと効くね、これ」


アンダーソンも恐る恐る試す。


コロ……


「…………」


「どう?」


「……すみません」


彼は深々と頭を下げた。


「少し……涙が出そうです」


兵士仲間も静かになる。


「遠征先で、

体が石みたいに固まっても……

これがあれば――

少しは楽になれる」


それは強さではなく、

弱さを正直に吐き出した言葉だった。


ユウトは優しく言う。


「これは、戦うためじゃない。

帰ってくるための道具だよ」


鍛冶屋が笑った。


「ならこれは――

“帰還の棒”だな」


「いい名前!」


ミリアが嬉しそうに笑う。


リュウも静かに頷いた。


「壊れず、迷わず、戻るための道具か」


アンダーソンは胸に棒を抱いた。


「必ず、仲間にも伝えます」



帰り道。


ユウトは空を見上げながら考える。


(棒の長さを変えれば、背中にも

小型化すれば、指先にも)


(いろんな形が作れる――)


「ユウトさん」


ミリアが横で微笑んだ。


「なんだか、

“癒しの道具屋さん”にもなれそうですね」


「はは、それは大げさだよ」


でも――少し嬉しかった。



調律所。


木の棒を見つめながら、

ユウトはぽつりと呟いた。


「これで――

一人でも多く帰ってこられたらいいな」


リュウが隣で言う。


「帰ってくる先を、俺たちが守る」


「うん」


ミリアも静かに頷いた。


「帰ってくる人の心が

少しでも軽くなる場所を、ですね」


三人の視線は同じ場所を見ていた。


――薬湯。


――サウナ。


――祈りの絵。


そこはもう、

ただの施設ではない。


“帰る場所”


そう呼ぶにふさわしい空気が、

静かに形作られていた。

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