余り語られない撮影所のあれこれ(200) 「映画館今昔物語3〜未来、日本の映画館の挑戦編〜」
余り語られない撮影所のあれこれ(200)
「映画館今昔物語3〜未来、日本の映画館の挑戦編〜」
●映画館離れ
映画を観るという事が少なくなってきている昨今。
「映画を観る」と言っても家庭でDVDやBDで鑑賞するのが一般的になってきている。
また、配信サービスでは月額や年額での契約をしていたら見放題というコンテンツもあり、レンタルビデオ店よりも1作品当たりの鑑賞料金は格安になる場合もある。
かく言う私も映画館に足を運ぶ機会がめっきり減ってきている。
私のカミさんなどは、レンタルビデオ店に勤めているのもあってか、公開される映画の予告をテレビで観ながらも「レンタルされてからで良いから観たい」と言ってしまっている手合いだ。
それだけ一般的には映画館離れが進んでいる様に思える。
しかし、いずれも家庭で鑑賞する場合には、大スクリーンや音響設備は個人の所有のモノを使用する為に、なかなか映画館のようにはならないのが実情だ。
今回は、前回で語り切れなかった「日本の映画館」の生き残りを賭けた挑戦とその取り組みを語ってみたいと思う。
尚、例によって情報のほとんどが約35年ほど前です。
今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。
また、記憶の内容が35年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在します。
その点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。
そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。
東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。
その点を予めご理解ご了承下さい。
●映画館とビデオとテレビ
当たり前の事だが、映画がスクリーンでのみ観られていた時代は、個人的にその上映を途中で止めてみたり、フィルムを巻き戻してもう一度見返してみるといった行為は出来ませんでした。
そして、浮世絵等の絵画から写真などから始まり、何にでも保有欲というモノは存在するもので、自宅で好きな映画を何時でも何度でも観たいという方もいらっしゃいます。
流石に35ミリフィルムしか国内流通の無かった時代には、撮影用カメラも映写機も高額でした。
そういった方の為に先ずはサイレント時代の35ミリフィルムの数十秒から1分程度の「トイフィルム」とその映写機が販売されます。
これが戦前のお話。
そして、その「トイフィルム」の殆どは戦時中の様々な理由から消失してしまいました。
戦後になると、35ミリフィルムを小さくした8ミリフィルムの撮影機材と映写機が一般にも普及し、1〜3分弱の撮影時間とはいえ、映像を一般の方々が手軽に撮影し手軽に映写して愉しむという時代になりました。
しかし、流石に映画を自宅で愉しむには、少なくとも16ミリフィルムの映写機が必要となりました。
そして、フィルムとは違った「ビデオテープ」という媒体の誕生が、この8ミリフィルムによって生み出された自家製映画撮影技術と承認欲求としての映写欲と、更には映画やテレビ番組等の映像に対する保有欲とが、一般の人々にとって一気に解決というか身近になったのです。
その中でも映画への保有欲に対しては、家庭用ビデオデッキの普及に伴い、映画作品を家庭で鑑賞したいという世間の要望と、その広大なる商業的市場の開拓の為に、映画作品のビデオテープによる販売が開始されたのは、至極納得のいく過程でした。
テレビでも映画作品を多数放送し、録画して再度鑑賞する事が可能となっていきます。
しかし、まだまだビデオデッキ自体が高額であり、ましてや映画のビデオテープでも1本数万円はする状況でした。
映画制作会社としては新たな販路が出来た状況でしたが、映画自体を上映する映画館にとってはまさに「暗雲立ち込める」状況が予感されたのです。
●ビデオとDVDとレンタルと
家庭用のビデオデッキが安価に市場に出回る様になると、その普及が一気に加速しました。
それに伴い、映画のビデオテープの高額さとその需要を補う様に、ビデオテープの中古販売店が出来、「ビデオレンタル」という全国的に拡大する商売が出来上がります。
この「レンタルビデオ店」という存在が、映画館にとっての「暗雲」となりました。
映画自体のビデオテープは数万円と高額でしたから、その映画を手元に置いておきたいと願う熱狂的な鑑賞者以外の一般的な映画の観客は、入場券を買って映画館に足を運んでいました。
しかし、映画館の入場券の何分の1かのレンタル料金で貸し出されるビデオで、時間の制約も受けず自分のペースで鑑賞出来るとあれば、レンタルという選択肢が大半を占める事となった訳です。
映画制作会社的には、映画館の入場券の利益を全国のレンタルビデオ店へのビデオテープの販売によって補完していましたから、減収という感覚はほぼありませんでした。
寧ろ、映画館で掛かる映画としてではなくビデオテープでの販売を主目的にしたVシネマなどのコンテンツをブランド化したくらいでした。
これに対して映画館側は、収益としての入場者の減少が避けられない状況となっていました。
ロードショーとして映画館で上映した映画は、ロードショー期間を過ぎると暫くするとビデオ化されました。
この事で、「ロードショーで観にいかなくともレンタルビデオで出回るまで待つ」という客層を生んでしまった訳です。
そして、ロードショー館はおろか二番館以降の映画館にしても一部の「映画館離れ」のきっかけを作ってしまったのです。
更に、過去の映画作品もビデオ化され名画座としての映画館の入場者数も圧迫しました。
この現象は、ビデオテープがDVDやブルーレイに変わってレンタルされる様になる頃には、ビデオデッキ以上に安価になったDVDデッキやその再生媒体の出現によって、画質の良さから映画館から傾倒する人達を少なからず増やしたのです。
尚、ここで言う「再生媒体」とは、DVDの再生機能の付いたゲーム機やカーナビ、更には液晶画面付きのポータブルDVD再生機というモノまで含めています。
そこまで「手軽に」映画や映像媒体を再生できる機械が世間に満ちた事で、DVDやブルーレイのレンタルも世間に受け入れられて、ビデオテープを駆逐して行き、今や絶滅危惧種にまで至ってしまいました。
●配信と衰退
DVDやブルーレイの再生機能付きの機械が世間に出回る事になっても、レンタルビデオ店でレンタルしたり返却する時間的や距離的な煩わしさと、レンタル本数によっては直ぐには借りられないという煩わしさはレンタルビデオ店の不満点でもありました。
話題の映画であればこそ、早いうちに鑑賞したいと思えるもので、レンタルビデオ店に並んで尚借りられないのならば、最初から映画館へ足を運ぶという熱心な人も少なからずいました。
この事から、映画館も鑑賞期間のロングランを続け、少なくとも主要映画館でのロングラン上映の期間中はレンタルへの普及がストップしますから、益々映画館でなければ鑑賞出来ない状況が作られたのです。
しかし、ここに映画館どころか過去数十年間映像媒体の普及に貢献して来たレンタルビデオ店までも衰退に追い込む状況が出て来ます。
「映像配信サービス」というコンテンツです。
ビデオデッキやDVDデッキ、ゲーム機、ポータブルDVD再生機にも増して大衆の9割以上が1人に1台は持っているスマートフォンを映像媒体として活用するという最大限の媒体数を活用した映像鑑賞が出来るのです。
しかも、映画館にも行かずにレンタルビデオ店に通う事もなく本当に手軽に、自宅のみならず外でも車中でも何処でも鑑賞出来るという利点の上に、流石に映画のロードショーの期間を過ぎなければ公開配信されないというレンタルビデオ店と同じ様なシステムはありながらも他の人に借りられていて順番待ち等という事もなく、更には一部の作品を除いては月額料金を支払うだけで見放題という状態でもあるのですから、利点だらけです。
しかし、前途した様にロードショー作品の場合は、映画館のロードショー期間を過ぎなくては配信されませんし、画面としては一般的にはスマホやタブレットの画面、またはテレビ画面という大きさの制限もあり、音響も殆どの場合は映画館とは比べるにもありません。
更に、観る作品が無くとも月額料金は請求されますし、何と言ってもレンタルビデオ店と同じく何時までも選択出来る作品として配信されているとは限らないという欠点もあるのです。
それにしても欠点を補うには余りある利点がある事で、「動画配信サービス」はレンタルビデオ店までもが経営の危機に立たせ、個人店舗は閉店へと追いやられ、チェーン店であっても縮小の選択を余儀なくされている程のコンテンツへと成長しました。
●感染症
そんな「映像配信サービス」の隆盛を奇しくも後押しした要因のひとつが、「感染症」だと言われています。
それは、逆に映画館にとっては先の見えない苦悩の期間となりました。
2020年に、アメリカ国内で新型コロナウイルス感染症が拡大すると、アメリカ国内のほとんどの映画館が閉鎖を余儀なくされました。
2021年3月ごろから映画館は再開され始めましたが、入場客数の制限を行った為に映画館の経営は困難なものとなり、カリフォルニア州の例では地元の映画館チェーン、パシフィック・シアターズとアークライト・シネマズは、営業再開を断念して州内に300有る劇場をすべて閉鎖した程でした。
世界的に見てもアメリカに本拠を置き世界最大映画館チェーンを運営するAMCシアターズも2020年決算において46億ドル(当時の円換算で約5000億円)の赤字を記録し、経営危機に直面しました。
2022年9月7日には、世界2位のシネワールドが破産申請を行った程でした。
日本でも2020年から映画館の上映自粛が相次ぎ、更に2021年には、東京都が独自の施策として床面積1000平方メートル超の映画館に休業を要請、1000平方メートル以下の場合は休業の協力を依頼したことから、都内の独立系のミニシアターでは経営が成り立たなくなり閉館が相次ぎました。
流石に地方都市では東京都の様な要請は無かったものの東京都と同じく「三密を避ける」政策もあり、映画館の様な密閉空間に不特定多数の観客を入れての興行は、入場者数の制限や座席の間隔を空けての指定席制、またマスク着用のお願い、映画館の副収入であった飲食物の販売の停止と飲食物の場内持ち込み禁止等の施策の為に観客入場者数は激減しました。
この事により開館していても経営が成り立たない状態が続く事となって行ったのです。
この「三密を避ける」政策による密閉施設への来場を避ける傾向が3〜4年も続く事になろうとは想いもよりませんでしたし、その事によってその後の仕事の仕方や会議の在り方からはじまり、遠距離移動や遊びや映像コンテンツの在り方自体が大きく変化してしまうとも想ってもいませんでした。
この「感染症対策」による変化は、「緊急事態宣言」等の「三密を避ける」政策が消極的になっても完全には元には戻りませんでした。
「代替え」であるはずの「配信サービス」が当たり前な状態となり、過去からもそうであったかの様に一般的になると、レンタルビデオ店に通う回数が減り、また通わなくなる者も出て来ました。
映画館への入場も余程の話題作ならば別として、余りわざわざ通う場所ではなくなりました。
●映画館の挑戦
そういった中で、映画館側も様々な挑戦のカードをコロナ禍以前から切り出していました。
映画館は、先ずは家庭用テレビの画面の大きさや音響、ましてやスマホでの鑑賞とは違う、映画館でなくては体験が出来ない「特別感」を観客に味わって貰う事を目指しました。
それは、家庭では決して真似できないスクリーンやスピーカーなどの設備や映画館でなければ開催できない規模のイベントやサービスなどがメインとなっています。
○3DXと立体映画
近年、映画館の上映様式として根付いてきたのが「3DX」と「4DX」という特殊な設備での上映です。
「3DX」は「映像の立体感」に特化した上映形式で、「3D映画」と言われる立体視が可能になる映像を、観客が「3Dメガネ(偏光メガネ)」を着用して鑑賞することにより、映像が目の前に飛び出してくるような感覚で楽しむことができるという上映形式です。
「3Dメガネ」は映画館から貸与され、映画の鑑賞後に返却するのが一般的です。
この「3Dメガネ」は、一般にも販売されていて「マイ・3Dメガネ」を持参して鑑賞する観客もいます。
また「3Dメガネ」は、通常の眼鏡の上からも掛けることも可能で、視力の悪い人でも使用できました。
しかし、視力の悪い私の個人的な感想としては眼鏡の上からの「3Dメガネ」は、余り立体視の恩恵を感じられなかったという感想です。
余談ですが、40年以上前にも映画館で「飛び出すメガネ」というものを掛けたことがありました。
これは、青と赤のセロファンが張られた紙製の眼鏡で、映画の途中で青と赤の二重撮影されたフィルムの際に「さあ、『飛び出すメガネ』を掛けるんだ」という言葉と映像に促されて「飛び出すメガネ」を掛けて擬似立体映像を鑑賞するもので、特に子供向け映画にみられました。
この青赤メガネの方式は、「3DX」で行われている「偏光式」とは違い「アナグリフ方式」と呼ばれていて、日本でも古くは1935年頃から映像に使用されていましたが、東映動画(現:東映アニメーション)が手掛けた「とびだす!3D東映アニメ祭り」や東映の特撮ヒーロー映画「飛び出す冒険映画 赤影」や「飛び出す立体映画イナズマン」や「飛び出す人造人間キカイダー」などが上映されたことにより、当時の子供たちには「飛び出す(立体)映画は、青赤メガネを掛けて観る映画」と認知されていました。
「3Dメガネ」は、「偏光方式」でも「アナグリフ方式」でも右目と左目に少し異なる視差のある映像を見せて、脳内で立体として認識させることによって成り立ちます。
ニンテンドー3DSのように偏光メガネなしに立体視できる「裸眼3D技術」も存在しますが、映画館では不特定多数の視点合わせなどこともあり、偏光メガネを用いた方式が主流となっています。
○4DX、MX4D
4DXは3D映像に加え、座席の振動・移動、風が吹く、水(霧・ミスト)が噴出される、フラッシュ、泡(バブル・シャボン玉)が出る、香りが出るなどの五感で感じる「体感・環境効果」の演出がシーンに合わせて発生する「体感型(アトラクション型)シアター」です。
3DXは「映像を観る」、4DXは「映画をアトラクションとして体験する」という大きな違いがあり、 3DXが「没入感」、4DXは「臨場感」とも表現されます。
尚、「4DX」と「MX4D」は上映している映画館の系列による呼び方が違うだけなので違いはありません。
4DXは、アクションやファンタジー映画のシーンとリアルタイムに連動し、シーンの緊張感や迫力を倍増させる効果を演出します。
尚、4DX作品では水や風の演出を座席のスイッチでオフにすることも可能ですが、数席が一緒に動く座席の移動演出まではオフにできません。
これも余談ですが、私の個人的な感想としては座席の振動や移動は映画鑑賞自体に専念できず、返って没入感を妨げてしまった印象があり、どうしても2D映画やせめて3DX映画での鑑賞がしたくなってしまいます。
これは、私自身の映画鑑賞が映画へ没入するというよりも第三者の眼で観てしまっているからかもしれません。
尚、従来の2D映画を3DXや4DXへ転用して上映することは出来ません。
しかし、3DX映画を4DXで上映することは無理ではありません。
つまり3DX用や4DX用に制作された映画だけが「立体視」することができる特殊なカメラや撮影方法で撮影されているのです。
その政策の過程や撮影の過程で3DXや4DXとして上映するのに相応しく効果的になる映像演出が意図的に成される場合もあります。
そして、映画館で3DXや4DXで上映された作品が家庭用の映像媒体に転用される際には、特殊な場合を除いては3DXや4DX用の立体視の偏光方式の映像ではなく2D方式の映像が選択されるのが一般的です。
3DXへの転換は「偏光メガネ」の準備などの一部の先行投資で済みますが、4DXとなると座席部分への改装・改築に多大な費用が必要となることから、一般的な街の映画館での上映には向いておらず、資金投資が可能な大手興行母体で、しかもシネコン形式の映画館の内の1スクリーン分だけといった状態になっているのが現状です。
◯IMAX
IMAX(=アイマックス)は、独自の高解像度カメラ、プロジェクター、巨大スクリーン、特殊なシアター設計により、圧倒的な没入感(映像・音響・空間)を提供するプレミアム映画上映システムのことです。
床から天井、左右の壁まで広がる大画面と、鮮明な4Kレーザー映像、12chの臨場感あふれるサウンドが特徴の上映形式です。
IMAXでのスクリーンは、従来のスクリーンよりも約40%広く、アスペクト比(縦横の長さの比)が最大1.43:1と上下に拡張されています。
現在の一般的な映画館のシネマスコープ(=シネスコ)サイズのスクリーンのアスペクト比が2.35:1~2.39:1、また近年まで観られていた映画館のスクリーンであるビスタサイズでは1.85:1、テレビサイズでは16:9(つまりは1.78:1)と、IMAXのスクリーンは従来のスクリーンよりも正方形に近いアスペクト比になっています。
尚、シネスコサイズ、ビスタサイズ以外にもテクニラマ、パナビジョン、スーパースコープ、テクニスコープ等のスクリーンサイズが存在します。
そして、IMAXは「4Kレーザー」による鮮明で色彩豊かな映像を実現することも特徴のひとつです。
また、2台の映写機を使い同時にスクリーンに映し出す事によって従来よりも明るい画面にしている事も特徴となっています。
更に、前途した12chサウンドシステムが、胸に響く低音から微細な音までを精密に再現しており、この没入型サウンドも特徴となっています。
そして、IMAX専用のシアター設計も特徴で、スクリーンに近い座席配置や視界いっぱいに画面が広がる構造を持つ劇場設計が施されています。
尚、通常の映画作品をIMAX用に最適化して上映する事も可能で、「IMAX DMR(=デジタル・メディア・リマスターリング)」と呼ばれる技術もIMAXの特徴のひとつとなっています。
以上の様に、従来の映画館としての「映画鑑賞」の最上級の仕様がIMAXと言っても過言ではないでしょう。
視界の殆どを画面が支配し、スクリーンの端という虚構と現実の境い目を曖昧にして「没入感」を引き出し、そこへ臨場感ある音響が追随するという3DXや4DXを用いない現状の映画体験の最高峰なのだと思います。
4DX程には改装は掛からないものの巨大スクリーンへの転換に加えて音響設備にも改装費が掛かる為に、シネコン形式でのチェーン映画館や改装後も入場が見込める映画館ではないと転換が出来ない施設でもあります。
◯IMAX-3D
通常の3DX映像との違いは、画面自体の大きさによるところと、IMAX方式の映画に、2台の映写機によるパッシブ方式と呼ばれる2台同時投影による3D映画方式を呼びます。
この方式の投影により、通常の3D映像よりもIMAX同様に明るく鮮明な画面が作られる特徴があります。
3DXと同様に「3Dメガネ(偏光メガネ)」をかけての鑑賞となりますが、IMAXと通常の映画の画面サイズが異なる為に、通常の3DX用の「3Dメガネ」と「IMAX-3D」用の「3Dメガネ」も異なるのが一般的です。
◯舞台挨拶
映画本来の上映形式としての付加価値とは別に、映画館独自の付加価値も模索しています。
封切初日や記念イベントなどに、出演者や監督などが舞台上に立ち、観客に対して「舞台挨拶」をおこなうこともあります。
特に映画制作会社が映画公開を大々的に宣伝したい場合や観客動員数の記録御礼、ロングラン上映の御礼等の記念イベントに対して行う場合が大半です。
概要としては、司会者もしくは進行役と出演者や監督等のスタッフ等が、映画上映前や上映後にスクリーン前の舞台に立ち、15分〜30分程度の舞台挨拶という名のトークショーが開催されます。
舞台挨拶付き上映回は特別料金になることが多いです。
また、短い時間とはいえ、生で出演者やスタッフに会える機会は珍しく、座席指定の争奪戦が激しくなる場合もあり、大多数の観客が見込める場合などでは、生中継等のチケットを発券して対応する場合もあります。
舞台挨拶付き上映は、殆どが東京都ぐらいしか開催されない上映イベントですから、地方の方々にも生中継という形であったとしても、全国の劇場にリアルタイム配信するイベントは地方の映画館でも観客動員数を増やす事に繋がっているようです。
近年では、舞台挨拶付き上映は全国の主要都市の映画館での開催や、地方でチェーン展開をしている映画館等でも行われる場合があるようです。
◯ライブビューイング、パブリックビューイング
前途した生中継であるライブビューイングやパブリックビューイングは、舞台挨拶付き上映イベントだけではありません。
大きなスクリーンと多数の客席を利用してのスポーツ観戦や、演劇鑑賞などを放映する場合もあります。
大勢がひと処に集まり、遠く離れた場所の客席い居るかのような臨場感のある音響と伴に鑑賞する。
時には映画館の客席らしからぬ大声を張り上げて応援したり歓喜してりする。
ふと考えるとこの上映形式は、往年の「映画」という見世物が登場した当時の鑑賞さながらになっている状況じゃないのかと思ったりしています。
◯応援上映
映画館らしからぬ大声を張り上げての上映と言えば、「応援上映」という形式の映画上映があります。
これは、映画の上映中に観客が大声を出すことが認められた特別上映回の事で、同様のものにチアリング上映、発声型上映、絶叫上映、声出し上映などがあります。
日本では、2010年代中頃から頻繁に行われる様になり、映画上映中に観客の声援、コスプレ、アフレコなどが許される新しい映画鑑賞スタイルとして注目を集めています。
映画館では静かに映画を鑑賞するという従来の概念を覆すものであり、盛り上がるシーンで歓声や声援を上げたり、ツッコミを入れたり、劇中のセリフを唱和したり、サイリウムを持ち込んでコンサートのように楽しむこともできたりします。
応援上映の醍醐味は「ファンが作品の興奮や感動を共有できる」ことであり、会場が一体となる楽しさがSNSや口コミを通じて話題となり、同じ映画に何度も通うファンが増えたと言われています。
一方で上映中に声を出すという特性上、映画に集中したい人には不向きであり、ネタバレは避けられず、「リピーター向けの祭典」ともいえます。
その為、「応援上映」を映画館側が周知や告知する事も重要で、応援上映と知らずに入場してトラブルになった例や、観客の迷惑行為で応援上映が中止された例も報告されています。
上記の様に同じ映画を複数回鑑賞する人向けのイベント的な上映回であることから、このように「特別感」を付加価値として作り出す事で、観客動員数の「延べ人数」と入場料の増額に貢献しているのです。
◯レイトショー、モーニングショー
イベント的な要因による観客動員の増員だけではなく、他に目を向けて、今まで取り込めなかった観客を取り込もうとする試みは、早い段階から見られました。
それは「時間帯の緩和」です。
コンビニの様に店舗の営業時間を拡充して、今まで取り込めなかった観客を取り込もうとするのと同様に、映画館もシネコン、ミニシアター共に午前中のみの上映としての「モーニングショー」や夜間上映としての「レイトショー」などで公開作品数や観客動員数を増やす試みが出て来ました。
特に週末の休日前の金曜日や土曜日等に行われる「レイトショー」は、仕事帰りの時間帯に映画を観られたりデートコースとして利用出来たりと好評の様です。
◯券売方法
かつての入場券の販売は、紙製の前売り券を事前に買うか当日券を映画館で購入するかが主流でした。
今でも同じ様に前売り券や当日券は存在しますが、インターネットを使った発券が主流になって来ています。
このインターネット発券は、ここ10年程で急速に発展して来ました。
当初は、予約こそインターネットを通じて行っても発券は映画館に行ってから行わなければなりませんでした。
それが、現在ではインターネットといってもスマホから予約して、映画館に行っても発券機すら通さずにスマホの画面から入場出来るという状況になっています。
人気のある映画では、現在の座席指定の映画館の形式では直ぐに埋まってしまいます。
それが映画館に行かなければ予約や発券が出来ない状況であれば、映画館から遠方の人程、幾ら人気のある映画であったとしても映画館へ行こうとする意欲を拭ってしまうでしょう。
そういった意味でも予約から座席選択、支払い、(バーコードやQRコードでの)発券までが、自宅のパソコンや手の平の上で出来てしまう現在の発券システムは、映画館へ行く敷居を下げていると感じています。
特に若い方々には煩わしさが解消されているのでは無いかと思われます。
◯様々な割引サービス
割引サービスは、昔からありました。
前売り券もサービスの一種です。
昔は、子供向けの「東映まんがまつり」や「東宝チャンピオンまつり」などの映画の100円程度の値引き券である「割引鑑賞券」というモノが、書店やおもちゃ屋、果ては小学校等でも大量に配布されていました。
「割引鑑賞券」には、それぞれの映画の場面の写真や絵がプリントされていて、更には地元の映画館の名前まで入っていましたから、子供達の鑑賞意欲を駆り立てていました。
現在でも「割引鑑賞券」の様なモノは残っている様です。
しかし、それだけではなく、映画館側も経費を掛けずに映画館へ来場して貰える様に工夫を凝らして様々な「割引サービス」を設けています。
■映画の日(12/1)
誰でも1,000円〜1,300円(※劇場による)
※1896年11/25〜29に神戸でキネトスコープが公開されたのが日本の映画の最初として、キリの良い12/1に映画の日が制定されました。
■レディースデー/メンズデー
週1回(主に水曜)1,100円〜1,300円
■レイトショー
20時以降の回が1,500円など
■ファーストデー
毎月1日1,300円
■シニア割引
60歳以上は1,300円
■ペア割(夫婦50割引)
夫婦やカップルでペア3,000円
夫婦の片方でも50歳を超えていたら夫婦で3,000円
■ハッピー55(※イオン)
55歳以上はいつでも1,300円
■ハッピーマンデー(※イオン)
毎週月曜・1,200円〜1,300円前後
■ハッピー20(※イオン)
毎月20・30日が1,300円
■TOHOウェンズデイ(※TOHOシネマズ)
毎週水曜・1,300円
■シネマイレージデイ(※TOHOシネマズ)
毎週火曜・会員限定1,300円
■シネマサンシャインデイ(※シネマサンシャイン)
毎週水曜・1,300円
■109シネマズデイ(※109シネマズ)
毎週水曜・1,300円
■クレジットカード・会員サービス
特定のカードやアプリの提示で割引が適用される
□イオンカード(ミニオンズ)
イオンシネマでいつでも1,000円
(※専用ページにて購入が必要)
□auスマートパスプレミアム
対象作品がいつでも1,100円
土日祝も1,400円になるクーポンがある
□JCBカード S
対象の映画館で優待割引。
□エポスカード
会員向け割引あり。
□U-NEXT
ポイントを利用してクーポンを発行。
■映画館独自の会員
入会金・年会費で割引やドリンク券などの特典がある
■前売り券を購入
コンビニ等で通常より200〜400円お得に購入可能
中には、映画の鑑賞に関しての割引ではなく、鑑賞したことによって割引サービスを受けられるといった少し変わったサービスも存在します。
■半券サービス
イオンシネマ徳島など、映画の当日の半券(オンラインチケット画面)の提示で、イオンモール内の飲食店や専門店で割引サービスが受けられる
◯様々な上映
現代の映画館は、ストリーミング配信に対抗し、前途の様に大画面・高音質という「没入型体験」を全面に出す方法や、映画館でしか味わえない「イベント性(口コミ、特典、名作上映)」を高める挑戦を続けています。
■「映画館で観る」価値の最大化
従来の名作映画を高画質・大スクリーンで復活させ、映像美や熱狂を共有しようとする企画
■体験型イベントの創出
作り込まれた世界観を共有する場として映画館を提供する企画
■異業種と連携した誘客
映画館の設備を使い、歌舞伎や舞台を上映し、若年層を含む新たな客層を開拓する企画
■地域密着型ミニシアターの復活
映画館のない街に新たに映画館を設立し、地域文化の拠点としてコミュニティの場を再構築しようとする企画
■口コミによるロングラン上映
公開2週目以降も緩やかに観客が増えるような作品を支える現場の熱狂
これらの挑戦は、映画館を単なる映画鑑賞の場所から、人々が交流し体験を共有する「空間」へと進化させています。
●あとがき
映画館トリビアを少しお話します。
日本では映画の事を「銀幕」と呼んだりします。
コレは、かつてスクリーンはやや銀色がかったものを用いていた為に、英語で「silver screen(=銀色のスクリーン)」と呼ばれていたのを日本語に直訳して「銀幕」と名付けた事に由来しています。
この英語での呼称は、テレビの登場と共に変化して来ました。
映画館の特徴は、その大きなスクリーンにあるので、映画館で上映されている作品や映画館を、象徴的に英語では「big screen(=大きなスクリーン)」とも言うのに対して、テレビを「small screen(=小さなスクリーン)」と呼んでいるようです。
因みに、現在では布製のスクリーンではなく「LEDスクリーン」で映画を鑑賞する映画館も登場しているようです。
さて、大量3回に渡り語って来ました「映画館今昔物語」も今回で一応の締めとなります。
映画は言うまでもなく、アニメや特撮、そしてテレビ作品やビデオ作品に至るまで「映像作品」を好きな方々にとっての「映画館」は、本当に「特別な場所」であろうかと思います。
それでも、アニメや特撮、テレビ作品等の劇場版を、手軽にレンタルDVDや配信で鑑賞する方々が多いかと思います。
私もその鑑賞形態が多いので、それはそれで否定はしませんが、出来れば何回かに1回の鑑賞をお近くの映画館で行って頂きたいと思います。
入場料や映画館までの交通費、更には時間的な負担はあります。
しかし、久しぶりに行く映画館は、テーマパークに行く位とは言いませんが、沢山の発見と驚き、そして進化をあちらこちらに見る事が出来ると思います。
また、よく行く映画館ではなく見知らぬ映画館に足を運ぶのも面白いかもしれません。
それだけでも、新鮮な発見をする事も出来るかと思います。
見知らぬ映画館と言えば…2017年頃に、出張先の池袋の街で夜に時間が空いた時に、ふと当時観たかったロードショー映画の看板を見て入った商業ビルの地下にある映画館が印象的でした。
映画館の名前までは覚えていないのですが、サンシャイン60通り沿いから階段を地下に入って行った記憶があるのと、今は見当たらなくなっているので閉館されたシネマサンシャイン池袋だったのではと思われるのですが…
その階段を降りると小さな売店がチケット売り場も兼ねていました。
そこで飲み物とパンフレットを買って館内に入ると、床はフワフワの絨毯ではなく昔ながらの硬いコンクリート床で、その床には殆ど勾配も無く、満席ならば前の人の頭を気にしながら映画を観なければならない程でした。
それは、私が40年以上前に観に行っていた地方にあった懐かしく今は無くなってしまった映画館の造りそのものでした。
こういった昔の館内形態の映画館は、現在の存続が厳しくなっている状況では閉館を余儀なくされて行っています。
しかし、そんな昔ながらの映画館を訪ねてみるのも、また一興かもしれません。
また、ミニシアターという形態の映画館も一般の方々には珍しいかもしれません。
特に50席を下回る観客席のミニシアターは、私などには35年以上前の撮影所時代のテレビプロの試写室の様な感覚があったりしますし、一緒に映画を観る人達が皆仲間のような一体感も味わえます。
勿論、最新の映画館は、その進化を肌を持って体感出来る日々の進化と試行錯誤を繰り返している挑戦的な場所ですから、たまには覗いてみて欲しい場所でもあります。
正直に言えば映画自体も観て欲しいのですが、少なくともフライヤーを取りに行って、映画館限定グッズを物色するだけでも面白いかもしれません。




