余り語られない撮影所のあれこれ(199) 「映画館今昔話2 〜今、現在の日本の映画館編〜」
余り語られない撮影所のあれこれ(199)
「映画館今昔話2 〜今、現在の日本の映画館編〜」
●日本の映画館
現在の日本の映画館は、ある種群雄割拠です。
しかし、映画館同士が戦うのではなく世間に対して「生き残り」を賭けた闘いを繰り広げています。
日本には、大手映画制作会社が運営する映画館や大手配給会社が運営する映画館から、ミニシアターと呼ばれる単館映画館まで映画館が600館余りが現在も営業しています。
今回は、前回で語り切れなかった「日本の映画館」に関しての詳細を語って観たいと思います。
尚、例によって情報のほとんどが約35年ほど前です。
今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。
また、記憶の内容が35年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在します。
その点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。
そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。
東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。
その点を予めご理解ご了承下さい。
●日本の映画館の形態
日本の映画館は、規模や興行形態によって様々な形態が存在します。
その規模別・興行形態別によって以下のように区分されています。
◯封切館(ロードショー館)
「封切館」とは、新作映画を全国規模で一斉に上映する映画館を言います。
前回に記述した様に、新作映画の上映の為に複製され全国の封切館へ運ばれた封印されたフィルムのリール缶の封を切る事の出来る映画館ということから呼称されたのが「封切館」です。
新作映画を上映する事を「ロードショー」とも呼称する事から「ロードショー館」とも呼ばれ、新作映画が映画館で上映される事を「ロードショーに(映写に)掛かる」とも呼ばれます。
新作映画を「封切作」と呼び、「封切作品が上映される」とも呼びます。
封切館には、以下の2つの種類が存在します。
□従来型の封切館
封切館は大手映画会社によって築かれた全国規模のネットワーク(=チェーン)が出来ており、テレビのネットワーク同様、原則としてネットワーク元の映画会社が選択した映画を上映する映画館です。
この場合、ある程度のヒットを想定していて、大きな収益が得られる事が見込まれています。
また、大都市圏にはチェーンの中心となる映画館が設定されていて、これを「チェーン・マスター」といい、大規模な映画館がその役割を担っています。
□シネマコンプレックス(=シネコン)
1990年代以降、複数のスクリーンが集まる形式の映画館を一般的に「シネマコンプレックス(=シネコン)」と呼びます。
また、シネマコンプレックス(=シネコン)の台頭で、どこの街でも街なかの一般的な映画館は次々と姿を消していきました。
このことにより、現代日本の封切館の主流は、1990年代~2000年代ころからシネマコンプレックス(=シネコン)に移行しつつあります。
このシネコンの登場によって、従来の封切館の規模や立地条件などにより区分された配給形態の等級づけが、ほぼ消滅状態となっています。
シネコンには従来型の映画館にない新技術を導入した劇場もあります。
巨大スクリーンのIMAXシアターやオムニマックス・シアターなどがその例です。
◯ミニシアター
独立系映画会社による制作された新作映画や、同じく独立系映画会社で制作された輸入の新作映画など、小規模での公開を前提とした映画を上映する形態の映画館を一般的に「ミニシアター」と呼びます。
つまり、ミニシアターは、日本の映画館のうち大手映画会社の直接の影響下にない独立的な施設を指します。
因みにミニシアターは、和製英語です。
単館ないしは数館による公開を前提とした作品や、旧作及び封切(=ロードショー)による上映が終了した新作によって上映される番組編成を行う映画館のことを言います。
そういった意味ではある種の「封切館」ではあるのですが、一般的な「封切館」では上映されない封切作品以外の作品も上映される事もあり、「封切館」とは呼称されていません。
だからこそ、映画会社ではなく個人で制作した映画を上映して貰えるのもミニシアターの特徴となっています。
そこには、従来の封切館とは違い、大きな興行収益を伴わずとも、単に「映画を応援したい」「良い映画を観て欲しい」といったミニシアターの支配人やオーナーの考えが反映されている場合があるというのも特徴になっています。
◯名画座
旧作映画を主体に上映する映画館を一般的に「名画座」と呼びます。
名画座の源流は、封切館より立地の劣る地方や区域向けの映画館で行われていた事により、封切り終了後に遅れて封切館で既に上映されていた、または上映されている新作映画を上映する興行形態の存在です。
封切館から1~2週間遅れで新作を上映する映画館を「二番館」、さらに遅れて上映する館を「三番館」そして「四番館」と呼びました。
これらの遅れ流通のことを「下番線」、下番線系列の映画館を総称して「下番線劇場」「下番線館」などと呼ぶ場合もありました。
これら下番線劇場では二本立てや三本立ての興行が一般的で、特定1社ではなく複数の会社の製作・配給作品を取り混ぜて興行することも多くありました。
この「下番線」形態は上述のとおり、シネコンの登場で薄れつつあります。
また、名画座はレンタルビデオやDVDの普及により減少傾向にあります。
◯コミュニティシネマ
鑑賞環境の地域格差の是正、メディア・リテラシーの向上、街づくりへの貢献などを目的として、地域住民や地方政府などが中心となり上映を行なっている団体、もしくはそれらの団体が拠点とする映画館を指します。
特定の映画館を持つ場合もあれば、従来営業しているミニシアター等の映画館を借りたり使用したりして映画上映会を開催したり、本来映画館ではない場所で映画の上映会を開催したりと、映画を主体としながらも映画館の枠にとらわれない行為であり、営利を目的としない場合すらあります。
●日本の映画興行会社
日本には、映画館を興行する会社が多数存在します。
映画制作会社である東宝、松竹、東映は勿論、配給会社やイオングループ、ローソンといった会社系列も映画館興行を行っています。
映画制作会社や配給会社は、自社関連の映画作品を中心に上映予定を組んでいます。
また、イオングループはグループ傘下のイオンスタイルやイオンモールへの集客を目的とした集客力の一端として映画館を併設する傾向があるようです。
他の映画館も併設店舗の集客を目的としている場合もあります。
上記の様に、集客を目的とする場合には、様々な映画制作会社や配給会社の上映が可能なシネコン形態の映画館を選択する場合が多く見られます。
余談ですが、ユーフォーテーブル有限会社が運営するufotableCINEMAは、徳島県徳島市に在る常設のミニシアター形式のシネコン形態で、アニメ映像作品を中心に上映しています。
アニメ制作プロダクションが運営する映画館として日本初だと言われています。
◯東宝系
・TOHOシネマズ株式会社
・関西共栄興行株式会社
・オーエス株式会社
◯松竹系
・株式会社松竹マルチプレックスシアターズ
◯東映系
・株式会社ティ・ジョイ
◯イオングループ
・イオンエンターテイメント株式会社
・イオンリテール株式会社
◯ローソン
・ユナイテッド・シネマ株式会社
◯株式会社東急レクリエーション
◯株式会社コロナワールド
◯佐々木興業株式会社
◯株式会社ディノスシネマ
◯東京テアトル株式会社
◯ユーフォーテーブル有限会社
●日本の主な独立系映画館
独立系映画館は、主に成人映画を中心に上映している映画館となっていましたが、その主だった映画館は殆どが閉館を余儀なくされてしまいました。
その映画館の内で、2000年以降に閉館した主だった映画館を記載しておきます。
八代駅前東映2002年4月閉館
株式会社南映(高知小劇)2013年3月閉館
NPO法人もっといいづか(飯塚シネマセントラル)2015年3月閉館
中島商事有限会社(長崎千日劇場)2015年12月閉館
有限会社永田商会(鹿児島旭シネマ)2017年閉館
豊映文化産業有限会社(八幡有楽劇場)2019年6月閉館
株式会社テイクワン(アイシネマ今治)2020年頃閉館
石田興業株式会社(宮崎ロマン)2020年4月閉館
●日本の成人向け映画館
成人向け映画館が出てきたところで、「日本独特のジャンル」である成人映画とその映画館を見ていきたいと思います。
日本においては1960年代前半から日本独特のジャンルであるピンク映画を上映する映画館が現れ始めました。
1970年代初頭になると、文化先進諸国におけるポルノ解禁に伴い、多くの小規模経営映画館が成人指定映画として専門映画館化し、爆発的流行を産みました。
更に、ピンク映画、日活ロマンポルノ、同性愛者向けのゲイポルノなど日本独特の成人映画が製作される事となりました。
また、1990年ごろまでは「洋ピン」と呼ばれる、海外のポルノ映画を日本の基準に修正した映画も公開されていました。
日本で製作された成人映画および洋ピンは、映倫によってすべて成人指定(現在のR18指定)を受けることになった為に、これらを上映する映画館は「成人映画館」(縮めて成人館)と呼ばれる事が多い状態でした。
その後、レンタルビデオ店が繁盛するにつれて、こうした成人向け映画館は廃れていきました。
ただし、性的な映像の市場としてはアダルトビデオやDVD、インターネットによる動画配信が主流となった今日でも、成人映画館は都市部の片隅に少数ながら存続しています。
また、ダンス・ショーなどのライヴ・パフォーマンスを行う等の取り組みによって、観客との交流が活発に行われているのも大きな特徴となっています。
また、映画倫理機構(映倫)が定めるレイティングに従い、R-18指定の映画を中心に上映する映画館を「成人映画館」と呼称するのに対して、それ以外の映画上映が主であるものを「一般映画館」と区分することがあります。
●映画館の上映制度の分類
映画館には上映制度(映画鑑賞システム)によって分類される方式があります。
日本の映画(鑑賞)人口が減少期に入った1960年代後半以降、多くの映画館では流し込み制(一度入場すれば、途中退出しない限り、最終回の上映終了まで、何度でも鑑賞可能)を採用してきました。
しかし、近年主流となっているシネコンやミニシアターでは入れ替え制を採用しており、チケットに指定された回の上映が終わった後は、観客は速やかに劇場から退場しなくてはなりません。
いずれの方式においても、入口を出た後の再入場は基本的に許可されていません(流し込み制であれば、改めて入場料が必要)が、トイレや自動販売機・売店などが館内に設置されていない等の事情により、入場時の半券を提示することで、その半券記載の上映時間内であれば許可するシステムをとる映画館もあります。
それでは各上映制度を改めて見ていきましょう。
◯流し込み制
別名、詰め込み満員立ち見方式。
観客は自分の好きな時間に、(映画上映の途中でも)劇場に入退場可能な方式です。
定員を越えた観客は立ち見を余儀なくされるのが一般的でした。
昔の映画館の上映制度の大半がこの方式でした。
観客の時間の都合で入退場が可能で、極端に言えば1日に何回でも1回分の鑑賞料金で同じ映画を鑑賞する事も可能でした。
その代わりに、着席できるとは限りませんでしたし、映画の途中から鑑賞すると結末を観てしまった後に、次の上映回で冒頭を鑑賞するといったチグハグな鑑賞となってしまい映画のストーリー自体を愉しめない可能性もありました。
◯定員交流制
観客の途中入退場は認めるが、定員以上を劇場内に入れないので、全ての観客の椅子は必ず確保される方式。
流し込み制と毎回定員入替制の折衷案でした。
映画館側が観客数を把握しなければならない手間があるのが欠点でした。
◯指定席入替制
多少割高な入場料金を払うことで、必ず指定席に座ることができる方式。
指定座席を設けて優先座席とし、指定席料金を追加する感覚で割増料金を払う方式であった。
連れの客がいる場合に好評で、映画館によっては指定座席だけ色を変えてあったり、高級感のある座席にする等の工夫を凝らしていました。
中にはアベックシート(=カップル席)と称して館内の隅の2席だけの座席を確保したりして、集客に充てている映画館もありました。
◯毎回定員入替制
全ての観客が椅子に座って映画を鑑賞することが可能な方式。
現在ではこの方式が主流となっています。
更に現在では全席指定席が一般的となっています。
●映画館の収益方法と許認可
映画館は一般的に映画館運営会社(興行会社)などによって運営され、顧客にチケットを買ってもらい入場させ映画を鑑賞させ、会社はそのチケットの売り上げによって利益を得るという形をとっています。
一方で、上映用フィルムの配給元となった配給会社に対しては、定額ないしチケット売り上げ額に対する一定割合(上映する映画によって変動あり)の額を、「フィルム貸し料」として支払います。
これが映画館の経費の多くを占める事となります。
日本では、映画館の業務は厚生労働省が監督官庁であり、直接的には所在する都道府県又は市が設置している保健所の監督を受ける事となっています。
また、都道府県ごとに、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律に基づく「興行生活衛生同業組合」(これには、映画館以外に演芸場や貸しホール等も加盟している)を組織しています。
なお、この組合はあくまで任意加盟である為に、全ての映画館が加盟しているとは限りません。
例えば、シネマコンプレックス(=シネコン)がオープンする際に、地元の既存映画館と対立するケースもあり、その結果、そのシネコンは組合に未加盟のままとなっている例もあります。
映画館の設置にあたっては、興行場法に基づき都道府県知事の許可が必要となっています。
また、建築基準法による用途規制により、映画館は客席の面積が200平方メートル以上10000平方メートル未満である場合には近隣商業地域、商業地域、準工業地域でのみ設置できるという事になっています。
200平方メートル未満であれば準住居地域でも設置できます。
●日本の一般的な映画館
ここで、改めて日本の一般的な映画館の規模と施設、そして入場料金のサービス等に関して見ていきたいと思います。
◯座席数
映画館の規模によっても違いますが、一般的に劇場内部には1スクリーンあたりおよそ80~600席の座席が設置されていますが、1スクリーン当たりの平均的な客席数は、300席未満の映画館が多くなっています。
ミニシアター等の小規模の映画館では1スクリーン当たりの座席数が30席以外の劇場も存在します。
◯入場券と割引制度
映画を鑑賞するための入場券は前売り又は当日券という形で販売されるのが一般的です。
前売り券の場合は多少の割引や、非売品の記念品が付属するなどの特典が付くことが多くなっています。
金券ショップに持ち込まれたものを購入することも出来ますが、トラブルが無い訳ではないので、そのような店での入場券の購入の際には注意が必要です。
また、夜間上映などの時間帯や学生割引・レディースデー・「映画の日」(本来の記念日としては12月1日だけなのですが、現在では多くの都道府県において毎月1日に「映画サービスデー」として拡大されています)・シニア割引など、様々な割引制度が実施されています。
また、身体障害者手帳、療育手帳(知的障害者向け障害者手帳)、精神障害者保健福祉手帳(手帳表紙には「障害者手帳」と書かれている)を持っている障害者は窓口に該当の手帳を提出すると、映画館によっては該当の障害者及び同伴の介護者の入場料金を割引いてくれます。
◯受付ロビー
映画館の受付ロビーには、上映中の作品や次回上映予定の作品のポスター・上映日程・時間帯などが示されているのが一般的です。
これらや新聞広告・TVCMなどの情報を元に、観客は自分が鑑賞したい作品のスケジュールを知り、後日に映画館に足を運ぶ段取りとなります。
また、映画館によっては、上映作品の入場券の販売状況などが、空席があるのか満席かなどが受付の電光掲示板やインターネットのウェブサイトなどで確認出来る場合があります。
映画館内の客席外通路などでパンフレットや、ときには関連グッズも販売されることもあります。
●ミニシアターとコミュニティシネマの詳細
◯ミニシアターの詳細
「ミニシアター」は、直訳すれば「小劇場」という意味ですが、キャパシティの小さい映画館のことを指すものでも、大人数が収容できるロードショー館を小さくした劇場という意味でもありません。
たとえばミニシアターとされる東京の池袋にあるシネマ・ロサは193席と、中規模シネマコンプレックス(シネコン)に匹敵する座席数を有しています。
上映作品という観点では、前途した様に劇場側が独自の判断基準で上映作品を選ぶため、映画館によって好みや特徴が現れ、映画館自体に固定のファンが付くことも珍しくありません。
また、別の映画館で既に封切られた作品や過去の名作を上映する名画座とは異なり、映画館が独自に選んだ封切作品、或いは日本未公開作品などを掛ける場合もあります。
当然、アメリカ合衆国などで大ヒットする等で日本でもヒットが期待される映画は大手洋画配給会社が輸入するため、それからこぼれ落ちたような小品、海外アート系作品を掛ける役割を担っているのが「ミニシアター」と言っても過言ではありません。
ミニシアターという呼称が定着する以前は「アートシアター」と呼ばれた時代もあリました。
新型コロナ禍中の2021年には、日本国内に3,687スクリーンが存在し、そのうちの88%にあたる3,249スクリーンをシネコンが占めていました。
それ以外の映画館は438スクリーンで全体の約12%、「ミニシアター」はそのうちの240スクリーン、全体の割合から言えば、約6.5%になります。
しかし、映画館数では、全国に596館の映画館が存在するなかで、シネコンが360館、それ以外が236館。そのうち136館がミニシアターにあたるという状況でした。
施設の規模に関しては、かつて一般的には300席以下の劇場とされていましたが、今日では30席から200席程度の劇場まで様々であり、これはシネコンの1スクリーンあたりの客席数と比べてみても必ずしも「小さい」とは言えず、元々、「大きい」「小さい」の基準は曖昧であるため、ミニシアターを「小さい映画館」とは直訳できないとも言われています。
また、2019年に日本で公開された映画作品1,292本のうち、約70%の作品をミニシアターが上映しており、518本(約40%)の作品はミニシアターのみで上映されたというデータもあります。
これは、ミニシアターの存在がなければ、約半数の映画が上映の場所を失うということで、こうした映画館の活動こそが日本国内における映画の多様性を確保しているのです。
諸外国においては、独立系の映画館を助成する制度が設けられるなど、映画の上映振興を担う公的機関が存在する状況があります。
日本のミニシアターのように公的な支援をほとんど受けずに、100館を超えるミニシアターが大都市のみならず中小都市にも存在しているケースは、世界的に見ても例外的なものとされています。
前途したように、大手のシネコンでは上映されないようなマイナーかつ低予算な作品が上映されることが多く、そのためアート性、ドキュメンタリー性の強い作品や、デビューしたばかりの映画監督や俳優の作品が観られることも多いのもミニシアターの特徴となっています。
確実に客入りが見込める作品がほとんどの大手シネコンと違い、ミニシアターは小規模であるが各館が作品を発掘・厳選して独自性を打ち出しており、各館にはこの独自性ゆえに固定ファンも付いている館もあ存在するのです。
ただし、SNS時代になりミニシアター系映画の中でも先鋭的な作品が数多くヒットするようになると、大手シネコンでもミニシアター枠の上映を設けることが増え、ミニシアターとしての独自性が打ち出せなくなり、苦境に立たされている状況となっています。
ミニシアターから口コミで人気が広まり大ヒット作となった「カメラを止めるな」や「侍タイムスリッパー」等の例もあり、監督や俳優にとっては登竜門的な側面もあります。
音楽家など、普段は映画業界以外で活動する者が副業的に作った作品などもミニシアター限定で上映されることにあります。
また、北海道函館市のシネマアイリスが、同地出身の小説家佐藤泰志の作品を相次ぎ映画化したように、ミニシアター自体が映画を生み出した例もあります。
日本における「ミニシアター」の先駆けになったのは、東京の神田神保町で1968年(昭和43年)に開館した岩波ホール(2022年閉館)とされ、1980年代頃から「ミニシアター」と呼ばれるようになりました。
1980年代から2000年代にかけて、東京の渋谷を中心にミニシアターブームが起こり、各劇場が個性的な作品の数々を上映し、文化の発信基地として、多くの若者から絶大なる支持を集めました。
〇コミュニティシネマの詳細
「コミュニティシネマ」は、地域おこしや文化的な市民運動として開館・運営される映画上映の事で、主に各地方の「ミニシアター」を主軸として開催・運営されていて、その際には「ミニシアター」であっても「コミュニティシネマ」と呼ばれることもあります。
各地のミニシアターで組織するコミュニティシネマセンターによると、2024年(令和6年)時点で全国に142館の「コミュニティシネマ」の上映館が存在します。
詳しくは、不定期上映や映画祭、映画館の運営を行い映画の公共的な上映を行う興行自体を呼ぶ名称です。
運営主体は地域の商店街やボランティア、NPO法人、従来からミニシアターを経営していた者、地方公共団体や第三セクター、映画館の場合は公設民営の場合もあるなど多岐にわたっていて、鑑賞環境の地域格差の是正、メディア・リテラシーの向上、街づくりへの貢献などを目的として謳っています。
そのため、過去の名作や芸術性の高いと言われる作品など、いわゆるミニシアター系作品を上映することが多く、また、単純な上映に限らず、地域の映画コミュニティの交流イベントや、映画制作ワークショップなどを開催している団体、法人もあります。
一方で地域貢献を重視し、オールジャンルを上映する映画館もあります。
また、映画館以外の地方公共団体が運営する体育館等の施設で臨時的な上映会を開催する場合もあります。
公的な動きとしては1994年に設立された財団法人国際文化交流推進協会が1996年に公共的な映画上映活動に関わる関係者を一堂に会する場として「映画上映ネットワーク会議」を開催したことに始まります。
この会議の結果、いずれの上映活動においても財政状況が厳しく映画振興制度が確立されていないことが問題となりました。
また、2003年度の調査では日本での映画上映作品のうち東京では94%が公開されている一方、下関では僅か5%足らずであるなど、鑑賞環境の格差が問題になリました。
一方で、1990年代になると日本では郊外型のショッピングセンターとそれに付随するシネマコンプレックスが隆盛となったため、地方都市の中心市街地が商業的にも人口的にも空洞化していました。
この商業的・人口的な空洞化を食い止めるため、中心市街地の街づくりと一体になり映画を上映しようとする取り組みが全国で散在していました。
動きの中心となっていたのは空洞化に直面していた商店街や協力するボランティアなどでした。
2003年の「映画上映ネットワーク会議」ではこうした動きの公的支援の受け皿としての「コミュニティシネマ」の概念が提唱されました。
この概念はドイツの「コミナール・キノ」と言う非営利の公共上映団体を模範としています。
文化庁も予算化の検討を始め、2004年には国際文化交流推進協会がコミュニティシネマ支援センターを設立し、2009年4月には同法人から独立し、「一般社団法人コミュニティシネマセンター」を設立するに至りました。
2000年代半ばからは中心市街地で閉館した映画館をミニシアター系作品を中心に上映する映画館として再開させる流れが広まっていました。
しかし、元々商業ベースに乗りにくい作品を対象として上映していることから、コミュニティシネマの運営は経済的に厳しく、運営者の熱意によるところが多いのが現状です。
実際、公的な非営利な映画上映会や映画祭もあったり、少額な鑑賞料金だけで開催されている上映会も存在します。
「ミニシアター」の詳細で前途したように、近年では独立系の配給会社の一部作品がシネマコンプレックスで上映されるようになるなど、ミニシアター系作品の中でも比較的集客力のある作品がミニシアターからシネマコンプレックスに移行しつつあります。
そのため、地域間の鑑賞環境の格差は縮まる一方、環境格差を縮めるために活動していたコミュニティシネマの収益が益々悪化する皮肉な結果となっています。
さらには、上映設備のデジタル化に伴い有志や地方公共団体が支援を行なっているのですが、対応機器を導入する費用を捻出できない映画館は閉館に追い込まれつつあるのが現状なのです。
一方で、ミニシアター全体としてはスクリーン数を減らしておらず勢力を維持しているという調査結果もあります。
尚、コミュニティシネマ活動が中心となり開館した映画館を以下に示します。
・営業中の映画館
シアターボイス(特定非営利活動法人コミュニティシネマきたみ・北海道北見市)
シネマテークたかさき(特定非営利活動法人高崎コミュニティシネマ・群馬県高崎市)
川崎市アートセンター(川崎市文化財団グループ・神奈川県川崎市)
深谷シネマ(特定非営利活動法人市民シアターエフ・埼玉県深谷市)
川越スカラ座(特定非営利活動法人プレイグラウンド・埼玉県川越市)
シネマイーラ(株式会社浜松市民映画館・静岡県浜松市)
宝塚シネ・ピピア(有限会社宝塚シネマ・兵庫県宝塚市)
シネマ尾道(NPO法人シネマ尾道・広島県尾道市)
シアター・シエマ(有限会社69'nersFILM・佐賀県佐賀市)
THEATER ENYA(一般社団法人Karatsu Film Project・佐賀県唐津市)
宮崎キネマ館(特定非営利活動法人宮崎文化本舗・宮崎県宮崎市)
ガーデンズシネマ(一般社団法人鹿児島コミュニティシネマ・鹿児島県鹿児島市)
桜坂劇場(株式会社クランク・沖縄県那覇市)
・閉館した映画館
以下の施設は休館や閉館または映画館以外の施設に転換しています。
十日町シネマパラダイス(夢シネマ株式会社・新潟県十日町市)
フォルツァ総曲輪(株式会社まちづくりとやま・富山県富山市)休館中
滋賀会館シネマホール(有限会社アール・シー・エス、シネマホールファンクラブ、財団法人滋賀県文化振興事業団・滋賀県大津市)
神戸アートビレッジセンター(兵庫県神戸市)2023年4月の新開地アートひろばへのリニューアルにより映画事業を終了しギャラリーに転換
アイシネマ今治(株式会社テイクワン・愛媛県今治市)
●あとがき
前回では「映画館の歴史」を、そして今回は「日本の映画館」の現在の状況を見てきました。
結果的には、壮大な内容過ぎて三部作となってしまいました。
いよいよ次回は、本来語りたかった「映画館今昔話3〜未来、日本の映画館の挑戦〜」について語ってみたいと思っています。
つまり、今回までの2本の内容が「壮大な布石」という名の「前振り」となっているのです。
そして次回は、このコラムの200回記念となります。
節目となります次回掲載にご期待頂きたいと共に、現在まで掲載して来ました各コラム内容に対してのコメント等を頂けると執筆の励みになります。
お願いします。
めちゃくちゃ甘やかして、更に苦言を呈してやって下さい。




