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『調律所』爆誕

ミリアが初めて兵士の炎症を冷やし、

涙ながらに「役に立てた」ことを喜んだ翌日。


王城全体に、ある噂が爆発的に広まっていた。

「触る男」「針の男」「弱い魔法の女」が、人々の不調を祓っているらしいと


王城の廊下では兵士や文官たちが口々に話す。


「昨日、腕が上がらなかった兵士が腕を大きく振り回して走ってたぞ」

「ずっと腰痛だった騎士が“踊れそうだ”と言っていた」

「調理係は両手で鍋を操るようになっていたぞ」

「弱い魔法使いの子が治療を?本当か?」

「その弱さがいいらしい……よくわからんが」


もはや噂ではない。

王城が揺れるほどの大評判 になっていた。


三人が医務室で後片付けをしていると、

甲冑の音を響かせながら王直属の近衛兵がやってきた。


「ユウト殿、リュウ殿、ミリア殿。

 陛下がお呼びです」


「えっ、三人まとめて?」


「これは……もしかするとなにかやらかしましたか……?」


ミリアが小声で震える。


「大丈夫だよミリア。悪いことはしてないって」


「でも突然なんだろうな……?」



三人は謁見の間へ向かった。

玉座の前に並んだ三人を、王は深く見つめた。


「そなたたち三人の名は、今や城内で知らぬ者がいないほどだ」


ミリアがびくっと震える。


「……わ、悪い意味じゃないですよね?」


「良い意味だ。民の不調を軽くし、

 王城内の働き手が動けるようになったと聞く。

 国の力が戻りつつある」


ユウトとリュウもほっと胸をなでおろす。


「そこで――余は決断した」


王は身を乗り出した。


「ユウト、リュウ、ミリア。

 そなたたち三人を、王城直属の“調律所”として正式に任命する。」


「ち、調律所……?」


「そなたたちの技は魔法でも呪術でもない。

 しかし確かに人の身体を“整える”。

 古文書には“身体を調律し万全とする技”と記されていた。

 ゆえに、“調律所(ちょうりつしょ)”と名づけた」


ユウトは思わず息を呑んだ。


(……王がここまで理解してくれるなんて)


「場所については、医務室の隣に大きな部屋を改装中だ。

 そなたたち三人のための“技を使う場”となる」


「ほ、本当に!?」


ミリアが飛び跳ねる。


「すごいよ、ユウトさん!リュウさん!

 私たち、王城公式の場所を持てるんですよ!!?」


リュウは照れ隠しのようにそっぽを向いた。


「……まあ、悪くはないな。

 これで怪しい奴扱いされなくなるわけだし」


「最初に捕まってたのは俺たちだったからね……」


「それを言うな」


王は、三人に向かって静かに告げた。


「この国の兵は、長年“魔女の呪い”だと思い込んでいた不調に縛られていた。

 そなたたちの技は、それを打ち破る光明となる」


「光明……!」


「そなたたちの働きは、軍だけでなく民まで救うだろう。

 健康な民が増えれば国は豊かになる。

 この国の未来は、そなたたちにかかっておるのだ」


三人は言葉を失った。


そして、王は続ける。


「ただし――」


きゅっと空気が締まる。


「そなたたちの技を良く思わぬ者もいる。

 神殿の神官、宮廷医師、学者……

 “自分の領域を奪われる”と恐れるものも現れるだろう」


ユウトは短く息を飲んだ。


「……覚悟しておきます」


「うむ。しかし、余がそなたたちを守る。安心して技を広めよ」


三人は深く頭を下げた。


「ありがとうございます、陛下!」



謁見が終わり廊下に出ると、

ミリアはその場で大ジャンプした。


「やったぁぁーーー!!

 私たち、“調律所”なんですよ!?すごいすごいすごい!」


「落ち着けミリア。跳ねすぎて転ぶぞ」


「転びません!今日は絶対に……わーーーー!!」


「ほら転んだ」


ユウトは笑いながら手を貸す。


「でもミリア。本当にすごいことなんだよ。

 王城で正式に場所が与えられるなんて」


「ううぅ……!がんばります……がんばりますぅ……!」


ミリアの目にはまた涙。


リュウは肩をすくめる。


「泣き虫だな……でもまあ、嫌いじゃない」


「そ、そんな……照れます……!」


「照れてる場合じゃないでしょ!」


三人の軽口が、廊下に響く。


そして―


こうして、王城に“調律所(ちょうりつしょ)”が誕生した。


ユウト、リュウ、ミリア。

三人は正式に王国の一部となり、

これから世界を変える大きな役割を背負っていく。

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