調律所オープン初日 ― 大混雑、大混乱
――その日、王城は朝から異様な熱気に包まれていた。
「ここが……新しくできた“調律所”か!」
「昨日から並んでるんだぞ!」
「肩の重りが限界なんだ、早くしてくれ!」
「腰!腰が折れそうだ!!」
王城の一角。
改装されたばかりの広い部屋の前には、信じられないほどの行列ができていた。
「……想像はしてたけど」
ユウトは列の先頭から最後尾を見渡し、乾いた笑いを浮かべる。
「これは想像超えてるな」
「完全に城の半分集まってるだろ……」
「それは大袈裟だけど、そう言いたくなるくらいだな……」
リュウは腕を組み、遠い目をした。
「え、え、えっ!?
ちょっと待ってください!?これ全部、調律所のお客さんですか!?」
ミリアは口をぱくぱくさせながら叫ぶ。
「開く前からこんなに来るなんて聞いてませんよぉぉ!!」
「聞いてたら開けなかっただろ?」
「それはそうですけどぉ!!」
王の命で配置された近衛兵が声を張り上げる。
「本日より、王城調律所を開所する!
押すな!走るな!一人ずつ入れ!」
――が、次の瞬間。
「今だ!一番乗りだ!」
「どけ!俺の肩が先だ!」
「順番を守れぇぇ!!」
「ちょ、ちょっと待て!入口が壊れる!」
ドンッ!!
扉が揺れ、ミリアが悲鳴を上げた。
「ひゃぁぁぁ!?と、扉が怒ってますぅぅ!!」
「扉は怒らない!」
ユウトは即座に判断した。
「ダメだ、このままじゃ怪我人が出る!
リュウ、動線作るぞ!」
「了解!」
リュウが前に出て、落ち着いた声で叫ぶ。
「いいか!
中に入れるのは三人までだ!
重い不調の者から順に入れ!
順番を守らないやつは後回しにする!」
暗殺者見習いだったとは思えないほど、場を制圧する声だった。
ざわめきが、徐々に静まっていく。
「……よし。
ミリア、受付頼めるか?」
「えっ!?わ、私ですか!?
む、無理ですってぇぇ!!」
「大丈夫。名前聞いて、つらい場所聞くだけでいい」
「うぅ……が、がんばります……!」
こうして、調律所の初日は半ば強行突破で始まった。




