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俺の召喚体(いもうと)たちが優秀(やり)すぎる!  作者: かみきほりと
田舎の宮廷召喚術士、領主となって奮闘する

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249 援軍

 天幕の奥には俺とマリーが並んで椅子に座り、横に隊長とグィルムの領主であるフロイス子爵シェラが立つ。その護衛はシアとファル。

 傍聴の列にはメイリアと妹たち並ぶ。

 王都に居ることになっているサクヤには、ひと足早く商都メルシアへと向かってもらった。


 天幕の回りを兵士が固めており、その中に伝令が通されてきた。

 シェラのほうを見て、安堵の表情を浮かべたように思えた。


「シェラよ、どうだ?」

「はい。フロイス家の者に相違ありません」

「ふむ、では用件を聞こう」


 おかしい……

 立ち会うって話だったはずなのに、まるで俺が指揮官のような扱いだ。

 何か作為的なものを感じる。

 たとえばメイプルが……いや、こういうことはマリーかメイリアか。

 とにかく、ここに来た時には、俺がこの席に座る流れになっていた。

 ご丁寧に、背後にはリーフォニア家の紋章──盾に糖蜜楓(ルシエメイプル)の葉と赤葡萄(ウーバロッサ)の房が描かれた紋章旗が飾られている。


「はっ、現在、我らフロイス軍は、南東トクトライルより侵入してきた蛮族と交戦中。敵の数はおよそ五千」


 兵士たちに動揺が広まる。

 それはそうだろう。五千の蛮族というのは、さすがに考えにくい。


「静まれ。まだ話が続いておる!」


 騒めく兵たちを諫め、続きを促す。


「すでにモレア、クムが陥落。その勢いのままオズロエンの町にも攻め入られ、奮闘するも撤退を決断致しました。蛮族どもはさらにラーベン、メレイアへと向かっており、メルシアを目指しているものと思われます」


 さっきよりも小さめだが、動揺が広がっていく。

 それも仕方がない。俺たちが向かっているのは、まさにその商都メルシアだ。

 このまま三千の兵で援軍に向かえば、あるいは……

 だけど問題は、各地の治安維持のために派遣されてきた者たちに、この様なことをさせてもいいのだろうか……


「ラーベン、メレイアの住人は、メルシアへと向かっております。……報告は以上となります。それでは、援軍要請のため、このまま王都へと向かいます」

「しばし待て」


 わざわざ伝令を走らせるまでもない。

 王宮へは、王都のミアを経由して報せることができるし、風精霊(フィーリア)もいる。

 だから、わざわざ早馬を飛ばす必要はない。だけど……


 それとは別の理由で、腕組みをして考えるフリをする。

 何のことはない。メイプルの決断を待っているのだ。


『蛮族ならぁ、頭を潰せば、終わりよね~。なんなら私がぁ、サクッと倒しに行くわよぉ?』

『いや、五千もの数を率いる蛮族など考えられない。組織化された兵とみたほうがいいだろう。それに、複数の蛮族や傭兵団を雇い入れているのなら厄介だ。その場合、大将を討ち取っても、止まらない可能性が高い』

『精霊さんに、探って頂きましょうか?』

『相手を知ることは、戦の基本ですわね』

『そうなると、このまま進軍するのが得策だね。それに先駆けて……』


 全部聞こえてたりする。

 いや、俺が話に加われないだけなんだけど……

 念話での話し合いでは、すでにこの兵たちを率いて援軍に向かうという流れになっている。


「ブレイマー」

「はっ、ここに!」

「この兵で援軍に向かうことは可能か?」

「もちろんにございます!」


 ブレイマー隊長の返事を受けて、大きくコクリとうなずく。


「では、私は先行して商都メルシアへ向かう。ファル、力を貸してくれるか?」

「もちろんさ、旦那様。このファルアラン・ガイゼル、力の限り旦那様に尽くさせていただくよ」


 なんだか芝居がかっているが、すごくサマになってる。

 女性の姿なのにカッコイイ。


「ああ、頼りにしている。シアとディアーナも頼む」


 シアは常に護衛として同行しているし、ディアーナは聖法騎士だと公言しているから妥当な人選だろう。

 そこへ、シェラが進み出る。


「ハルキ様、話に割って入るご無礼をお許しください」

「別に構わないが、如何した?」

「この件は我が領地で起こっていること、であれば、是非、私にも同行の許可をいただきたく存じます。領主である私が戻れば、兵や領民も奮い立ちましょう」

「その心意気には感銘を受けるが、何をするにもまずは貴女自身の安全を第一に考えて欲しい。それを約束してくれるだろうか?」

「お心遣い痛み入ります。お約束すると誓います」


 ここまではメイプルのシナリオ通りだけど、問題はここからだ。

 どう頑張っても、マリーとメイリアを同行させる理由が見つからない。

 世間的にはか弱いご婦人ってことになっているだけに、戦地に連れて行くわけにはいかない。


「では、この五人で先行する。次にブレイマーよ!」

「はっ!」

「兵を二十人ほどつけて、非戦闘員たちを近隣の町や村に避難させてもらいたい。そして、残る兵を商都メルシアの援軍に向かわせよ」

「はっ!」

「ただし、到着時に戦えぬようでは意味がない。適度に休息を挟みつつ、出来得る限り急ぐよう願いたい。任せて良いか?」

「はっ、承知いたしました」


 あとは……


「非戦闘員の避難だが、そちらの手配を……メイプル、頼まれてくれるか?」

「領主様の命、謹んでお受けいたします」


 まるでメイドのように、メイプルが深々と頭を下げる。


「うむ。それとサンディー、すまぬが馬車の用意を頼みたい。その後はメイプルの護衛についてくれ」

「お任せ下さい、領主様」


 ここでようやく伝令へと向き直る。


「待たせたな。伝令ご苦労であった。王宮へはこちらから伝えるとしよう。代わりに大事な用を頼みたい」

「何なりとお命じ下さい」

「では、フロイス子爵が御自ら援軍を率いて駆け付けると、メルシアに伝えよ」

「伯爵閣下の名ではなく?」

「私の名を出すのは無粋というもの。彼の地において、領主であるフロイス子爵の存在こそが希望の灯であろう。であれば、彼女が軍を率いて戻るとしたほうが、士気も上がろう。それだけに、おぬしの役目は重要となる。必ず生きてメルシアにたどり着くのだぞ」

「はっ、必ずや役目を果たしてみせます。では、これにて」


 ここまで早馬を飛ばしてきた疲れは、完全に吹き飛んだようだ。

 伝令は決意に満ちた表情を浮かべ、颯爽と天幕から去っていった。


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