第49話
翌日の放課後。
「……それで、今日はどうするんだ?」
駅前の公園で、一陽は隣に立つ玲奈に尋ねた。
玲奈は落ち着かない様子で、何度もスマートフォンの画面を確認している。
「どうするって、昨日の続きだよ。千景と話す」
「ちゃんと話せそうか?」
「……分かんねえ。でも、逃げるわけにもいかねえだろ」
そう言って笑おうとした玲奈の顔は、少しも笑えていなかった。
一陽はそれ以上、無理に励まそうとはしなかった。
「まあ、俺は隣にいるから。言いたいことを言えばいいよ」
「……簡単に言うなあ、パイセンは」
「簡単じゃないから、隣にいるんだろ」
「……っ」
玲奈は一瞬だけ目を丸くした。
それから、誤魔化すように一陽の背中を軽く叩いた。
「そ、そういう恥ずかしいこと、さらっと言うなよ!」
「何が?」
「何でもねえ!」
「……?」
一陽が首を傾げる。
玲奈は赤くなった顔を隠すように歩き出した。
そんな二人のやり取りを、少し離れた場所から見ている人物がいた。
上里千景だった。
その表情には、複雑な感情が浮かんでいた。
昨日の玲奈の様子。そして、隣にいる男。
千景には、どうしても納得できないことがあった。
自分たちと過ごした時間を、玲奈は本当にあっさり捨ててしまえるのだろうか。
それとも、この男がいるから、もう自分たちは必要なくなったのだろうか。
そんな考えが、頭から離れなかった。
*
「……来たね」
駐車場に着くと、千景が待っていた。
その後ろには、昨日よりも多くのメンバーが集まっている。榛名真琴の姿もあった。
「……千景」
玲奈が一歩前に出る。
「昨日は、悪かった。何も言わずにいなくなったのは、あたしが悪かったと思ってる」
「だったら、戻ってきてよ」
千景は間髪入れずに答えた。
「……それはできない」
「何で?」
「学校もあるし、家のこともある。あたしはもう、昔みたいにはできねえんだよ」
「家のことって、前からやってたじゃん。学校だって、みんな通ってた。そんなの、理由にならないでしょ!」
「……千景」
「それとも、やっぱりこの男のせい?」
千景の視線が一陽に向いた。
「こいつと付き合い始めたから、うちらとは縁を切りたいってこと?」
「違う!」
玲奈が声を荒らげた。
「一陽君は関係ねえ! あたしが自分で決めたんだ!」
「じゃあ、何で相談してくれなかったの?」
千景の声が震えた。
「うちらは仲間だったじゃん。あんたが困ってたら、一緒に考えることだってできた。なのに、何も言わずにいなくなって……。あたしは、あんたの親友だったと思ってたのに」
玲奈は唇を噛んだ。
言い返せなかった。
千景の言うことが間違っているとは思えなかったからだ。
「……ごめん」
ようやく出た言葉は、それだけだった。
「謝ってほしいんじゃない!」
千景は声を張り上げた。
「戻ってきてほしいんだよ! 前みたいに、また一緒にいてほしいんだよ!」
その叫びには、怒りよりも寂しさがにじんでいた。
玲奈は何かを言おうとした。
しかし、その前に千景が一陽を睨みつけた。
「……あんたは、どうなの?」
「俺?」
「そう。玲奈がうちらと一緒にいた時間を、どう思ってるわけ?」
一陽は少し考えてから答えた。
「大切な時間だったんだと思うよ。玲奈にとっても、千景さんにとっても」
「だったら、どうして辞めるのを止めないの?」
「玲奈が決めたことだから」
「……は?」
「大切な仲間だったことと、これからも同じ場所にいなきゃいけないことは、別だろ?」
千景の顔が険しくなる。
「……あんたに、何が分かるのよ」
「全部は分からないよ。だから、勝手に決めつけるつもりもない」
一陽は静かに続けた。
「でも、玲奈が今の生活を守りたいと思ってることは知ってる。だったら、俺はその気持ちを尊重したい」
「……もういい」
千景は一陽から目を逸らした。
「何も知らないくせに、分かったようなこと言わないで」
「千景!」
玲奈が止めようとしたが、千景は聞かなかった。
「今日は帰って。玲奈とは、また話すから」
その言葉を合図に、周囲の空気が険しくなった。
一陽は玲奈の方を向いた。
「……玲奈。今日は一度、帰ろう」
「……うん」
玲奈は悔しそうに頷いた。
二人がその場を離れようとしたとき、真琴が声をかけた。
「玲奈。大波君。今日はもう帰りな」
「……真琴さん」
「千景も、少し頭を冷やしな。話し合いは、相手の言葉を聞くところからだよ」
真琴の毅然とした声に、千景は反論できずに黙り込んだ。
一陽と玲奈は、そのまま駐車場を後にした。
このとき、真琴はまだ知らなかった。
自分が見ていないところで、千景たちが取り返しのつかない行動に出ようとしていることを。
*
「……悪かったな、パイセン」
帰り道、玲奈がぽつりと呟いた。
「何が?」
「あんな言い方されて。あたしのせいで、嫌な思いさせた」
「別に。言われたこと自体は、そんなに気にしてないよ」
「……でも」
「玲奈」
一陽は足を止めた。
「千景さんが怒るのも、寂しいのも、分からなくはないよ。長い間一緒にいたんだろ?」
玲奈は小さく頷いた。
「だったら、千景さんにも千景さんの気持ちがある。それは否定しなくていいと思う。ただ、玲奈が自分の人生をどうするかは、玲奈が決めていいんだ」
「……うん」
「明日、もう一度話せばいい。今日すぐに分かり合えなくても、伝えることを諦めなければいいんじゃないかな」
玲奈はしばらく黙っていた。
やがて、小さく笑った。
「……パイセンってさ。こういうとき、変に説教くさくならないよな」
「説教するほど偉くないからな」
「自覚あんのかよ」
「そりゃあね」
玲奈は声を立てて笑った。
その笑顔を見て、一陽もほっとした。
けれど、その安心は長く続かなかった。
「……あ、そうだ。あたし、ちょっと母さんに連絡するわ」
玲奈がスマートフォンを取り出した。
「今日は少し遅くなるかもって言っとかねえと」
「分かった。俺はここで待ってるよ」
玲奈が少し離れた場所へ移動する。
その背中を見送った一陽の前に、数人の女性が現れた。
昨日、駐車場にいたメンバーたちだった。
「……大波、だっけ」
「何か用ですか?」
一陽が尋ねると、女性の一人が冷たい目を向けた。
「ちょっと付き合ってよ。話があるんだ」
「話なら、玲奈も一緒のときにしてくれないか?」
「すぐ済むから」
一人が一陽の腕をつかんだ。
「……いや、だから」
一陽が振りほどこうとするより早く、別の女性が反対側から腕を押さえた。
「おい、何するんだよ!」
一陽は声を上げた。
しかし、周囲には人影が少ない。女性たちは手際よく一陽を車へと押し込んだ。
抵抗しようにも、人数が違いすぎる。
車の扉が閉まる直前、一陽は玲奈のいる方向を見た。
彼女はまだ、こちらに気づいていなかった。
「……くそっ」
車が走り出す。
一陽は歯を食いしばった。
玲奈に心配をかけたくなかった。
何より、彼女が大切にしてきた仲間たちと、こんな形で争いたくなかった。
だが、これから自分がどうなるのかは分からない。
*
連れてこられたのは、使われなくなった倉庫だった。
一陽は床に座らされ、両手を後ろで拘束された。
目の前には千景が立っている。
「……悪いけど、少し痛い目に遭ってもらうから」
「……千景さん。こんなことして、玲奈が喜ぶと思うのか?」
「玲奈の名前を出さないで!」
千景の声が響いた。
「全部、あんたのせいじゃない! あんたが現れなければ、玲奈は今も……!」
「……今も、何だよ」
「うちらと一緒にいたはずでしょ!」
千景の表情は歪んでいた。
「玲奈は、あんたと出会って変わった。うちらより、あんたを選んだ。だから……」
「それは違う」
一陽は静かに言った。
「玲奈は、誰かを選んで誰かを捨てたわけじゃない」
「黙って!」
千景が叫ぶ。
「もう聞きたくない!」
周囲のメンバーが一陽を取り囲んだ。
その中の一人が、一陽の肩を強く押した。
「お前が玲奈をたぶらかしたんだろ!」
別の一人も怒鳴る。
「昔の仲間を捨てさせて、何がしたいんだよ!」
一陽は答えなかった。
やがて、彼らの怒りは暴力へと変わった。
一陽は何度も床に倒れた。それでも、反撃しようとはしなかった。
痛みで息が詰まり、身体を起こすのも難しくなる。
それでも、一陽は拳を握りしめるだけだった。
――ここで殴り返したら、どうなる?
自分が彼女たちを傷つければ、玲奈はきっと悲しむ。
千景との関係も、もう修復できなくなるかもしれない。
それだけは避けたかった。
だから、一陽は耐えた。
「……何で、抵抗しないのよ」
千景が苛立ったように尋ねた。
一陽は荒い呼吸を整えながら、顔を上げた。
「……殴り返したら、玲奈が悲しむだろ」
その言葉に、千景の表情が一瞬だけ揺れた。
しかし、すぐに顔を背ける。
「……そんなの、きれいごとよ」
「そうかもな」
一陽はかすかに笑った。
「でも、俺は……玲奈に、これ以上悲しい思いをしてほしくないんだよ」
「……っ」
千景は何も答えなかった。
そのときだった。
倉庫の扉が、勢いよく開いた。
「……お前ら。何をしている?」
低く、よく通る声。
榛名真琴だった。
真琴は室内を見渡し、床に倒れた一陽と、その周りに立つメンバーたちを目にした。
「千景。説明しな」
「……真琴さん、これは……」
「説明しろと言っているんだ」
真琴の声が鋭くなった。
「誰がこんなことを許した? 私が話し合えと言った相手を、勝手に連れ去って拘束し、暴力まで振るったのか?」
誰も答えられなかった。
千景も、拳を握りしめたまま俯いている。
真琴は一歩前に出た。
「答えな。仲間だからといって、何をしても許されると思うなよ」
その毅然とした声が、倉庫に響き渡る。
しかし、その場にいる全員の視線は、再び一陽へと向けられた。
彼は苦しそうに息をしながら、ゆっくりと顔を上げる。
「……真琴さん」
「大波君。今は喋らなくていい。まずは拘束を解かせる」
「いえ……少しだけ、聞いてほしいんです」
一陽は千景たちを見た。
「……俺は、玲奈をあんたたちから奪いたいわけじゃない」
誰も口を開かなかった。
「玲奈は、あんたたちと過ごした時間を、なかったことにしたいわけじゃないんだよ。昔の話をするとき、あいつは楽しそうにすることもある。……それと同じくらい、苦しそうにもなる」
一陽は息をついた。
「家に帰れば、小春ちゃんの面倒を見て、母親の手伝いをしてる。自分の時間を削ってでも、家族のために動いてるんだ。あいつにとって、家族との生活は大切なものなんだよ」
千景が唇を噛んだ。
「……だから、何だっていうの」
「だから、玲奈が今の生活を守りたいって思うことを、認めてやってほしいんだ」
一陽の声には、力がこもっていた。
「昔の仲間が大切だったことと、今の生活を選ぶことは、両立できないのか? 玲奈があんたたちを嫌いになったわけじゃないのは、話してれば分かる。だからこそ、あいつが自分で決めたことくらい、認めてやってほしい」
「……っ」
「俺は、玲奈に何かを諦めてほしくてここにいるんじゃない。あいつが大切にしてるものを、あいつ自身の意思で守れるようにしたいんだ」
一陽は千景をまっすぐ見つめた。
「……俺は玲奈のことを、まだ全部知ってるわけじゃない。でも、あいつが優しい人間だってことは知ってる。強がって、何でも一人で背負おうとする。自分が傷つくことには鈍いくせに、大切な人が傷つくことには、誰よりも敏感なんだ」
声がかすれた。
それでも、一陽は続けた。
「そんな玲奈が、自分で決めた道を歩こうとしてるんだ。だったら、昔の仲間として……あいつのことを大切に思ってるなら、応援してやってほしい」
倉庫の中が静まり返った。
千景たちは、何も言えなかった。
彼らが玲奈を守りたいと思っていたように、一陽もまた、玲奈を守りたいと思っていた。
ただし、彼は自分の隣に玲奈を縛りつけようとはしていない。
彼女が自分自身で選べるように、支えようとしているのだ。
真琴は一陽を見つめていた。
その目には、先ほどまでの怒りとは違う感情が浮かんでいた。
――なるほど。
この男は、玲奈を自分のものにしたいから、こんなことを言っているわけではない。
玲奈という人間を、きちんと見ている。
そのうえで、彼女が幸せになることを願っている。
「……大波君」
真琴が静かに口を開いた。
「あなた、たいした男だね」
一陽は困ったように笑った。
「……いや、俺は別に」
「謙遜するな。自分が傷つけられているときに、相手を恨むより先に玲奈のことを考えられる。しかも、自分の望みを押しつけず、本人の意思を尊重している」
真琴は腕を組んだ。
「芯があって、男気もある。……玲奈があんたを頼った理由が、ようやく分かったよ」
「……真琴さん」
「ただし、だからといって、今回のことを許すつもりはない。そこは勘違いするなよ」
真琴が千景たちを振り返った。
「お前たちのしたことは、仲間を思う気持ちとは別の話だ。自分の感情を理由に、他人を傷つけていいわけがない」
千景は俯いたまま、唇を震わせていた。
「……でも、あたしは……」
「言い訳は後だ。まずは大波君の拘束を解け。怪我の状態も確認する。必要なら救急車を呼ぶ」
メンバーたちが慌てて動き出した。
そのとき。
倉庫の外から、聞き覚えのある声が響いた。
「……一陽パイセン!」
玲奈だった。
彼女は息を切らしながら倉庫に飛び込んできた。
そして、拘束を解かれかけている一陽の姿を見た瞬間、動きを止めた。
「……え?」
顔に残る傷。乱れた制服。立ち上がることさえ難しそうな姿。
玲奈の表情から、血の気が引いた。
「……誰が、やった?」
低い声だった。
誰も答えない。
玲奈はゆっくりと顔を上げた。
その目に宿っていたのは、普段の彼女からは想像できないほどの怒りだった。
「……答えろよ」
千景が何かを言おうとした。
けれど、その言葉が出るより早く、玲奈は一歩踏み出した。
「……てめえら、絶対に許さねえ」
次の瞬間、玲奈が動いた。
千景たちは、彼女がどれほど強いのかを知っていた。
それでも、今の玲奈はいつもと違った。
怒りに任せて暴れるのではない。
一陽を傷つけた者たちに、二度と同じことをさせないという、明確な意志があった。
真琴はすぐに動かなかった。
玲奈が何を思い、なぜここまで怒っているのか。それを見届ける必要があると感じたからだ。
そして、千景たちもまた、理解し始めていた。
玲奈を奪った男だと思っていた一陽が、実際には玲奈の意思を尊重し、彼女の未来を願っていたこと。
そして玲奈が今、そんな一陽のために、必死になっていることを。
玲奈の拳が最後の一人を地面に倒したとき、倉庫には荒い息遣いだけが残った。
「……そこまでだ、玲奈」
真琴の声が響いた。
玲奈は振り返らなかった。
ただ、一陽のもとへ駆け寄る。
「……一陽パイセン! おい、しっかりしろ!」
「……玲奈。大丈夫、だから……」
「どこが大丈夫なんだよ! 馬鹿か、お前!」
玲奈の声が震えた。
怒っているのか、心配しているのか、自分でも分からなかった。
ただ、一陽が傷ついている姿を見た瞬間、胸の奥がひどく苦しくなったのだ。
真琴はそんな玲奈の背中を見つめ、そっと息を吐いた。
――なるほど。嘘をついていたのは二人とも、か。
一陽と玲奈が本当の恋人ではないことには、最初から気づいていた。
けれど、今の玲奈の様子を見れば分かる。
少なくとも、玲奈の方はもう、ただの後輩と先輩という関係だけでは済まなくなり始めている。
本人は、まだ気づいていないようだが。
真琴は口元に小さな笑みを浮かべた。
「……まったく。世話の焼ける子たちだね」
そして、玲奈と一陽、千景たちを見渡し、静かに告げた。
「話は、ここで終わりにしよう。玲奈。あんたが自分の意思でグループを抜けることを、正式に認める」
玲奈は顔を上げた。
「……真琴さん」
「もう、あんたを縛るつもりはない。これからは自分の人生を歩きな。何かあったら、いつでも頼りな。あんたも、大波君もね」
真琴は千景たちへ視線を向けた。
「お前たちも、玲奈の決断を受け入れな。仲間なら、本人が選んだ道を尊重してやれ」
千景は、しばらく一陽と玲奈を見つめていた。
やがて、ゆっくりと頭を下げた。
「……ごめん、玲奈」
その声は、今にも消えそうだった。
「……あたし、あんたがいなくなるのが嫌だった。だから、あんたの気持ちを聞くのが怖くて……勝手なことをした」
玲奈は黙っていた。
千景は一陽にも頭を下げた。
「……大波さん。玲奈のこと、お願いします」
「……千景さん」
「本当は、あんたのこともまだ気に入らない。玲奈がこんなに心配する相手なんて、正直、面白くないし」
千景は涙を拭って、少しだけ笑った。
「でも……あんたが玲奈のことを本気で考えてるのは分かった。だから、玲奈を頼む」
一陽は困ったように笑った。
「……俺にできることなら、協力するよ。でも、玲奈のことを頼むっていうなら、俺だけじゃなくて、千景さんも一緒に考えてやってくれ」
千景は目を見開いた。
「……え?」
「玲奈にとって、千景さんも大切な人なんだろ? だったら、俺一人に任せる必要なんてないよ」
その言葉に、千景の目から再び涙がこぼれた。
玲奈は一陽を見つめた。
傷ついているのに、最後まで自分と千景のことを考えている。
どうして、そこまでできるのだろう。
どうして、自分はこの人が傷つくことを、こんなにも嫌だと思うのだろう。
「……一陽パイセン」
「ん?」
「……馬鹿」
「ええ……?」
玲奈は一陽の肩を支えながら、顔を背けた。
「……ほんっと、馬鹿だよ。あんた」
その声は、怒っているようでいて、ひどく優しかった。
真琴は二人を見て、満足そうに頷いた。
千景たちとの関係が、すぐに昔どおりになるわけではない。
それでも、ようやく一歩を踏み出せた。
玲奈が過去を捨てるのではなく、過去と向き合いながら、自分の未来を選ぶための一歩を。
そして一陽は、まだ知らない。
今日の出来事が、玲奈の心に小さな変化を残したことを。
彼女はまだ、その感情に名前をつけられない。
ただ、彼が傷ついている姿を思い出すたび、胸が締めつけられるような気がするのだった。




