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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第九話「謎の覆面戦士登場! 新任教師の潘帝太郎」
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仮面パンティーは誰でしょう

♪どこの誰かは知らないけれどパンツを被ってやってくる

仮面パンティーのおじさんは正義の人よ良い人よ


サブタイトルはそんなノリです。

 カメレオンカルアの正体と思われる青年が大の字で伸びており、傍で仮面パンティーが誇らしげに笑っていた。しかし、賞賛を送るべきかどうか微妙な雰囲気になっていた。そりゃ、パンツしか身に着けていない変態に救われたなんて誇れることではないだろう。どうでもいいけど、早く服を着てくれないかな。安心してください、穿いていますよという返しは無しだからね。


「あ、あの。助けてくれて、ありがとうございます」

 無謀にもといってはいけないが、華怜が仮面パンティーに話しかける。パンツを被ったままサムズアップされたものだから、さすがの華怜も尻込みしてしまった。

「お安い御用だ。助けが欲しい時はいつでも呼んでくれたまえ」

 あまり呼びたくないな。そもそも、どうやって呼べばいいのだろうか。タスケテケスタとでも言えば来るのかな。


 どや顔をしていた仮面パンティーであったが、

「そろそろ時間が来たようだ。諸君、また会おう」

 腕時計をしていないのに手首に視線を落とし、笑いながら去っていった。普通に走っていくもんだから、すれ違った生徒が二度見していたぞ。


「大丈夫、華怜」

「なんとか。なんだったのかしら、あの仮面パンティーって」

 華怜の介抱にかけつけたところ、彼女は首をかしげていた。ダイカルアの怪物よりも謎の変態仮面で話題が持ち切りだった。魔法少女が全然活躍しなかったし。ボクが言える義理ではないけど。それに、魔法少女三人は未だにショックから立ち直れていないようだ。


 とりあえず、「怪物は退治された」と渚先輩たちに耳打ちし、どうにか避難させる。「あんたたち、いつまで絶望してんのよ」って華怜に平手打ちされるまで正気に戻らなかったから、カメレオンカルアの魔法も常識を逸していたんだな。

「面目ない。怪物の術中に嵌っちゃうなんて」

「そういえば、とんでもない変態がいたような気がした」

「ボクも見たよ。よく覚えていないけど、ものすごい変態だった」

 呆然自失としていてもなお記憶に刻まれるって。仮面パンティー恐るべしだ。それにしても、どこに行ったのだろう、あの変態は。遠方からパトカーのサイレンの音が響いてくるけど、詮索しないでおこう。


 なんだかんだで気苦労が多かったせいで、ボクたちは部室でくたびれていた。唯一話ができる状態だったのはボクと華怜だけだったため、話題は仮面パンティーで持ち切りになった。

「一体誰だったのかしら、仮面パンティーって。さすがに、あそこまでの変態は引くわ」

「う……ん。誰だろうね」

「含みがあるわね。もしかして、正体知っているとか」

「知らないよ。ああ、誰だろう」

 身内であそこまで大っぴらな変態行為ができる人物をボクは一人しか知らない。人称を「人」にしていいのか悩むところではあるが。


「みんな、お疲れみたいだル」

 憔悴しているボクらを心配するかのように、ウルルが瞳をうるませた。彼が現場に到着したのはカメレオンカルアが倒された後なので、事の顛末を知らないのだ。不用意に近づいていったところ、すぐに渚先輩にだっこされた。

「そうなのよ、お疲れなのよ」

「先輩。ウルルの貞操を奪うのはやめる」

 異類婚姻譚には発展しないだろうけど、ウルルが「お母さん」と叫ぶのも時間の問題だった。


 ようやく解放されたウルルは舌を出して床でへばっていた。あの一瞬でカメレオンカルアの魔法並みの威力を発揮するなんて、先輩恐るべしだ。

 どうにかしゃべることができるまでに回復したウルルはため息をついてきりだした。

「ダイカルアの怪物とは別にすさまじい魔力を感じたル。一体何があったル」

「あまり語りたくないんだけど」

 もしかしたら情報を掴んでいるかもしれない。一縷の望みにかけて、ボクは仮面パンティーについて説明する。妖精である彼にとっても、パンツを被った変態というのは常識を逸していたようである。


「聞く限りだと、ボクたちの援軍みたいだル」

「あまり味方に引き入れたくないというのは事実よね」

「禿同」

「すばるん、ネットスラング使っても誰も分かんないよ」

 一応解説しておくと、激しく同意の略です。仮面パンティーを仲間にしたくないというのは同感だけどね。

「恰好はともかく、ダイカルアを倒したというのは気になるル。並の人間だと、バグカルアにさえ歯が立たないル。ましてや、怪物を倒せるなんて、余程の魔力の持ち主だル」

「あの変態が新しい魔法少女というのはやめてよ」

「大丈夫だル。魔法少女は女しかなれないル」

「例外がここにいるんだけどね」

 ボクが魔法少女になれたのだから、可能性がないわけではない。まかり間違っても、顔にパンツを被った魔法少女なんて登場してほしくないけど。


 仮面パンティー議論に華を咲かせている最中、部室のドアが不躾に開かれた。衆目を集めたそいつは、ある意味話題の渦中にいる人物であった。

「みんな、揃っているようだな」

「潘先生。どうしてここに」

 華怜が目を輝かせる。他の女性陣三人も感嘆していた。そういえば、潘先生と対面するのは初めてだったな。何も言わずに壁に寄りかかっているだけだったら、ただのイケメンと認めざるを得ない。


 ともかく、華怜の質問の続きだ。唐突に部室に登場したというのが解せない。

「赴任してきた以上、部活の顧問も務める必要がある。どの部活にしようか迷っていたところ、ボランティア部を発見してな。面白そうだから覗いてみたというわけだ」

 よどみなく解説するけど、どうにも白々しい。見惚れている三人衆にボクがあることを耳打ちすると、途端に眉根を寄せた。


「本当にあの先生があいつなの」

「昨日の話からして間違いないって。それに、遠まわしにAV女優を紹介していたし」

「うん、紛れもなくあいつ」

「しっかし、あんなイケメンになるなんて。どういう了見だろう」

「おーい、そこの四人。言いたいことがあるならはっきり言いたまえ」

 潘先生に釘を刺され、ボクらは愛想笑いをする。言いたいことはあるけど、はっきりとは言うことができない。そんなことしたら華怜が絶望しちゃうから。


「潘先生の言う通りよ。こそこそ噂話をするなんて、卑怯だと思うわ」

 人の気も知らないで、華怜は潘先生に同調する。どうにかして、彼女の目を覚ますことはできないだろうか。うまい具合にあいつの化けの皮を剥がすことができれば。


 渚先輩や蘭子と一緒に悩んでいたところ、昴はとことこと華怜の傍に歩み寄っていく。じっと視線を合わせられ、華怜はたじろぐ。

「昴、何か用?」

「ごめん、華怜」

 いきなり謝られて当惑する華怜。その数秒後にボクたちは昴の真意を知ることとなる。予備動作もなく華怜のスカートに手を掛けると、勢いよくめくりあげたのだ。

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