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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第九話「謎の覆面戦士登場! 新任教師の潘帝太郎」
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正義の味方(?)仮面パンティー

 男性陣は唖然とし、女性陣は依然として悲鳴をあげている。騒動の渦中に飛び込むが如く、謎の変態は体育倉庫から飛び降りた。

 お約束で足を挫くかと思いきや、見事に着地を決めた。変態のくせに身体能力は高いのか。パンツを取ることなく堂々と歩み寄って来るもんだから、ダイカルアの怪物でさえ後ずさりしていた。

「て、てめえ何者だ」

 ようやく、その場にいる全員が疑問にしていたことが尋ねられた。この瞬間のみはカメレオンカルアに「グッジョブ」と賞賛を送りたい。


 変態は股間を強調するように腰に手をあてると、仰々しくふんぞり返った。

「俺は正義のヒーロー仮面パンティー! さあ、俺の罪を教えろ」

 パンツを被っていることです。罪を教えろというか、罪しかないでしょ、そんな恰好じゃ。


 仮面パンティーというあまりにもふざけた名前の変態は更に怪物と距離を詰める。ふざけた野郎相手に撤退したとあっては沽券に係わるのか、カメレオンカルアは覚悟を決めて仮面パンティーと向き直った。どうしよう、怪物の方を応援したくなってきた。

「仮面パンティーなんて大層な名前をしているが、所詮はパンツを被った変態じゃねえか。お前なんざ魔法を使うまでもないぜ」

 カメレオンカルアは高を括り、舌を伸ばして攻撃してくる。常人並の体力しかなければ一撃必殺の威力を発揮する。ただの変態であればここで退場だ。


 ところが、仮面パンティーが腕を振るうと舌はいとも簡単に弾き返されてしまう。執拗に打撃を加えようとするものの、類まれなる動体視力で的確に防ぎきっている。あいつ、普通に強いのか。

「しぶとい野郎だ。だが、こいつはどうかな」

 怪物も意地でも魔法を使うつもりはないのか、舌での攻撃の勢いを加速させる。連続パンチならぬ連続舌といったところだ。残像を発生させるほどの熾烈な勢いに、さすがの仮面パンティーも防戦一方か。


 いや、防戦には違いないが、涼しい顔で受けきっている。世紀末救世主顔負けのパンチで、すべての舌を弾いているのだ。顔にパンツがあるせいで、名実ともに顔負けになっているというのは追及しないでおこう。

 己の舌に対抗できているということから、相手は只者ではないということを悟ったカメレオンカルア。攻撃を中止し、怪訝そうに前屈みになっている。

「力押しが通用しないとは。どうやら、普通の人間ではなさそうだな」

「当たり前だ。俺は魔法少女の力を借りうる正義の使者だからな」

「魔法少女の力だと。男のくせに少女の力なんざ借りられるわけねえだろ」

 怪物は至極まっとうな反論をぶつける。ボクらとしても、あんな変態に力を貸した覚えはない。


 怪物のみならず、生徒たちもまたその点に疑問を抱いていた。すると、仮面パンティーは自身の顔を指差した。あるのはパンツのみ。まさか、パンツに秘密があるとか言わないよね。

 懸念したものの、仮面パンティーは堂々と最悪なことを言い放った。

「俺が被っているのはただのパンツではない。魔法少女のパンツだ」


 ちょっと待てよ! 魔法少女のパンツということは、ボクのパンツである可能性もあるわけだよね。でも、まかり間違ってもボクは女もののパンツなんて持ってないぞ。いきなりハッタリをかますなんてどういう魂胆だよ。

 しかし、ボクの疑念を蚊帳の外にするかの如く、仮面パンティーは胸を張った。

「今被っているのはあのヴァルダイヤモンドのパンツだ」

 嘘です。絶対に嘘です! あんな純白のパンツなんか穿いた覚えはない。しかし、聴衆は真に受けているのか、「あれがダイヤモンドのパンツ」「マジかよ、純白かよ」などと仰々しくどよめいている。いや、だからボクのじゃないって。


 とはいえ、根拠もなく「ダイヤモンドのパンツだ」と主張しているのではなさそうだ。そこで、仮面パンティーが被っているパンツをよく観察してみる。パンツを凝視するって、まさに変態の所業だけど、背に腹は代えられない。

 すると、とんでもない事実に気づいてしまった。あのパンツ、どこかで見たことがあるのだ。ではどこで見かけたかだけど、認めたくないことに自宅のベランダなのである。つまり、あれはボクの近親者のパンツ。そして、ボクの家族で女もののパンツを穿く人というと一人しか存在しない。

「もしかして、あれって穂波のパンツなのか」


 仮面パンティーが被っているのは、正確にはヴァルダイヤモンドの妹のパンツなのである。どうしてあいつが穂波のパンツを持っているのか。実は、その昔穂波のパンツが盗まれたことがあった。とある異世界の生物によって。そして、仮面パンティーの正体があいつだとすれば、すべての辻褄があう。あいつ、ボクの妹のパンツ被ってなんてことしてんだよ。


 ボクが頭を抱えていることなどいざ知らず、仮面パンティーは誇らしげに笑い声をあげる。

「ヴァルダイヤモンドはあらゆる状況に対応できる万能の戦士。その加護を受けているので、俺はパワーもスピードも一流というわけだ」

「言わせておけば。単なる器用貧乏じゃねえか」

 自分のことを言われているようで胸が痛い。遠まわしに特徴がないって、半ば自覚してたけどさ。


 色々とツッコみが追い付かないけど、仮面パンティーは更なる蛮行に走ろうとしていた。

「俺の力はまだこんなものじゃない。更なる力をお見せしよう」

「てめえ、何をする気だ」

 仮面パンティーは左手を腰に添え、右手を斜めに高々と掲げた。そのポーズはダメだ。完全にショッカーに改造された正義の味方じゃないか。

「超変態!」

 いや、ダメだろ。未確認生命体第四号に謝れ。


 まさか、本当にフォームチェンジをするつもりか。若干期待したが、雄々しく掛け声を放ったわりに特に変化はない。いや、変化している。現実世界でアハ体験をするとは思ってもみなかったが、ある一部分がいつの間にか変わっていたのだ。

 どうということはない。仮面パンティーの被っているパンツが白からピンクになったのである。

風都で探偵をやっている仮面ライダーさんごめんなさい

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