くだけるのが仕事です
「もう容赦はしない。あなたには厳罰を与える」
「や、やってみるし~」
刃向おうとするものの、言葉が上ずっている。そんな怪物に死刑宣告を与えんと、トパーズはあるものを突き付けた。石ころだ。
「また石? 二度も同じ手は喰わないし~」
「動神降臨」
無生物に命を宿らせる魔法。発動とともに再度奴が目覚める。
「オラオラオラ! またくたばってなかったのか、ちくしょうめぇ」
この石ころ、口の悪さはどうにかならないのかな。
爆誕したロックマンは軽快に跳ねながらハウンドカルアとの距離を詰めていく。同じ技は通用しないと宣告した通り、ハウンドカルアは軽快な動きでロックマンの接近を避けている。猟犬をモチーフにしているだけあり、機動力も高いようだ。
しかし、ロックマンも負けてはいなかった。岩石系のモンスターというと素早さが低いイメージがあるけど、ハウンドカルアに遅れをとることなく追随している。
「うざいし~。咆哮砲台」
咆哮を浴びせかけて動きを止めようとする。
「ぐわ! やんじゃねえか、べらぼうめ」
ダメージあるのかよ。声を使った攻撃が通用するということは、この石ころ耳も存在しているってことだよな。一体どこについているのやら。
真正面から魔法を受けたにも関わらず、ロックマンの勢いは衰えることはない。石だけに防御力は桁外れなのだろう。どのステータスも高いって、トパーズ本体よりも強いような。
性懲りもなく体当たり攻撃を仕掛ける。いや、違う。ロックマンは大顎を開けるや、ハウンドカルアへと噛みついたのだ。
体当たりならまだしも、まさかの噛みつき。完全に虚をつかれ、ハウンドカルアは密着された肩を必死で叩いている。
「この、離れるし~」
「やなこった。さてと、嬢ちゃん、俺の仕事はもう終わりでいいんだよな」
「いいや、最後に大仕事が残っている」
石ころさんは十分に仕事していると思うけど。これ以上やらせるなら、オーバーワークになっちゃうよ。
トパーズはゆっくりとハウンドカルアを指差す。そして、とんでもないことを口走った。
「くだけるのがあなたの仕事」
ロケット団のボスみたいなこと言っていませんか。まさか、自爆するわけないよね。
そのまさかであった。嫌な音を立てながら、ロックマンの体が膨張していく。危機を察知したのか、ハウンドカルアはロックマンを引きはがそうとする。だが、がっちりと噛みついていて、離れる気配はない。
「ちょ、どうなってるし~。自爆するなんて聞いてないし~」
「聞いてないのも当たり前。だって、ついさっき爆弾になった」
唖然としているハウンドカルアにトパーズは種明かしをする。
「ロックマンが噛みついた瞬間、再生創造を使った。これにより、その子はロックマンではなくボンバーマンに進化した」
メーカーの垣根を超えちゃったぞ。一応、本家の方にもボンバーマンはいるけどね。
一体何をされたのか把握できていないまま、ハウンドカルアは石ころを除去しようと躍起になっている。傍観していたボクらでさえ、トパーズが何を仕掛けたのかいまいち分かっていないからな。頭の中の疑問符を払拭せんと、蘭子が説明してくれた。
「あれこそすばるんの必殺コンボだよ。石ころに意思を持たせることで、確実に相手に密着させる。そして、石ころを爆弾に変えて、ゼロ距離で爆発させようという魂胆さ。並の相手じゃ防げないかもね」
「つまり、ハウンドカルアに引っ付いているのは小型爆弾ってこと」
寸法は分かったけど、それはそれで問題だった。爆弾を仕掛けられているということは、逃げないとまずいんじゃない。
「最後に大福食べたかったし~!」
断末魔の叫びにするほど大福を所望するとは。素直に食べさせておけば大事にならずに済んだと思うが、暴れてしまったものは仕方ない。
「ぶっ飛べ」
トパーズの言葉が起爆剤となり、ロックマンもといボンバーマンは自爆した。
爆弾が爆発した割には、被害は控え目だった。地面が穿かれただけといっては失礼か。突如出現したクレーターの中心部では、ハウンドカルアの正体である曽根沢ちゃんが大の字で伸びていた。
変身を解除したトパーズは額の汗を拭うと腰を落とした。虚無感さえある表情に、ボクは慌てて駆け寄るも、
「お腹減った」
肩透かしな返答を浴びせられる羽目になった。苦笑しつつ、ボクは持っていたラブラブ大福を差し出した。
「よかったら、食べる?」
「喜んで」
遠慮はしないんだ。無我夢中で頬張っているあたり、よほどお腹が減っていたんだな。
「あ~あ、結局大福を食べ損ねちゃったし~」
目覚めた曽根沢ちゃんは頭を掻いている。そんな彼女に、比呂麿は恐る恐る近寄っていく。
「そ、曽根沢ちゃん。いつの間にダイカルアなんかになったんだ。聞いてないぞ」
「入信しようとあ~しの勝手だし~。だって、力が手に入ればおいしいものも食べ放題って言うんだもん。入るしかないじゃ~ん」
動悸が小学生ですか。知らない人から物をもらっちゃいけませんって習わなかったのかな。
「でも、魔法少女に負けちゃったから、もう変身できないし~。だから、ヒロくんも安心してほしいし~」
「そ、そうか」
大暴れした直後に言われても信憑性がないが、根っからの悪人というわけでもなさそうだ。もう怪物にはなれないというのも嘘じゃないから、追及しなくても大丈夫だろう。
「ムスカさん、迷惑かけたみたいだね。でも、君の食レポ、楽しみにしているよ」
「こちらこそ、ブログ楽しみにしてる。あと、彼女さんの監視を忘れずに」
「ハハハ。よく言い聞かせておく」
同志の握手を交わした後、比呂麿は曽根沢ちゃんを連れ立って去っていった。義理の彼女だったはずだけど、肩を寄せ合って歩く姿は正真正銘のカップルにしか見えなかった。
「やあ、今日も絶好調だったじゃん」
「蘭子。来てたんだ」
ひょっこりと姿を現した蘭子に昴は本気で驚いていた。もしかして、追跡に気が付いていなかったのか。彼女のことだからあり得そうだ。
「黙ってるなんてひどいわよ。あなたも魔法少女だったってわけ」
「別に聞かれていないから、答える必要はない」
ごく最近、似たようなセリフを聞いた覚えがあるな。親友ゆえに似た者同士ということかな。
「ともあれ、これで魔法少女が五人になったということだね」
「五人もいると戦隊ヒーローみたいじゃん。誰がリーダーになるのかな」
白、赤、青、緑、黄。確かに戦隊っぽいな。ただ、本家の理論に従うのなら、赤の華怜がリーダーになるんだけど。
「レンちゃんがリーダー。そんな器じゃないわね」
「同意する」
「先輩は論外として、昴まで失礼ね」
「じゃあ、ぼくがリーダーでいいんじゃない」
「それはない」
三人は唱和する。仲が良いのやら悪いのやら。
リーダー議論で盛り上がっているところ、どこからともなく羽音が聞こえてきた。
「ダイカルアの怪物はどこかバ」
「遅いよ」
ダイカルアが出ると現れるバンティー。今回も例に漏れずだったけど、重役出勤過ぎである。
「まったく、何やってたんだル。せっかくトパーズが活躍したのにル」
「トパーズということは五人目の魔法少女かバ。惜しいことをしたバ。階段の下に潜伏してパンチラを狙っている場合じゃなかったバ」
おまわりさん、こいつです。ダイカルアが出ていないとロクなことをしていないな。そして、女性陣はいつまでリーダー議論で盛り上がっているのだろうか。むしろ、この面子をまとめられる人物がいるなら紹介してもらいたい。
次回予告
ついに魔法少女が五人勢ぞろいした。そんな折、ボクらの学校に新しく先生がやってくる。
スポーツ万能でクラスの人気者になるんだけど、その正体ってどう見てもあいつだよね。
おまけに、ダイカルアの怪物カメレオンカルアの前に出現したのは……。お、お前は誰なんだ!?
次回、TS魔法少女は戦いたくない第九話「謎の覆面戦士登場! 新任教師の潘帝太郎」




