ボランティア部の危機!?
先に断っておきますが、この第九話の最期にとんでもない新キャラが登場します。色々とヤバいので、期待しないで待っていてください。
その日もまた、闇道化師を討伐するための特訓に励んでいた。大層なことを言っているけど、やっていることはカードゲームなんだよね。
「召還、古代文明のゴーレム。山札の一枚目を捨てて、そのコストかける100のダメージを相手モンスターすべてに与える」
「うわ、モンスターが全滅しちゃった」
「これで終わり。メタルドラゴンでダイレクトアタック」
あと一歩のところまで追い詰めたけど、昴が操る機械竜の攻撃をまともに受けてしまう。ゴーレムを出されなければ大山のドラゴンで直接攻撃できたのに。
「すばるんもけっこうデュエウィザ強いからさ。彼女を追いつめられたということは、相当強くなったという証拠だよ」
蘭子は口笛を吹きながら椅子にもたれかかる。昴もデュエウィザのプレイヤーだったんだよね。しかも、機械モンスターを中心に大型モンスターで畳みかける長期戦型のデッキを使ってくる。ボクも後半戦に強いデッキを使っているから似たり寄ったりってわけだ。
彼女たちの特訓のおかげで、華怜や渚先輩には勝てるぐらい上達することができた。でも、蘭子が言うには「まだ足りない」らしい。なにせ、闇道化師は大会優勝常連者をいとも簡単に打ち負かす程の腕前だ。奴と遭遇を果たすには、最低でも蘭子と互角ぐらいの実力がなければならない。うむ、先は長そうだ。
「最近、カードゲームばかりで学校の部活動らしくないわね」
筋トレを終えた渚先輩が汗をぬぐう。唯一彼女だけが部活動らしい部活動をしているともいえる。ボランティア部はいつから体育会系になったのだろう。
本気で体育会系の活動をするなら喜びそうなのが一人いるけど、あいにく本業の剣道部の活動が忙しいらしく、本日は不在だ。昴も調理部の活動があるはずだけど、「兼部するぐらいどうということはない」とあくまでお気楽である。
「別にいいんじゃない。カードゲーム愛好会ってことで。それなら毎日通ってもいいな」
公式には認められないだろうな、そんな部活。愚痴をこぼしていたところ、昴が決定的な一言を繰り出した。
「そもそも、ボランティア部は正式に部活動として認められているのかも怪しい」
どういうことだ。まさか、今の今まで非公認で活動していたということになるのか。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていると、昴は続ける。
「なぜなら、ボランティア部には顧問の先生がいない」
「言われてみれば」
「顧問がいないのに、よくこれまで活動してこれましたよね」
先輩というか、部長。あっさり認めちゃっていいんですか。
「いなくはないけど、他の部活との兼任で名ばかりになってるんじゃなかったかしら。でも、生徒会とかで問題視されたら一発アウトになるわよね」
軽い調子で言っているけど、相当危うくないか。ここを追い出されたらどの部活に移転すればいいのやら。運動全般は得意じゃないし、文科系もイマイチなんだよな。なにより、せっかくメンバーが揃ったのに解散というのは悲しすぎる。
「お悩みのようだバね」
途方に暮れていると、意味深い笑みを浮かべたバンティーが現れた。どうにも嫌な予感しかしないんだよな。第一、どこから出てきたのやら。
「あなたに問題が解決できるわけ」
「先生が居ればいいんだろバ。ならばお安い御用だバ。学校に魔法少女が五人集結しているのなら、都合がいいバ」
かなりろくでもないことを企んでいるのは間違いない。
「まあ、俺っちに任せておくバ。チームヴァルキリー結成のために俺っちも人肌脱ぐバ」
「脱ぐもなにもあなたは全裸」
いや、コウモリが服を着ていたらおかしいけどさ。「明日を楽しみにしているがいい」とか言っていたけど、何をしでかすつもりなのやら。
翌日の事、ボクらのクラスはある話題で盛り上がっていた。なんでも、新しく先生が赴任してくるらしい。新学期ならまだしも、六月に入ろうとしている時期にやってくるなんて不自然だ。それだけでも格好の話の種となるのに、加えてかなりのイケメンだという。噂に噂が重なったことで、女子たちは大騒ぎして収拾がつかなかった。
「まったく、騒がしいな。たかが先生が来るだけだろう」
覇王は完全にふてくされていた。彼はこういった浮ついた話題には縁がないからね。なんていうか、男の転校生がやってくるというシチュエーションに似ている。
もちろん、華怜もまた噂にどっぷりはまっていた。友人たちと「どんな先生だろう」と話に華を咲かせている。こうしていると普通の女の子と変わりないんだよな。魔法少女に変身できるせいで、つい特別視しちゃうけど。
ただ、彼女はまだ気が付いていないだろう。おそらく、赴任してくる先生はとんでもない奴だということに。昨日、華怜は剣道部の練習があったせいでボランティア部の部室には来ていなかった。だから、事の顛末を知らないはずだ。
でも、ボクはなんとなく察しがついていた。昨日の話の流れからして、やってくる先生の正体は明白だ。問題は、どんな姿になっているか。そもそも、変身の魔法なんて使えたっけ。異世界の妖精だったら造作もないだろうけど。
「おーい、席につけー」
気の抜けた声が教室内に響き渡る。ボクらの担任の折木先生だ。か細い声のせいで、いつもであれば騒動が収まることはない。初老の先生涙目ではあるけど。
でも、今日は違った。いよいよ問題の先生がやってくるのだ。珍しくすんなりと黙ったせいか、折木先生は目を白黒させている。それでも、歴戦の先生というべきか、動揺を隠して教壇につく。
「えー、今日はみんなにお知らせがある」
「新しく先生が来るんですよね」
クラスの女子が先制攻撃を喰らわした。やめてあげてよ、先生が口をもぐもぐさせているじゃないか。
「その通り。うちのクラスの副担任をやってもらうことになった」
よりによってボクらのクラスか。どうやって嗅ぎつけてきたんだか。
「では、入ってきてください、潘先生」
勢いよくドアが開かれ、衆目を集める。いよいよだ。さて、どう来るか。




