デュエウィザ大会一回戦
「いよいよ修行の成果を発揮する時。マサッキー、準備はいいよね」
「まだ不安だけど、全力を出すよ」
「負けても骨は拾ってあげる」
「うーん、そこまで深刻な争いにはならないかな」
「ゲームの大会だろうと、やるからには本気で行くわよ」
魔法少女部隊ヴァルキリーの五人が勢ぞろいして乗り込んだ先。それは、カードショップ天馬であった。
来る夏休みに開催されるデュエウィザの地方大会。その優先出場枠を勝ち取ることができるとあって、会場には強豪がひしめきあっていた。おそらく、ここらでは最強クラスのプレイヤーが集結している。そんな大会で優勝すれば、十分あいつの標的になり得る。
会場内を一望してみるも、特に怪しい人物は居なさそうだ。道化師の恰好をしているなんて、コスプレ大会の会場でも目立つもんな。素直に道化師のまま現れるのではなく、最初は変装しているということも考えられる。
会場内をうろうろしていると、突然肩を叩かれた。まさか、奇襲攻撃を受けたのか。眉を引き締めて振り返ると、間抜け面と遭遇することとなった。
「すごい形相でどうしたのだ。よもや優輝氏とこんなところで出会うとは思ってもいなかったぞ」
「覇王か。びっくりさせないでよ」
小太りの少年覇王がタオルで汗を拭っていた。彼もまた全国大会の出場を狙っているのだろう。
「あれ、前の大会で出会った、えっと、破戒帝ゼットさんだっけ」
「ゼニオスだ。人を勝手にシャドーラインの皇帝にするんじゃない」
むしろ、ゼットの方が分かりやすいよな。ゼニオスってどんな由来があるのだろうか。当人曰く、「昔やっていたネトゲに出てきたボス」らしい。アカネのミルタンク並に強かったから印象に残っているのだそうだ。
「前の大会では負けてしまったが、あれからデッキを練り直したからな。今度こそ優勝はいただく」
「それはどうかな。天才ゲーマーLと呼ばれている意地にかけて、そう簡単には負けられないよ」
勝負が始まる前から火花を飛ばしあっている。もうこの二人に闇道化師探しを任せればいいような気がしてきたな。
因縁をつけ合っている間に試合の開始時間を迎えた。蘭子や覇王とは別ブロックだから、決勝まで進まないと戦う機会はない。むしろ、同士討ちの心配をしなくて済むので一安心ともいえる。
一回戦の相手は小学校高学年くらいの男の子だった。シーホースカルアに変身した子とは別人だけど、どうしても身構えてしまう。表情が強張っていたせいか、「緊張しなくてもいいよ」と対戦相手に慰められる始末だ。小学生にペースを握られるなんて情けない。頬を叩くと試合が行われる台にデッキを置いた。
「ぼくのターン。母なる恵みマザーシスター召還。召還時効果でライフポイントを500回復する」
「また回復か」
勝負は長期戦にもつれこんだが、対戦相手の方が優勢であった。相手は回復カードを大量に積んで、無理やり長期戦を強いるデッキ。元から長期戦を見越しているから対応できているが、序盤に勝負を決める速攻系だったら既に息切れしている頃だ。
幸い、相手モンスターの攻撃力は低い。多少ライフポイントを犠牲にしてでも攻め続ければ勝機はある。コントロールデッキ対応策を予習しておいてよかった。
「ボクのターン。龍を呼ぶ者を召還し、大山のドラゴンを呼び寄せる。更に、偉大なる盾持ちを召還。俊敏なる山猫でプレイヤーに攻撃。400ダメージだ」
「まだマザーシスターの回復力が勝っているな。次のターンに大山のドラゴンを出すつもりだろうけど無駄だよ。ぼくのターン。祈祷師エイラル召還」
「やばい、そのカードは」
蘭子に教わった回復デッキのやばいやつだ。民族衣装を纏った聖少女が一心不乱に祈りを捧げている。彼女自身は攻撃力、体力ともに200の雑魚モンスター。しかし、特殊効果がえげつないのだ。
「今こそエイラルのコンボを見せてやる。呪文命の果実をプレイ。これによりライフポイントを100回復。そして、エイラルの効果発動。ライフポイントを回復する度、ぼくの全モンスターの攻撃力を100ポイント上昇させる」
回復と同時に自軍モンスターにバフをかけるという反則級コンボ。対応策としてはエイラルを真っ先に倒すことだけど、そう簡単にはいかない。
「残ったマナで呪文死ねば諸共を発動。対象モンスターがバトルによって破壊された時、バトルを仕掛けたモンスターを破壊する。もちろん、対象にするのは祈祷師エイラルだ」
エイラルが実質上のデコイ(壁役)になるのを利用し、モンスターを除去しようという作戦だ。ダイレクトアタックを仕掛けたいけど、自軍モンスターを犠牲にせざるを得ない。
どうにかできないか。祈りながらもデッキから一枚をめくる。引き寄せたカードにボクは目を輝かせた。
「悪いけど、君の思い通りにはさせないよ。暴虐のドラゴンを召還」
「うわ、そいつか」
少年は頭を抱える。高コストだけど能力値は攻撃、体力300と決して高くはない。でも、特殊能力がえげつないのだ。
「暴虐のドラゴンの効果。場に出た時にモンスターを一体破壊できる。これにより祈祷師エイラルを破壊。バトルによって破壊されたのではないので、死ねば諸共の効果は発動しない」
漆黒の龍に噛みつかれ、エイラルはバトルゾーンから除外される。相手の切り札を破ったことで、流れはこちらに来ている。一気に行かせてもらおう。
「残ったマナで妖精からの贈り物を発動。1マナを加える」
「終盤でマナ加速。何かを企んでいるな」
「山猫でダイレクトアタック」
この攻撃でマザーシスターに回復された分を打ち消した。そして、次のターンが勝負だ。
少年はまず天からの施しでデッキからカードを2枚ドロー。回復カードを引き寄せたかったのだろうが、舌打ちしてディフェンダーの邪精カラボスを召還する。体力300だが、バトルした相手を相討ちにできる。もっと体力値が高いディフェンダーが出てきたら厄介だったけど、こいつならむしろありがたい。
「ボクのターン。必殺のコンボを見せてやる。大山のドラゴンを召還」
「ようやく出してきたか。でも、攻撃力が高いだけの準バニラ。次のターンで回復カードを引けば十分に立て直せる」
「残念だけど、次のターンはないよ。残ったマナを使って俊足なる雛鳥を召還。こいつが召還された時、バトルゾーンにマナコスト7以上のモンスターが居ればそれは召還酔いをすることなく攻撃できる」
「さっきマナを増やしたのは雛鳥との同時召還を狙っていたからか」
気づいたところでもう遅い。速攻能力を持ったボクの切り札が高々と咆哮を轟かせる。
「暴虐のドラゴンでカラボスを破壊。そして、大山のドラゴンでダイレクトアタック」
「くそ、ぼくの負けだ」
必殺のコンボが決まり、少年のライフはゼロとなる。蘭子との特訓の成果が十二分に発揮された結果となった。
シャドバやっている人なら祈祷師エイラルの元ネタは分かるはず。
スノーホワイトプリンセスを3枚生成した矢先にナーフ喰らって弱体化とか笑えない。どっちかというと天狐ちゃんの方が強いような気がしますが。




