第八話 キノコのお持ち帰りはご用心!?
8話です。
てくてく、てくてくと歩いてうちに帰ってきた。
朝キノコ狩りに出た時は、まだ薄暗かったのに、空が明るくなっていた。
玄関に着くと、
『あっ、うさちゃん、昨日、必要だ! って言った袋はこういうことだったんだね~ 心配したから、次からは私に言ってから行ってね!』
ヤバい。俺の事を心配して怒ってくれるエリーナちゃんもかわいぃ。
『ねぇ! 聞いてるの!?』
『ああ。悪い悪い。聞いていたよ。これからはしっかりエリーナに伝えてから行くようにするよ!
ごめんな。あ! 明日も行くつもりだから』
そっか。心配させてしまったのか。
これからは気を付けないとな。
おっと。お母さんも出てきたよ。
「エリーナ。外で何してるの? ってうさちゃんどこ行ってたのよ? 心配したんだから!」
「うさちゃん、私たちのためにキノコ採りに行ってたんだって。」
「そうなの? 食べれるか少し見させてくれる」
お母さんがそう言うとエリーナは俺の首から下がった布袋を持ち上げてお母さんにてわたした。
「あら、おいしいキノコばっかりどうやって見分けたのかしら??? 不思議ね。エリーナ、どうやって見分けているか知ってる?」
「ううん、知らないから聞いてみるね!」
『うさちゃん、きのこどうやって見分けたの?』
どうやって説明しようかな。この世界の人はスキルとか知らなさそうだしなー
知っててもスキルの事を話すウサギってどうなんだ?
とにかくここは、
『えっとー。キノコを見ると野生の本能が食べれなさそうだなーって思うんだよ』
と、適当に言っておくか。(ごめんよー。嘘ついてしまったけど許して)
『そうなんだー』
エリーナは何だか腑に落ちたような、落ちていないような返事をしてお母さんにそのことを伝えた。
「お母さん、やせいのほんのうだって!」
「あら、そういうこと! うさちゃんありがとう!」
お母さんに頭をわしゃわしゃされてくすぐったい。
キノコは取って来たけど、まだまだ、朝の時間だ。俺は1日暇なので、同じく暇そうなエリーナに頼んで書斎の魔術の「誰でもわかる魔法初級」を読ませてもらうことに成功した。
エリーナも知らないことがあったみたいで面白そうにしてくれた。
俺は文字が読めないと思っていたけど杞憂に終わった。
よくわからん文字だと思ったんだけどなぜか読めた。
ドラゴンにしてくれなかった恨みはあるけど、神様それをチャラにしてくれる読み書きをありがとう。ま、神様がいるかはわかんないんだけどね。
俺が最初普通に読んでいるもんだからエリーナは驚いていたみたいで途中俺に
『どうして読めるの?』
と聞いてきた。何でも難しい字もあってエリーナもそんなにスラスラ読めないのにどんどん読み上げていく俺にびっくりしたようだ。
『どうして読めるの?』には、俺もわからないから、『わからない』って答えておいた。
そんな感じで1日中、本を読んでいたらもう晩御飯の時間になっていた。
今日は、キノコのシチューが出た。何でも俺がせっかくとってきてくれたキノコだから早く使おうと思ったらしい。
俺もキノコシチューを口にした。生野菜、茹で野菜もいいけれど、こんなにおいしいものはこの世界に来て初めてだったのでエリーナに通訳してもらいながら2回おかわりさせてもらった。
これから、キノコシチューが出たら、絶対におかわりさせてもらおうっと。
俺は、膨れたおなかを上にしてウサギ小屋で眠りについた。
翌朝になる前くらいの時間に俺は、キノコ狩りに出かけた。
昨日エリーナにはちゃんと伝えてきたし、問題ないだろう。
とっとっ
とっとっ
やっと着いた森の入り口は、昨日とは比べ物にならないくらい霧が濃かった。
何せ自分の前足でさえ少し見づらいのだ
そんな霧の中でもこの無駄にでかい耳がちゃんと音を聞き分けてくれるから大丈夫だ。
俺は、昨日とは違うところのキノコの狩場を探して歩き回った。
おっと、あったあった。鑑定と、シメッジ―にマイマイタケどれも前世のシメジ、マイタケにそっくりでおいしそうだ!
うん? これは一見すると松茸にそっくりなマーツタケだと思ったけど、マーツタケモドキだった。
【マーツタケモドキ】
非食用
マーツタケと間違えて食べてしまうと体に毒が回る
これは、普通の人なら食ってしまいそうだぞ。怖いなー。
これは捨てて捨てて。次 鑑定 鑑定 ・・・・・
「グルゥゥゥゥ」
あれいつの間にか、目の前に普通のオオカミを一回りも二回りも大きくしたようなオオカミがいる。キノコ狩りに夢中になっていたら自分がウサギ狩りに合うとは・・・・
ていうか、これ絶対ヤバいやつだ。威嚇されてるし、どうしよう。
どう考えても跳躍と俊足を最大限に活用してどうにか逃げるしかないな。よし逃げるぞ! 走れ俺! 俊足のおかげで普段の二倍速いからすぐに逃げられるだろう。
けど、そんな浅はかな考えはすぐに訂正せざるを得なかった。なぜなら逃げ切るどころか、どんどん俺とオオカミの距離が近づいているからだ。もう、後ろを振り返ったら、その瞬間に食べられそうなほどだ。
まずい、キノコは重いから置いていくしかない。くそ、俺のキノコぉー!
俺が左に曲がれば、オオカミも左に曲がり、俺が右に曲がれば、オオカミも右に曲がる。
小回りは絶対に俺のほうが利くはずなのに、どうしてなんだよ!
跳躍と俊足で軽くステータスの3倍近いほどのスピードが出ているのにどうしてだよ! どうして距離が縮まる!
くそ、どうすればいい。
なにも浮かばない。正直後ろの狼の気配で思考が全くまとまらない。
―スキルの熟練度がたまりました―
なんだうるさいな!
―俊足が俊足Lv.2になりました―
スキルのレベルが上がった?
―スキル俊足の速度が2倍から4倍まで選べます―
どういうことかわかからないけど、倍率は高い方がいいだろ!
4倍! 4倍でお願いします!
速い! 俺が目でとらえたときにはもうそこを通過している。
オオカミもさすがにここまでは追ってきていないだろう。
少し振り返ってみるか。
<グッサ>
読んでくれてありがとうございます。
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誤字脱字はなるべく早く直していくのでよろしくお願いします。