ミリア、初めての練習 。 弱すぎる魔法に光が差す
ユウトとリュウが朝から何十人も相手をしてクタクタになった頃。
医務室はようやく少しだけ静かになった。
そこへミリアがおどおどと入ってくる。
「お、おはようございます…」
「もう夕方だぞ、どうしたんだよ」
「魔力の調整をするために集中しようと……したんですけど……気が付いたら寝てて……」
「全く集中出来てないじゃないか」
相変わらずポンコツである。
だがミリアは胸を張る。
「私の魔法、役に立つなら……
ちゃんと練習したいんですっ!」
ユウトはうなずき、
ミリアを医務室の中央にあるスペースへ案内した。
「よし、じゃあまず“温める魔法(火)”から練習してみよう」
「はいっ!!火魔法、得意ではないですが……燃やす気持ちで頑張ります!」
「燃やすのはダメ」
「ひゃいっ!」
「じゃあミリア。軽く火を出してみて?」
「いきます!《ファイア……ぽっ》!」
ポッ……
ろうそく程度の小さな火が指先に灯る。
「……弱いな」
「弱いんです!!」
ミリアは泣きそうになりながら言う。
だがユウトは逆に感心していた。
「いや、このくらいでちょうどいいんだよ。
温熱療法って、熱すぎると逆効果だし」
「じゃあ……私でも……?」
「むしろ強すぎる火だと危険だから、ミリアの火は安全なんだ」
ミリアはぱあっと輝く。
「わ、私の弱さ……役に立つんですかっ!?」
「立つどころか、理想的だよ」
リュウがぼそっと呟く。
「……すごいなユウト。弱点を長所に変えるのうまいな」
「事実だからね?」
「じゃあ次は冷気魔法だな」
「はいっ!《アイスブリーズ!》」
ひゅるる……
ミリアの手のひらから、氷にはならないが
ひんやりした風が吹き出した。
「これ……炎症を冷やすのに使えるな」
「えっ!?これただの冷たい風ですよ!?」
「それがいいんだよミリア。
凍らないけど冷えるなら、安全に効果を出せる」
「私、ずっと“弱すぎる魔法”って言われてて……
むしろ役に立つって初めて言われました……!」
ミリアはうるうる目で喜ぶ。
「じゃあ最後。雷魔法」
「い、いきます……!
《ライトニング!》」
ミリアの指先から、
まるで静電気のような パチッ という弱い雷が出た。
「……弱いな」
「弱いんですーー!!」
しかしユウトはニッと笑う。
「弱いのが最高なんだよなぁ」
「え、ええぇぇっ!?!?!?!?」
「強い電気は危ないけど、
このくらいなら筋肉を刺激するのにちょうどいい」
「筋肉……刺激……?」
「うん、緊張した筋肉を軽くゆるめる方法としてはぴったりだよ」
リュウも腕を組みながらうなずく。
「これなら俺の針と合わせて使えそうだな」
「私……ほんとに役に立つんですか……?」
ミリアは両手を胸に当て、震える声で問う。
「役に立つよ。安心して」
ユウトの言葉に、ミリアは胸いっぱいに息を吸って――
「がんばりますっ!! ぜったい、頑張ります!!」
と、いつもの元気で宣言した。
練習を終えた頃。
医務室の外で、ひとりの兵士が呻いていた。
「うぅ……腕が熱を持って……剣を振りすぎたか……?」
ユウトは兵士の腕を見て、すぐに判断した。
「炎症だ。冷やせばすぐ楽になるな」
そしてミリアを見る。
「ミリア、やってみるか? 冷気の魔法で」
「えっ……わ、わたしが!?
し、失敗したらどうしよう……!」
「大丈夫。やってみなよ。
俺がそばにいる」
ミリアは大きく深呼吸をした。
「……は、はいっ!」
ミリアは兵士の腕に手をかざし――
「《アイスブリーズ!》」
ひゅううぅぅ……
強すぎず、弱すぎず、
ちょうど心地よい冷気が兵士の炎症部にふわりと触れる。
「お……? おお……?
熱が……引いていく……!?
痛みも……軽く……!?」
兵士は驚きながら腕を動かし始めた。
「こ、これは……呪いが……溶けていくようだ……!」
「呪いじゃないんだけどね……!」
ユウトが小声で突っ込む。
ミリアは兵士の喜ぶ顔を見て、ぽろぽろと涙をこぼす。
「わ、私……
わたし……初めて……
誰かの役に立てた……!」
ユウトとリュウは目を合わせ、静かに頷く。
「ミリア。君の魔法は“弱い”んじゃない。
――“優しい”んだよ」
「ひうっ……!うえぇぇん……!!」
ミリアは泣きながらユウトの腕にしがみついた。
「な、泣くなって!?」
「だってぇぇぇぇ……!」
リュウは苦笑しながら言った。
「よし、これで三人とも正式に戦力だな」
こうして、
ミリアは自分の“弱い魔法”で初めて人を助けることに成功した。
この日を境に、
三人は王国でも噂の “救いの三術士” と呼ばれるようになる。




